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闇 430(2017年川越祭り編)

闇 430(2017年川越祭り編)

2025/12/21 sun
前回の章


二千十七年十月一日、日曜日先勝。

仕事帰り、無性にステーキが食べたなった。
新宿で食べると帰るの遅くなるし、川越帰ってステーキ宮行くのは時間的にギリギリだしどうしよう……。

2017/10/01 いきなりステーキ

そう考えていたら、クレアモールに『いきなりステーキ』ができていた。

とにかく肉の塊が食いたかった。
できれば宮のタレが好ましいが、贅沢は言っていられない。

2017/10/01 いきなりステーキ

接客は正直あまり良くない。
でも肉を食いに来たからどうでもいいのだ。

四番目に好きな食べ物であるステーキ
俺は焼肉よりもステーキ派。

フォークを刺し、ナイフで肉の塊を切っていく。
たっぷりステーキソースへつけてから口へ放り込む。

まず俺自身が力をつけ元気にならず、どうやって斉藤弘一を元気づけられる?
悲しいとか辛いとか、そんなんじゃなく、元気でいる事がまず必須。

まだ三十代だったであろう谷原愛穂は、もうこの世からいなくなった。
それでも俺の生活に別段変化はない。

一年以上店へ顔を出していないのに、グレンリベットをキンキンに冷やしてずっと待っていた子がいなくなったというだけに過ぎないのである。

帰り道のクレアモールを真っ直ぐ歩き、元ぼだい樹前を通り過ぎた。
そういえばぼだい樹の奈美ちゃんも、グレンリベットをいつも冷凍庫でキンキンに冷やしてくれていたよなあ……。

二千十七年十月二日、月曜日友引。

今日も無事ラッキーハウスでの仕事を終え、西武新宿駅の電車へ乗る。
競馬をやらなくなったので、土曜日曜を無理に休む必要のなくなった俺。

無心に働くだけの日々。
理不尽さも前ほどは気にしなくなっていた。
何故ならもっと気にしなくてはならない事があるから。

急行なので下落合駅はそのまま通過する。

「……」

見舞いすら人数制限により勝手に行けないもどかしさ。
頑張れよな、斉藤弘一!
心の中でエールしか送れない。
でもさ、それでもずっと送り続けるからさ。

睡魔が襲ってくる。
俺も精神的に疲れが溜まっていたのだろうか?
軽く目を閉じた。

「……」

一橋学園?
え、どこ、ここ?

目を開けると見た事のない景色。

俺が乗っていたのって西武新宿線でしょ?
何なの、一橋学園とか青梅街道とか国分寺とかって……。

2017/10/02 一橋学園駅

電車でウトウト寝てしまったら、こんな知らない土地まで来てしまった。
一瞬パニックになりそうになったが、冷静に考えてみる。

おそらく一旦本川越駅まで着いたのだ。
それを俺が起きずに電車は再び西武新宿へ。
それでも起きず、今度は拝島線だか変な路線に切り替わる。
途中で目覚めた。

多分今ここのところだろう。
えーと…、新宿か川越に行きたいのですが……。


二千十七年十月四日、水曜日仏滅。

今日は朝から非常に阿呆な行動をしてしまった。
駅のコンビニでパンとコーヒー買って、会計二百円ちょいだったので、千円札と十円玉を出して、コーヒーを先に作っていた。
コーヒーを作っている途中、何故か会計が千二百円ちょいで釣りは数円かと思った俺は「あ、店員さん、お釣りは募金しといて」とコンビニを出る。

電車に乗って発車してから、初めて気付く。
釣り八百円以上あったやんけ………。

これで五百円玉貯金が少し遠くなってしまった事に落胆しつつ、明日も頑張ろうと夕日に誓った。
明日というかまだこれから仕事だし、今はまだ朝っぱらだし……。

深い溜め息をつきながらラッキーハウスへ出勤する。
客は田中仁が一人だけ。

不動産業をしているらしいが、本当にこの店はその手の稼業が多い。
昔のワールドワン時代でも金を持っている客は不動産系が多かった現実を振り返ると、俺もそっち系に進めば良かったのか。

