連作恋愛短編 | 🎃ハロウィンの夜「眼鏡の奥の輝き」
僕は眼鏡を愛している。
そう言ったら笑われるだろうか。
いや、きっと引かれるだろう。
けれど、この衝動は昔から僕の中に巣食っていた。
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あれは六年生のころだったか。
近所にサラが住んでいた。そう、みんなが知っている、あのサラだ。
夏が秋に変わる、少しだけ過ごしやすくなった夕暮れ。
公園のベンチで雑誌をめくるサラ。
近所にいるとき特有の無防備な格好で、柔らかそうな白い肌が覗く。
銀縁の眼鏡をかけていた。
汗ばんだ頬に光が射し、レンズの奥でまぶたが瞬く。眼鏡の奥で揺れる硬質な目の光と、布の奥に透ける柔らかな膨らみ。
その対比を認識した刹那ー
僕の身体は硬直し、眼の奥に白い稲妻が走った。
呼吸は途切れ、なにかが爆ぜた。
その瞬間に、僕の世界は形を変えた。
それからずっと、眼鏡をかけている女性を見ると、無意識に惹かれてしまう。レンズ越しの目元。フレームに切り取られる頬のライン。素顔よりも、その補助具を通じて初めて顔が完成するように思える。
去年のハロウィン。文芸サークルのイベントで、ミキが仮装してきた。
マスクの形がちょうど眼鏡のように目元を縁取っていた。僕は一瞬で引き寄せられた。サラの姿と重なり、忘れていた熱がぶり返す。
彼女は軽い視線恐怖症らしい。
気づけば口をついていた。
「眼鏡が似合いそうだね。かけてみたら?」
ミキは驚いた顔をしたけれど、数日後、本当に眼鏡をかけて現れた。
度の入っていないレンズ。けれど僕には、その姿が完璧に見えた。
付き合い始めるのに時間はかからなかった。僕は眼鏡をかけたミキに夢中になり、彼女もそれを喜んでいるようだった。やがて一緒に暮らすようになった。
けれど、同棲生活には思わぬ落とし穴があった。家に帰れば、素顔の彼女がいる。そのまま、無防備に笑いかけてくる。
僕は頷き、微笑む。だが、心の奥で小さな失望が膨らんでいた。
あの透明なフィルターがないと、僕は彼女を愛せないのか。
夜の褥。
どうしてもサラが浮かんでくる。
銀縁の眼鏡と夏の陽に透けていたあの柔らかそうな身体。あれこそが、僕の原点。
ミキは確かに美人でスタイルもいい。
けれど、僕を狂わせるのは素の彼女じゃない。
レンズの奥にある虚構だけだ。
このところの僕は、ベットの上のミキに眼鏡をかけさせる方法だけを考えている。
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ハロウィンを彩る純愛ストーリー。いかがでしょうか。ぜひミキのお話も読んでくださいね。
明日は、ヒナコと探偵の日なのでお休みします。
続けて読んだ方は想像がつくと思いますが、次はサラ編。
土曜日に投稿します。
