【2025年版】変わる読者・進化する読者―AI時代の読者生態系
7年越しの検証
2018年「変わる読者」について7つのポイントを書きました。当時は「新読者」「読書感覚の変容」「エモい」といったキーワードで語られていた現象が、今や社会の主流となっています。
7年が経過した今、その予測は的中していただけでなく、さらに新たな次元へと進化しています。AI、Z世代、ショート動画、アルゴリズム。これらが織りなす新しい読書生態系を、本質的な視点から捉え直してみたいと思います。
池松潤/Jun Ikematsu
コミュニケーションデザイン/事業計画/エクイティストーリー/エンタープライズ営業コンテンツ/マーケティング/コンテンツなど。スタートアップCEOの壁打ち相手。慶応義塾大学卒/博報堂を経てスタートアップの若手と世代間常識を埋める現役58歳。ときどき婦人公論.jpにコラムなど。 ⇒ https://lit.link/junikematsu
1:タイムライン読者の台頭
新しい「読み手」の誕生
Z世代の半数以上が、ニュースをチェックするメディアは新聞やテレビではなくSNSになっており、もはや「読む」という行為の起点はタイムラインである。
2018年に指摘した「10行以上の文章は息が詰まる」という現象は、今や15秒以内のショート動画が主流となることで、さらに極端化した。Z世代のショート動画人気については言うまでもありませんが、ショート動画には時間が短いことの他に、縦型の画面で視聴するという特徴があります。縦型コンテンツは、YouTubeなど従来の横型コンテンツと比べて、スマートフォンを横向きに持ち替えずに視聴することができるため気楽に視聴できる状況が生まれています。
アルゴリズム依存の読書体験
最も重要な変化は、現代は「コンテンツがユーザーを発見する」時代だということ。読者はもはや能動的に情報を探すのではなく、AIアルゴリズムが提供する「おすすめ」に無意識に身を委ねています。
これは2018年に予見された「マッサージ器としての読み物」が究極進化した形と言えます。読者は、自分好みにカスタマイズされた情報の海で快適に過ごし、異質なものに遭遇する機会は劇的に減少してるのです。
2:AI時代の「書き手」爆発
生成AIによる執筆の民主化
2018年に「読者目線の書き手の大量発生」が指摘しましたが、今やAIによって執筆行為そのものが民主化されてます。民主化というよりサイボーグ化と言ったほうがいい。AIを使ってたった1時間でKindle出版を行った。対談動画や、AI執筆・出版サービス「AI BOOK」サービスのように、「書く」という行為の参入障壁は消失したと言えます。もはや執筆とは言えない状況です。
AmazonはKindle用電子書籍出版サービス「Kindleダイレクト・パブリッシング」のコンテンツガイドラインを更新し、人工知能(AI)コンテンツに関する条項を追加。出版するコンテンツ(テキスト、画像、翻訳)を生成AIベースのツールによって作成した場合は、申告することを義務付けるほど、AI生成コンテンツが一般化してます。
新しい「共感」の形
かつて「共感至上主義」と呼ばれた現象は、AIアシストによってさらに精密化されました。生成AIは膨大なデータから最も「刺さる」表現を抽出し、読者の心理を的確に捉える文章を生成する。結果として、表面的な共感は増大したが、本質的な理解や深い洞察は希薄化してます。AIの弱点は「起承転結」の「転」が超絶弱いのですが、それも日進月歩で改善されつつあります。
3:縦型思考の時代
スクロール型読書の定着
Z世代では「リアルタイム視聴」と「録画機器に録画して視聴」が全体値よりも低くなってます。その反面「Tverの見逃し配信で視聴」が3世代の中で最も高く、自分の気になる番組を好きなタイミングで視聴しているように、Z世代は自分のペースでコンテンツを消費することに慣れてます。
これは、読書においても同様で、書籍の冒頭から順序立てて読むという従来の読書法ではなく、目次やレビューから興味のある部分だけを拾い読みする「タイパ・スクロール読書」が主流となっている。味わう時間はもったいない。結果を知ってから、読む価値を決めている。
切り抜き文化の読書への浸透
YouTube・YouTubeショート・TikTokのいずれもZ世代で上位ランクインした「切り抜き系」。切り抜き動画の現象は、確実のい読書分野にも波及してます。長編小説や専門書であっても、要点をまとめた「要約版」や「解説動画」で内容を把握してから読むという読者が増加してます。
4:パーソナライズ化する読書体験
AIによる個別最適化