しかし四十六歳となった今、そんな事をいまさら考えたところでもう遅い。
ヤバいな、俺。

「出前いいかな?」
「はい、どうぞ」

「かぶきちのね…、焼きそば大盛りと豚肉の味噌焼き弁当」
「畏まりました」

田中仁はとにかくよく食べる客だ。
二人前の食事代ですら店で持つシステム。
本当に香川の考案したものは、意味がまるでない。

唯一の救いは出前を頼んだかぶきちが、同じオーナーの酒井さん経営だという部分ぐらいだろう。

年齢は俺より一つ年上の四十七歳。
頼んだものは残さずしっかり食べるので、まだいいが。
斉藤弘一と同じ年になるんだよなあ。
彼もこのぐらい食べていれば、癌になんてならなかったのかも……。

昼に高校時代の同級生小谷野から連絡があった。
今日仕事終わったら、久しぶりに食事でもどうかの誘い。
もちろん喜んで了承する。

いつ以来ぶりだろう?
俺が二度目の歌舞伎町へ復帰したぐらいだったっけ?
少なくとも五年六年は経っているはずだ。

久しぶりの再会を楽しみにゲーム屋の仕事をこなしていく。
夜十時になると、すぐ店を出て待ち合わせ場所へ向かった。

西武新宿駅北口で落ち合い、笑顔で再会を果たす。

「小谷野も白髪が増えたなあ」
「岩上は相変わらず変わらないね」

「何食べる?」
「ん-、どこでも」

とりあえず目的も決まらないまま西武新宿駅前通りを歩く。
通りの真ん中ぐらいにあるステーキ屋風の店に目が行った。

「ねえ、小谷野。この店入ってみない?」
「ああ、いいよ」

俺たちは『ハングアウトハングオーバー』という無駄に長い名前の店へ入る。

店内はそこそこの賑わい。

2017/10/04 HangOut HangOver 西武新宿Brick St.店

メニューを見てステーキを注文した。
料理ができる間、お互いの近況を話す。

「岩上のフェイスブック見ててさ、悪者をやっつける記事がスカッとして痛快なんだよな」
「俺が悪者をやっつける? そんな事書いたっけ?」

「ほら、キャバクラの奴がふざけた電話をしてきてさ、それで岩上が怒ってヤクザ者を仕向けようとしたやつとかさ」

「……。あー、リュアーグのあれか! あれは俺も当時どうしょうもなかったからね。たださ、舐めてんのは向こうじゃん」

「…で、どうしたよ? 突然連絡なんかしてきて」
「ええ、それでなんですが、岩上さん、今店来て自分の担当の子を指名して飲みに来てもらえませんか?」
「はあ? 俺、仕事中だよ」
「そこを何とか」
仕事中を何とか抜け出し、わざわざ身銭切ってキャバクラへ飲みに来い?
随分俺を舐めた台詞を抜かすようになったな、小僧が……。
「おい、小林! テメー、誰に口利いてんだよ」
「いや…、あの……」
「仕事中だって言ったろ? そこを何とかって何だよ?」
「いえ……、あの……」
「店を閉めておまえの店に行き、おまえの担当する女を指名して酒飲んで、金払えって言ってんのか?」
「い、いや…、あの……」
通話が切れる。
何なんだ、あのガキは?
自分から営業の電話をしたまではいい。
それが仕事中にも関わらず店へ飲みに来いだ?
こっちが怒ると電話を切っておしまい。
少なくともリュアーグで俺は、トータル百万円以上使った事のある客だぞ?

あの忌々しい〇〇会のヤクザ直営ゲーム屋で働いていた頃のエピソードか。

あの一件以来、キャバクラのリュアーグとは本当に縁が切れたので、余計な無駄遣いをする店が一つなくなった。
どちらにせよ、金を使っているのにムカつくような事をしてくる店がおかしいのだ。

ステーキが運ばれてくる。

2017/10/04 HangOut HangOver 西武新宿Brick St.店

「サッカーは続けているの?」
「まあ身体はガタガタだけど、サッカー好きだからね。西武台のサッカー部もたまにみんな集まっているよ」

「へえ、そうなんだ。俺なんて高校一年で、サッカー部辞めちゃったからなあ」
「でも今でも岩上の話題はよく集まる時出てくるよ。今度機会あったら誘うから岩上もおいでよ」

