36.グノーシス主義
画像は以下のサイトから転載。
前回はグノーシス主義のルーツ、ユダヤのメルカバ神秘主義についてお伝えしました。
知っている者
メルカバの影響によって、ヘレニズムの神秘学派に共通する「システム」が生まれました。
神秘主義者たちの目的は、天に上昇することです。ただ上昇するだけでは意味がないので、七つの惑星を段階的に通過することによって魂の穢れを取り除く、という概念が生まれました。いわゆるイニシエーションです。
魂はかつて、人間の肉体に降下しました。それによって穢れが付着したわけです。
上昇するためには瞑想の技法を習得しなければなりません。この技法には、ゲマトリア(数秘術)、呼吸のコントロール、賛美歌、特定の体の動き、などが含まれます。
八十年代のハリウッド映画やテレビドラマでは、レオタード姿でヨガをする女性がよく登場しました。

ヨガで健康にはなれません。バレエなどもそうですが、あのような格好でどのようなポーズを取っても、単にエロい目で見られるだけです。いわゆるキッズにレオタードを着せるのは、いつでもわが子とセックスしていいですよ、というタントラ的な表明です。
クンダリニーヨガのクンダリニーは「螺旋を有するもの」という意味です。つまり蛇です。

上の画像は以下のサイトから転載。
グノーシス主義という言葉は、ギリシャ語で 「知っている者 」を意味するグノスティコス(gnostikos)に由来します。
知っている者は技法の意味と成果を知っていますが、秘儀のテンプレどおり、その「知識」はわたしたち下々には決して開陳されません。そして親はなにも知らず、わが子にエロい格好をさせて「お習いごと」だと信じ切っています。
これこそがグノーシス、啓示によって得られる知恵です。世を見れば秘儀の成果にあふれています。

紀元後一世紀生まれの律法学者、ラビ・アキバは、トランス状態で七つの天界を旅し、神の玉座(戦車)に到達し、エゼキエルのように神の幻影を見た人物です。
四人で試したようなのですが、タルムードによると、一人は死に、一人は発狂し、一人はユダヤ教自体を辞めてしまいました。
メルカバに関する最も古い文献は、ヘカロットという文書です。ヘカロットは「宮殿」という意味です。
小宮殿、小ヘカロットは、ラビ・アキバが書いたといわれています。大宮殿、大ヘカロットという文書もあり、こちらはラビ・イシュマエル・ベン・エリシャのものとされています。
黒魔術の哲学
ユダヤのメルカバ神秘主義は、さまざまな人たちに影響を与えました。
その結果、アレクサンドリアでは似たようなことをやる異端キリスト教の宗派がぞくぞくとあらわれます。グノーシス主義は、それらを一括りにした総称です。

キリスト教誕生以後、グノーシス的なキリスト教、たとえばアリウス派などが登場しては弾劾されます。
本当に弾劾されまくったので、グノーシス主義に関する知識は、紀元後一世紀からの教父たちの文献からしか得ることができません。教父たちはグノーシスの敵なので、バイアスがかかっています。
グノーシス主義者が信じるところでは、人間の肉体の中には神の領域から下りてきた神の火花が宿っています。それが啓示によって目覚めさせられ、そして人間は再び霊的世界に結合します。
グノーシスの人たちは、キリスト教に急進的な二元論的解釈を持ち込み、後ろに控える万能の神、そして邪悪な宇宙を創造した神の現し身、という対立構造を生み出しました。
すると物質世界は悪ということになります。人間の肉体も悪です。
宇宙の創造主はデミウルゴスと呼ばれました。デミウルゴスは、プラトンの『ティマイオス』で用いられた言葉です。
物質的世界の形成と維持の責任を負う職人のようなもので、神ではない存在者です。
なのでグノーシス主義者は、神に課された道徳もまた悪で、人間を抑圧するものだと考えました。
抑圧から解放されるには、やはり知識、グノーシスが必要です。

道徳ゆえにできないこととはなんでしょうか。例えば殺人などです。人を殺したことがないのに殺人を悪と決めつけるのは浅はかです。なにごとも経験です。
あらゆる姦淫も試してみます。ふつうのセックスではわからないことがありますので、近親相姦を試す必要もあります。息子娘とセックスしたことがないのに近親相姦を悪と決めつけるのは浅はかです。
さらに踏み込んで、男どうしでやってみます。新たな発見があるかもしれません。
次はよその子に手を出します(プラトンお墨付き)。
人を食べたらどんな味がするでしょうか。
うんこを食べ、おしっこを飲んでみましょう。
やってみなければなにもわからないのです。

