Day19 しずく|それは新しい物語のはじまり
わたしのコーヒーとの出会いは、記憶も不確かな幼い頃。
父が休日の朝、豆を挽いてコーヒーメーカーでコーヒーを淹れていたから、わたしは緑茶や紅茶よりも先に、その飲み物の名前を覚えた。
自分でコーヒーを飲むようになったのは、眠気に悩み始めた中学生の頃。
フタの締まる缶コーヒーが、塾へ行く時のお供だった。
大人になっても、家にはインスタントコーヒーを常備していた。スーパーでお得に買えるものから、お土産にもらったドリップパックまで色々だ。
だから、ある日もらったギフトカタログではコーヒーメーカーを注文した。豆を買う習慣ができた。コーヒーメーカーはそのうち、夫が職場のボウリング大会で勝ち取った、電動ミル付きのものに変わった。
充実したコーヒーライフはこれにて完成かと思ったけれど、これまたある日、変化が訪れた。
“TABBY's COFFEE ROASTER”さんと「なんのはなしですか」のコラボ商品、その名も「なんのはなしです珈」の発売だ。
なんとしても飲みたい。ありがたいことにネット注文もできる。
すぐ販売ページに飛んで、カートに商品を入れようとしたところ、手が止まった。
「粉」と「豆」が選べる。
豆でもよかった。挽きたてはやっぱり美味しい。
けれどわたしは直感で「粉」を選んだ。そしてネット通販でステンレスのコーヒードリッパーを注文した。
粉なら、毎朝気軽に淹れられる。
すぐ執筆のお供にできる。
最初は「粉のほうが早く飲めるから」という気持ちだった。
いざコーヒーの粉とドリッパーが届いて、わたしの「なんのはなしです珈」ハンドドリップデビューの日がやってきた。
このコーヒーはとっておきの中でもとっておき。いつもはドリップパックにあふれんばかりのお湯を注いでしまうけれど、可能な限り丁寧に淹れたい。
まずは少量。粉を少し蒸らすイメージで。
それからまた少量。少しずつ少しずつ。
ぽたり、ぽたり、円錐の先からコーヒーのしずくが落ちてくる。

初めての光景だった。
コーヒーカップの中に入れるドリップパックや、電動のコーヒーメーカーでは、こんな繊細な景色は見られない。
同封されていたショップカードや物語を読みながら、ぽたり、ぽたり、コーヒーに生まれ変わっていく水滴を見守る。
初めてきちんと(?)ハンドドリップしたコーヒーは、飲んだことがなかったルワンダの豆だったというのもあって、新鮮で、さわやかで、心を澄ませてくれるような味がした。
今でもお湯で溶くだけのコーヒーはよく飲むし、休日には豆を挽いて、夫とおうちカフェタイムを楽しんでいる。
そこに加わったハンドドリップの静かな時間は、まだわたし一人だけのもの。書くことを彩る大切な儀式だ。
喜木凛さんの企画に参加させていただいています!
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