「うーん…、でも俺は三年間苦楽を共にってやつとは違うじゃん」
「何を言ってんだって。みんな覚えているんだからさ、岩上が来るなら喜ぶに決まってんだろ」

「まあその時が来たら、前向きに考えてみるよ」

何て表現したらいいのだろうか。
昔から知っている仲のいい同級生って、本当にいいもんだなと素直に感じた。
刹那的な日々を過ごしていた中、久しぶりに楽しい時間を過ごせたと思う。

一つだけ感じたのがこのお店、女の子の従業員の接客は中々良かったが、肝心な料理の味はいまいちだった

帰り際俺が伝票を持って先に席を立つ。
金を出そうとする小谷野を制し、俺がすべて払う。

「割り勘でいいじゃねえかよ」
「前にさ、小谷野が結婚する前か。ほら、奥さんも一緒に連れてきて、川越のビストロ岡田で食事した時あったろ?」

「あー、あったねえ」
「あの時、小谷野は俺に奢ってくれたんだよ。だからここは俺が出す」

「まったくいつの話をしてんだよ」
「だったら奥さんにその金で何か美味いもんでも食べさせてやりなよ」

同じ川越なので、本川越駅まで昔の話題を話しながら帰る。

十五歳くらいからの知り合いなんだもんな。
そりゃあ三十年経ってから会っても楽しい訳だ。

家に帰ってからも心の中は妙にウキウキしたものがあった。
いい気分のまま休みに入れる。
俺は小谷野へ感謝をした。


二千十七年十月五日、木曜日大安。

ゴッドファーザーは理解するまでに、何度か観なくてはならない映画だ。
俺の頭が足りないだけか?
後輩の栄二から借りた二枚のDVDをまたプレステーション3に入れて、再度観始めた。

昼になり腹が減っていたのでカフェアンジーへ向かう。

「すみません、ハンバーグを下さい」

俺の注文にまた笑い転げるいづみさん。
またコイツハンバーグ食うのかよと内心思っているのだろう。

2017/10/05 カフェアンジー ハンバーグプレート

だってしょうがないじゃないか。
二番目に好きな食べ物がハンバーグなのだから。

写真を撮りフェイスブックへアップすると、スガ人形の栄治さんからすぐコメントがつく。
まだアンジーにいるのか書いてあったので、まだいると答えると、本当に栄治さんまで店へやってきた。

俺はもう食べてしまったあとなので、別の料理も注文する事にする。
キノコの和風スパゲティを追加で頼む。

2017/10/05 カフェアンジー キノコの和風パスタ

安定の美味しさ。
俺は毎週ここで食べるの楽しみに生きているようだ。

会計時栄治さんが俺の分まですべて払ってくれる。
二品頼んでいたので出すと言ったが、先輩命令でそれは通らない。

俺はご馳走になった感謝を述べ、部屋へ帰ってゴッドファーザーの続きを見て過ごした。

二千十七年十月七日、土曜日先勝。

ラッキーハウスは食事代を無料だけでなく、客のタバコ代ですらすべて店が出す。
一人一箱ではない。
ヘビースモーカーの客の場合、求められれば延々と出し続けるのである。

毎度の事ながら何という経費の無駄遣いだろうと思う。
それでも下っ端の一従業員に過ぎない俺は、大人しく従うしかない。
必然的にドリンクだけでなく、タバコも大量に買い出しへ行くようだった。

基本的に俺が買い物へ行くので、最初に軽い分タバコを先に済ませる。
十個単位のカートンでなくセブンスターは何個で、メビウスはいくつといった頼み方なので、当然時間は掛かってしまう。

俺は道順的なものを含め、西武新宿駅北口近くのローソンへ向かった。
何故なら時期的に七百円くじをしていたのが選ぶ一番の要素である。

パンを一つだけ持っている客に気遣い、時間掛かるから先にレジへどうぞと誘導しながらタバコ代で三万円ちょっとを支払う。

四十三回分のくじを引く。

「おい、ちょっとさすがにこれはねえだろ?」

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