なにごとも経験、というグノーシスによって、黒魔術の哲学的な基礎が築かれました。人間や動物を拷問したらどうなるのだろう、頭蓋骨に穴を開けたらどうなるだろう、という純粋な探究です。グノーシスを得るためなので、かわいそうなどとは言っていられません。
現在はロボトミーなどは(表向きは)行われていません。これをしてわたしたちは人類の進化と捉えます。昔の人は愚かだったので錬金術やロボトミーをやったのだ、というわけです。
何度もしつこくお伝えしますが、科学の根っこは錬金術、黒魔術です。勘のいい方なら、わたしたちが魔術的世界に暮らしていることに気づいているでしょう。
悪いことにこのグノーシスは、物質的、経験主義的な現在の社会では、役に立ちます。
人を殺した経験のある人は、経験がない人より腹が据わっているでしょう。その経験で得た知識によって、まさにグノーシス的に、世の中を眺めることができます。
なので政治家や大企業のCEOなど出世した人たちは、いろいろと経験させられています。そしてピュタゴラスのように試練を乗り越えたので、現在のすばらしい地位にいるわけです。
エレミヤ書五十章にはこうあります。
主は言われる。剣はカルデアびと、バビロンの住民、そのつかさたち、その知者たちの上に臨む。
剣は偽り者の上に臨み、かれらは愚か者になる。剣は勇士の上に臨み、かれらは滅ぼされる。
知恵、グノーシスは、神に禁じられたからこそ、このように執拗に求められました。
グノーシスの宇宙
グノーシス主義者たちは、善が存在し、そこからさまざまなイオンが発せられる、と信じていました。

イオンとは、上位の神(デミウルゴスではないほう)のさまざまな発露です。
グノーシスの人たちによると、宇宙は地球を中心とする同心円状の球体で構成されています。

見づらいですが、中心から人間(地球)、アルコン、デミウルゴス、ソフィア、イオン、すべて(プレローマ)です。
これらの球体は惑星の円軌道によって示されます。そしてそれぞれがアルコンによって支配されています。
アルコンは、霊的な人間に敵対する神です。
魂は、行くところまで行くとプレローマにたどり着きます。プレローマは三十個のイオンで構成されていて、それぞれが月の三十日に対応しています。
その中に黄道十二宮の星座があり、地上の星座に相当するのが十二使徒です。
人間の魂は、善によって人間の体に宿された純粋な精神です。体はもちろんデミウルゴスによって穢れたかたちで創造されました。
善と再会するには、秘密のグノーシスを手に入れなければなりません。
グノーシスを手に入れると、善の魂は悪のデミウルゴスのように、イオンを迂回することができるようになります。
神学者アレクサンドリアのクレメンス(紀元後一五〇年ごろ~)は、著書『異教徒への勧告』で、グノーシスたちの主張を記しています。
洗礼を受けるまでは運命は実在するが、洗礼を受けたあとは占星術師はもはや正しくない。
上記の宇宙とその目的は、星々の支配、決定論という運命から霊的な人間を解放することでした。
結局のところ、現在もわたしたちを悩ませているヒューマニズムにつながっています。わたしたちはなんにでもなることができます。ベストセラー作家にもなれます。修行によって射精せずにイクこともできます。
グノーシス主義の中心的な教義は、魂が惑星圏を通過することです。
そのルートは救世主によって開かれました。惑星にはそれぞれ、聖闘士星矢の十二宮編のように門番(アルコン)がいるのですが、救世主は門番たちを鎮めるための神聖な名前を知っています。
この門番は、天使、またはギリシャ・ローマの神々を容易に想起させます。
アルコンは幻視者を脅かします。幻視者は賛美歌や祈りを唱えることで、恐れを克服し、通過することができます。
現在では、キリスト教のグノーシス主義がメルカバ神秘主義に起源を持つことは、ほぼ受け入れられています。
二世紀、キリスト教に改宗したユダヤ人は、メルカバ神秘主義の要素をキリスト教の人たちに伝えたようです。
歴史家カエサレアのエウセビオス(二六三年ごろ~)は、著書『教会史』で、初期教会のキリスト教作家ヘゲシッポス(一〇八年~)の著作を引用しています。
しかし、テブティスは司教にされなかったので、教会を腐敗させはじめた。かれはまた、民衆の中の七つの宗派から生まれた者である。たとえば、シモンはシモン派から生まれ、クレオビウスはクレオビウス派から生まれ、ドシテウスはドシテウス派から生まれ、ゴルテウスはゴラテニ派から生まれ、マスボテウスはマスボテウス派から生まれた。かれらからメナンドリア派、マルキオン派、カルポクラテス派、ヴァレンティノス派、バシレイデス派、サトゥルニア派が生まれた。それぞれが私的に、別々に、自分の独特の意見を持ち込んだ。かれらから偽キリスト、偽預言者、偽使徒が生まれ、かれらは神とそのキリストに逆らって発した堕落した教義によって、教会の一致を分裂させた。
同じ著者(ヘゲシッポス)はまた、ユダヤ人のあいだに生じた古代の異端について、次のように記している……ユダ族とキリストに反対するものには、次のようなものがあった。エッセネ派、ガリラヤ派、ヘメロバプテスト派、マスボテア派、サマリヤ派、サドカイ派、パリサイ派。
オフィス派
オフィス派というグノーシスの一派がいました。エッセネ派の伝統を受け継いだ人たちです。
この人たちは蛇を崇拝していました。先に掲載した、足が蛇になっている不気味な兵士です。
なぜ蛇を崇拝するかというと、エデンの園で神(創造主=デミウルゴス)に最初に反抗した者であり、人類に知恵をもたらしたすばらしい存在だからです。
十九世紀イギリスの作家、チャールズ・ウイリアム・キングの『The Gnostics and Their Remains』によると、オフィス派は旧約聖書を完全に拒絶し、新約聖書も使徒どもが堕落させたので価値を失っている、と主張しました。
ヤハウェはヤルダバオトと呼ばれます。ヤルダバオトはデミウルゴスのことです。
ヤルダバオトは自分の創造物に不満を持っていました。エヴァを通じて破壊しようとしたのですが、そこでソフィア(知恵)が蛇を遣わし、人類を創造主から解放しました。

