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「会社を売れば、借金も消えますか?」——個人保証とM&Aの本当の話

「会社を売れば、個人保証も消えますか?」

その質問をされた瞬間、私は少し言葉に詰まった。

ある製造業の社長・Mさん(60代前半)との最初の面談でのことです。

Mさんは創業20年の会社を経営していました。売上は安定していたが、設備投資のために借りた資金の個人保証が5,000万円ほど残っていた。

「会社は売れるかもしれない。でも、個人保証が残るなら意味がない」

そう言いながら、Mさんは手元のコーヒーカップをじっと見ていました。

会社を売るかどうか悩む以前に、「個人保証という鎖」が気になって仕方ないのだと、その時わかりました。

結論から言います。個人保証は、M&Aのスキーム次第で解除できる場合があります。

■ そもそも「個人保証」って何?

田畑さん、「個人保証」という言葉、聞いたことはありますか?

中小企業の経営者が銀行などから融資を受けるとき、よく求められるのがこれです。

簡単に言えば、「会社が借金を返せなくなったら、社長個人が代わりに返します」という約束。法律的には「連帯保証」と呼ばれることが多い。

これが経営者にとって重い枷になります。会社が順調なうちは問題ないが、もし傾いたとき——あるいは自分が経営者でなくなったとき——もその責任が個人に残る。

「M&Aで会社を売った後も個人保証は消えない」そう思っている経営者は今も多い。でも、それは必ずしも正しくありません。

■ 個人保証を解除する3つの方法

では、どうすれば解除できるのか。実務上よく使われる方法を3つ紹介します。

まず「買い手が保証を引き受ける」パターンです。M&Aの条件として、買い手側が「個人保証を切り替える」ことに合意すれば、売り手の保証が解除される場合があります。これは「保証人の交替」と呼ばれ、金融機関の同意が必要になります。

次に「売却益で借金を返済する」パターンです。M&Aの対価(売却金)で、個人保証が付いている借入金を一括返済できれば、保証義務そのものがなくなります。実はこのケースが一番多い。売却金の一部を返済に充てることで、借金と個人保証を同時に解消できます。

もう一つは「M&Aスキームとして設計する」パターンです。会社分割など特定のスキームでは、個人保証の整理を前提に設計することもできます。これは案件ごとに異なるため、専門家との相談が必須です。

■ Mさんのその後

Mさんのケースでは、M&Aの売却対価の中から借入金を全額返済することを条件として交渉に組み込みました。買い手側もそのスキームに同意し、成約。

成約後、Mさんから連絡がありました。

「個人保証が全部なくなりました。人生で初めて、借金のない状態になりました」

その言葉が今も忘れられません。

個人保証を背負ったまま経営を続ける日々は、どれだけ会社が順調でも、どこかに重さがある。それが消えた瞬間の解放感は、傍から見ている私にも伝わってきました。

■ 知っているかどうかが、選択肢を変える

「個人保証があるから売れない」「どうせ残る」と思い込んでいる経営者は、今でも少なくない。でも、それは必ずしも正しくない。

スキームや交渉の設計によっては、個人保証の解除を条件に含めることができる。重要なのは「そういう選択肢があること」を知っているかどうかです。

知らなければ、諦める。知っていれば、交渉する。

M&Aを検討するかどうか以前に、まず「どんな選択肢があるか」を知ることから始めてほしい。

あなたが今、個人保証の重さを感じているなら——それを前提にM&Aを設計することは、十分に可能です。

あなたの会社の個人保証は、いまいくら残っていますか?

それを知っているだけで、M&Aとの向き合い方が変わるかもしれません。

ハッシュタグ:#M&A #事業承継 #中小企業 #個人保証 #会社売却

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田畑俊介|M&A仲介10年のリアル よろしければ応援お願いします! いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!