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【ショートショート】おかゆの熱が冷める前に/【予感の味】風まかせ文芸部 

お題:予感の味


おかゆの熱が冷める前に

ねつでた きょうかいぢゃやすむ

39ど

え?大丈夫?

だめ

後で色々買ってくから

欲しいものある?

あいがほしい

重症っぽいな、もう寝てろ

すき

さみしい

ひとりいや

なきそ

昼過ぎまで待ってろ

すき

けっこんして

***

目が覚めた。お腹が少し空いている。
熱は……37度3分。良かった、結構引いてる。
「いま なんじ?」
スマホを開く。
「………………………………」
既読通知を見て絶句した。
あああ"あ"。友人になんてこと言ってんだ私ぃ。
てか誰だこれ送った奴?
いつの間にかアカウントが乗っ取られた?
……んな馬鹿な。
犯人は私です。相違ありません。
理性が仕事放棄して。本音が漏れてました。
よって私は無罪……にならないよね。
なんてこった。今まで隠し通して来たのに。万一バレたらどうすんだよ!もうそばに居られなくなっちゃうじゃん。

「え……そうなんだ……うん、有難と」

なんて戸惑った表情で、連絡先ブロックされて徐々にフェードアウトされてしまったらどうしよう……いや、優しい彼女の事だ表面上『無かった』事にしてくれるかもしれない。
それはそれで、私が恥ずか死してしまいそうだ。
「あ"あ"あ”っ……時間よ戻れ!」

……

わかってる。所詮、一人の願望等神様が聞いて下さるわけないけどね?

まだブロックされてないから大丈夫。きっと妄言だって分かってくれてる。体調悪いからネガティブに考えすぎてるんだ。
落ち着けわたーー

ピンポーン

「はぎゃぁ!」
なんてタイミング!心臓止まるとこだった。

コンコン

「何か凄い声したけどね大丈夫〜?」
「だ、大丈夫!ゲホッ、いま開けるよ!」

寝間着のまま、急いで玄関に向かう。
ガチャ
日の光を背に、玄関に女神が顕現していた。
茶色染めた、セミロングに眼鏡をかけたスーツ姿の女性。私が一方的に『LOVE』な友人。

「や、やぁ……けほっ」
「こんにちは。……うん。少しは良くなってるみたいね」
「あ、ああ。おかげさまで?」
「なんで疑問形?取り敢えず薬と冷えピタ、栄養剤とゼリーなんか買ってきたよ」
「ありがとう。後でお金払うよ」
「うん。レシート中に入ってるから」
そう言うしっかりもののと所が好き。
「お昼過ぎてるけど、何か食べた?」
「あ、今起きたばっかりで、何にも……」
くぅ~
ベタな音がした。恥ずかし過ぎる。
「じゃあ、嫌じゃなければキッチン貸して?おかゆ位で良ければ作ってあげる」
優しい。惚れ直しちゃう。
「じゃ、じゃあお願いしてもいい?」
「うん。もちろん。病人は出来上がるまで寝てて良いから」
「ありがとう」
ホント好き。結婚して!幸せにするから。

***

ぐつぐつ
キッチンからおかゆを煮る音と、彼女の料理してくれている生活音が心地いい。
彼女はメッセージの事に一言も触れてこない。気を使ってくれてるんだろうな。
少しの気まずさと好きな娘が自分の為に看病してくれている嬉しさがないまぜになって情緒がめちゃくちゃだ。
普段は見かけのボーイッシュさからか周りから結構頼りされる側だってのに。今はふにゃふにゃになっている自覚がある。

「おまたせー」
土鍋をお盆に乗せてキッチンから声をかけてきた。
「悪いね。色々して貰って」
「何よ友達でしょ?こういう時頼ってよ」
「ああ、ありがとう」
そう、『友達』だ。高望みをしてはいけない。
「そのままベッドの上で良いわよ食べさせてあげる」
優しいなホント。せめて、今は甘えさせてもらおう。きっといい思い出になる。
「じゃあ、お願い」
「はい、じゃあちょっと待ってて。冷ますから」
おかゆを一匙掬い、自分の唇に寄せ、息を吹きかけ冷ましている姿が堪らなく愛おしい。
「はい、あーん」
あむ。……鶏ガラの出汁がよくきいていた。
「……美味しい」
「ありがと。あーあ。一緒に住んでればいつでも作ってあげられのになぁ。寂しい時も2人なら大丈夫でしょ?」
「え、それって……」
俯いた彼女の顔が熱を出した私より真っ赤になっている。
「……」

神様っているのかも。

彼女のおかゆは、これから訪れる事の予感の味がした。


懲りずに参加させて頂きました。
私にしては珍しくほのぼのしてると思います。
お楽しみ頂けましたら幸いです。



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