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連作恋愛短編 | 🎃ハロウィンの夜「メガネは私を守る盾」

私のメガネに度は入っていない。
でも、私を守っている。

👓

透明なレンズの奥に身を隠すことで、誰かの視線から逃げられる。ほんとうの自分を見せずに済む。

幼いころの記憶が、まだ皮膚の下に棘のように残っている。
河原で遊んでいたとき、転んで膝を割った。血が滲み、皮膚が裂けて、骨が覗くほどの傷口だった。そこに注がれたのは、異様に熱っぽい視線。傍らにいたヒサシが、息を呑みながら食い入るように膝を見ていた。
泣き叫ぶ私を放置して。

私はそのとき、視線というものが人を深く傷つけることを知り、人の視線の怖さを刷り込まれた。

去年のハロウィン。
文芸サークルの仲間が小さな仮装イベントを企画した。私は仮装の陰に隠れて街に出た。顔を覆うマスクが有れば、注がれる視線が気にならないことを発見する。

その場にリョウがいた。普段は作品を読み合い批評をかわすだけの集まり。私は対面の方には積極的に顔を出してなかったので、直接会ったのは、はじめてだった。

だけど、仮装をしていると不思議に距離が縮まった。彼は私の仮装を大げさに褒めながら、私が心地よい距離を保てるように、自然に振る舞っていた。

「ずいぶん、楽しそうだね」
そう言われ、私はつい口を滑らせてしまった。
「……隠れられるから」

一瞬の沈黙。笑われると思った。
けれどリョウはただ頷いて、
「じゃあ普段は伊達メガネでもかけたら?」
と真顔で言った。からかいの色はなく、その言葉が体温のように伝わってきた。

こうして、私は自分を守る盾を手に入れた。

今、私はリョウと一緒に暮らしている。恋人という言葉が似合う日々だ。外に出るとき、まだメガネは欠かせない。けれど彼といると、外す時間が少しずつ増えてきた。
外しても、リョウの視線は気にならない。

私のメガネは盾だ。
リョウは盾を持たずに向き合える、はじめての人になるのかもしれない。

👓

放置していたヒサシはこいつです。

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