陽光のモンテカルロ、作品の裏側 | ショートショート
私がはじめて書いた自作の裏側。
お楽しみください。
🧥
えー、みなさん。
どうもこんばんは。古畑にゃん三郎です。
モンテカルロの陽光の下で起きた、あの奇妙な事故。哲学を語る男が突然駆け出し、赤いポルシェにはねられた──。
その真相を、今日は順を追って、解き明かしたいと思います。
まず、現場の状況ですが……
テラス席には置かれたものは以下の通り。
• ニーチェ『善悪の彼岸』ハードカバー
• レモンスカッシュ
• そして、ベティさんの麦わら帽子
海外情緒ノベルを作るための三種の神器です。
『素敵な小説を書くためのオススメ小道具10選。海外編』と言う有料noteですね。
わたしも買いました。
私が注目したのはここです。
観光客の悲鳴。
ナプキンが舞い、海風がワインの香りを攫う。
ベティは、ゆっくりと立ち上がった。
テーブルの上では、ニーチェの本が風にめくられている。
「……またひとり、記号に殺されたわね」
数行前まで閉じられていたハードカバーの本。なぜ風でページが捲れるのか。私は疑問でした。
そこで、科捜研の女に分析を依頼しました。
※断じて固有名詞ではありません
430グラムのハードカバー、布張りで装丁された『善悪の彼岸』の表紙が風でめくれるために必要な風速。これは計算上、毎秒9メートルです。
ちなみに10メートルで強風となります。
いいですか。風速9メートルとなると…
ナプキンは紙吹雪のように飛ぶ。
レモンスカッシュのグラスは倒れる可能性大。
そして麦わら帽子は、当然のように空へ。
つまり、ページがめくれる前にテラス席の全てが飛ぶ。この状態になるんです。
ここで確実に言えることがあります。
「あなたは、嘘をついている」
すでに答えは出ています。
つまり──
哲学男は、こう叫びながら駆け出したんです。
「君の帽子が!!」
しかし、彼は気づいていなかった。
その先には坂を下る赤いポルシェのオープンカーが迫っていたということに。
結果、彼ははねられた。
原因は、哲学でも比喩でもない。
たったひとつ。
風速9メートル。
これが、すべての鍵でした。
🚬
古畑にゃん三郎の語りを聞き終えたベティは泣き崩れた。
「彼は愛に生きて、愛に殺されたのね」
古畑にゃん三郎は、いつのまにか持っていた帽子をそっと置く。
「風は嘘をつきません。ただ、人が勝手に物語をつけ足してしまうだけなんです」
ベティは麦わら帽子を抱きしめたまま、かすかに笑った。モナコの陽光は、今日も飽きもせず海を照らし続けている。
🧥
作品の裏側いかがでしたか。
え、これちがう?
とりあえず本編の方も楽しんで欲しいにゃん。