まるっとAIにブチ込んで翻訳するだけでなく、質問に答えてくれる電子書籍が出現するでしょう。個別で好みにテイストを合わせた文体にしてくれるとか未来はすでに現実のものとなりつつあります。
同じ本であっても、読者の理解度や興味に応じて、文体や語調を調整して、個人に最適化された読書体験を提供する技術はすでに開発されてます。これは2018年に「食感の変化」と例えられた現象の究極形と言えるでしょう。
データ駆動型の読書
従来の書店員による手書きPOPや書評に代わり、AIアルゴリズムが読者の行動データを分析して次に読むべき本を提案する。Amazonのリコメンド精度は人間の直感を遥かに超えていて、読者の潜在的な興味さえも掘りおこしています。
5:新しい「読書コミュニティ」の形成
読書体験は拡張する
読者(noteの場合は執筆者でもある)が生成AIを使って、どんどんリッチなコンテンツを簡単につくれるようになれば、UGC(ユーザー生成コンテンツ)の存在感はさらに増していく。読書は個人的な体験から共有体験へと変化している。例えば私が開催した「嫉妬祭り」では、書いたnoteにフィードバックすることで、執筆共有体験の場を提供してます。
読者は本(コンテンツ)を読みながら、SNSに感想を投稿し、他の読者とコメントを交わし合う。AIが生成した読書メモや考察を共有し、集合知を形成していく新しい読書体験が誕生しているのです。
インフルエンサーの影響力
YoutubeやInstagramの書籍紹介アカウントが書籍売上を左右する時代になっている。ショート動画の視聴時間が増えることは、確実に時短型の読書紹介動画が購買行動に直結してます。
6:出版業界シフト2.0
DXどころか、実はデジタルファーストに適応できない
2018年に「映画からテレビへ」と例えられたパラダイムシフトは、今や「テレビからYouTube」「出版からSNSプラットフォーム」へと進化している。
AIアシスト執筆の一般化
執筆にAIをアシスタントとして活用するのが当たり前となっている。プロット、キャラクター設定、文章校正、推敲まで、AIと人間の協働によって創作プロセスが進化している。もはや商業活動で、AIを抜きに働くことは、生身の人間でサイボーグ化された進化人間と、徒競走するようなものである。もはや議論の余地はない。良いか悪いかではない。AIにどう向き合うか?考えている人と、考えてない人の差が出てきている。AIは格差を広げるツールなのです。
7:新たな課題と可能性
深読みスキルの希薄化
便利になった一方で、長時間集中して深く読み込む能力は確実に低下している。低下する人と低下しない人の格差が広がっている。複雑な論理構造や微細なニュアンスを理解する読解力が「有る人」「無い人」の差は埋めようがない。さらに広がっている。超格差の時代になっている。
多様性の喪失なのか?
アルゴリズムによる最適化は、読者を快適なフィルターバブルに閉じ込めた。そのような状況に陥ってることさえも気が付かない。異なる価値観や挑戦的な内容に触れる機会が減少し、思考の多様性が失われている。かなりスマホ上の植民地の奴隷化が進んでいる。戦後のGHQが現代の日本を眺めたら「我々は完全に勝利したのかもしれない」と語るだろう。
人間性の価値の再発見
一方で、AIでは生成できない人間固有の体験や深い洞察に対する価値が相対的に高まっている。機械的に生成されたコンテンツと人間の血の通った文章を見分ける「目利き」としての読者の能力も重要になっている。すでにその傾向は顕著になっていると感じます。
まとめ:共進化する読者と書き手
2025年の読者は、2018年に予見された変化をはるかに超えて進化していました。しかし、これは単なる劣化でも進歩でもありません。新しい環境に適応した「新種」の出現と捉えるべきでしょう。
重要なのは、この変化を嘆くのではなく、新しい読者層に対してどのような価値を提供できるかを考えること。15秒で心を掴む力、アルゴリズムを突破する独創性、AIでは生成できない人間らしさ—これらが新時代の「書き手」に求められるスキルです。
そして我々は「無限の情報の海」で溺れることなく、本当に価値のあるコンテンツを見つけ出して、書くことができる「情報リテラシー」を身につける必要があります。
変化を恐れるのではなく変化と共に進化していく。それが2025年の読書文化に求められる姿勢なのかもしれません。
好きなことを書く📝
それ以上の言葉はないでしょう。
2018年のnoteへの洞察と、まだ見ぬ2030年の読者と書き手へエールとともに。
池松潤
https://lit.link/junikematsu
いいなと思ったら応援しよう!
チップありがとうございます!
よい日をお過ごしください。