白の表現|卵殻の耳飾り
漆には、純粋な「白」が存在しない。
漆そのものが茶褐色のため、白い顔料を混ぜ合わせても、どこか温かみのあるベージュになる。
(白漆を塗った石のオブジェの制作記⇩⇩)
そのため、古くから「白」を表現するために用いられるのが「卵殻(らんかく)」という技法。
漆を接着剤にして、細かく砕いた卵の殻を一つずつ貼り、敷き詰めていく。
今回はこの技法に挑戦。
淡水パールと漆、そして卵殻を掛け合わせた小さな耳飾りを制作した。

素材に宿る、時間の層
素材として使ったのは、
淡水パール、漆、そして卵の殻。
心惹かれたのは、これらがすべて「時間の層」を重ねて生まれた素材である、ということ。
樹木がゆっくりと紡ぎ出した樹液、漆。
幾重にも真珠層を重ねてできた、淡水パール。
そして、命の起源そのものである卵。
それぞれが異なる場所で、異なる時間を経てここにある。
この巡り合わせの美しさに惹かれた。
果てしなき下準備
今回使用したウズラの卵。
身近な食材である卵だが、その殻を「素材」へと変える道のりは、またしても根気のいる作業だった。
卵の斑点模様を脱色し、洗浄する。
裏側の薄皮を一枚一枚、丁寧に取り除き乾かす。

殻が分厚いため適さないらしい。
今後も卵殻をするにはこの作業がセットなのだ・・・!
正解のない、選択の反復
素材の準備が整ってからも、息を潜めるような作業は続く。
細かく砕いた卵の殻を、パールの曲面に合わせて、一枚ずつ配置していく。
どれほどの隙間を開けるか。
どの破片を隣同士にするか。
均一なものは、一つとしてない。
その選択の積み重ねが、作品の表情を作っていく。
上から漆を重ね、そしてまた静かに研ぐ。

そして完成した小さな耳飾り。
自然界が紡いだ時間と、工房で重ねた手仕事の時間が、ぎゅっと凝縮された、密やかな結晶だ。