イエスはマリアから生まれた人間の男です。創造主が物質を生むデミウルゴスだからです。
ソフィアはキリストと一体化し、七つの惑星圏を下降します。その過程で、それぞれの惑星がまだ保持している神の火花を引き寄せます。
キリストは、イエスがヨルダン川でバプテスマ(洗礼)を受けた瞬間、イエスの中に入りました。
それからイエスは奇跡を起こしはじめるのですが、ヤルダバオトはイエスが自分の(悪い)王国を破壊していることを知り、ユダヤ人たちを敵対させ、イエスを死刑に処しました。
イエスが十字架にかかると、キリストとソフィアはイエスの体から離れ、自分たちの場所に戻りました。
そのあとキリストとソフィアはイエスを連れていき、物質的な肉体を地上に捨て、エーテルからつくられた新しい肉体を与えました。
現在も、あたかも真実であるかのようにグノーシスを語る人たちがいます。占星術やクンダリニーヨガが典型で、肩書きつきで語られると、若い人は信じてしまいます。見よう見まねで瞑想などをしたことがある方もいるのではないでしょうか。
イエスはユダヤ教の律法学者とパリサイ派を「蝮の世代」と言いました。
蛇たちよ、蝮の世代よ、おまえたちはどうして地獄の責め苦から逃れることができようか。
メルカバの世代への糾弾が、聖書に堂々と書かれています。世界統一宗教を目指している人たちとしては、できれば削除してしまいたい箇所でしょう。
ちなみにニコライ派というグノーシスたちも、初期キリスト教に甚大な影響を与えました。ヨハネの黙示録二章にも出てきます。
あなたはニコライ派の行いを憎んでおり、わたしもまた憎んでいる。
錬金術師アイザック・ニュートンの『Drafts on the history of the Church』にはこうあります。
ニコライ派のグノーシスたちは、肉欲的な快楽にふけり、互いを食卓に招き、食事のあと、男は妻にこう言い、妻の元から離れた。起きてきょうだいを慈しみなさい。そして交わったあと、かれらは不潔に、男の種をキリストの体と言って見知らぬ父に捧げ、女の月経を保存して、これもキリストの血と言って捧げた。
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