恋愛万事塞翁が馬【星野 奈々】
なんてことだろう。
これからテストだなんて信じられない――。
テストが嫌という訳じゃない。
いや、テストは嫌なんだけども……。
「机の上にシャープペン1本、替え芯、消しゴムだけを出すように」
矢沢先生の発言に、わたしは必死で筆箱の中を探し回る。
シャープペン、替え芯に。そう、そうなのだ。
さっきの言葉で思い出した。
あろうことか消しゴムを昨日なくして、今日そのまま学校へ来てしまったのだ。
予備を常にもっている柊くんが羨ましい。
でも結局当てにされて、さっき柴田くんに貸していたっけ……?
ああ、だめだ。
いまは、そんなことより現状をどうにかしないと。
テスト答案が消せないとなると結構、いやかなり厳しい。
泣きそうになるのを堪えていると、またも隣の席の柊くんと視線が合った。
今日はよく柊くんと目があうな……。
柊くんはおもむろに自分の消しゴムを二つに割って、その片方をわたしの机の上にそっと置いた。
これを使ってくれ、ということなのだろうか?
……そんな、まさか。
まさかすぎる。
イケメン対応とは、このことですか?
女子に対してはあまり話しかけてこない……いや、まったく話しかけてこない柊くんが。
いや柊くんはとても優しい人なのだ。
だって、知っているもの。
図書館で高い場所の本を取ろうとしてると、代わりに取ってくれたり。
ゴミ捨て当番のときにも、さりげなく重いものを率先して持ってくれる。
でも気取らず話さずクールな感じで。
「ありがとう」
小さくお礼をいうと、柊くんはいつも通り頷いて返してくれた。
この消しゴムは、大事に使おう。
いや、使うのがもったいないな。
むしろ、大切に持っておこうかな……。
テストのことより、チラチラと消しゴムのことを考えてしまう。
にやけてしまう顔を、柊くんに見られないようにしなくっちゃ。
無事抜き打ちテストを終え、本日最後の六時間目の授業も滞りなく終わった。
胸をなでおろし、今日は帰るだけだなと思っていたら矢沢先生が教室のドアを開けながら廊下から声をかけてきた。
「そうだ、今日の日直の人は廊下に出て」
そういわれた柊くんは《《カバンをもって》》席を立ち、慌ててわたしも席を立った。
そうだ、そうだった。
わたし、今日……日直だった、と柊くんの後を追った。
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