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"世界一の散歩道"に24万円払ってトレッキングしてみた

登山前日のPM2:45。場所はニュージーランドのクイーンズタウン。そんな小さな街のとあるオフィスに数十名のハイカーが集まっていた。私たち夫婦もその中のふたり。20代は恐らく私たちだけで、他は私の親くらいの年代の方ばかりだった。

オフィスから見えるパラグライダー

今回"世界一美しい散歩道"と呼ばれるMilford Track(ミルフォード・トラック)のツアーに申し込んだけど、お値段なんと1人約24万円。どうりで若者が少ない訳だ。

ニュージーランドに行くならどうしても"世界一美しい散歩道"を歩いてみたくて、自分の目で肌で感じたくて、私は貯金をはたいて参加した。誤解がないように言わせてほしいんだけど、私は普段節約家で、こんなに高いツアーは初めての参加である。

そんな大金を払って山を歩くなんて変人だ、という声が聞こえてきそうだけど、そうかもしれない。変人です。

そんな変人たちが集うツアーの事前説明会が行われた。

持ち物や注意すること等の説明が終わり、レンタルのバックパックや大きめのビニール袋を受け取る(自分たちの登山用バックパックは日本にあるためレンタルした)。実は登山好きを公言している割に、1泊2日よりも長く山を歩いたことがない。内心、4日間も歩き続けられるかドキドキだった。

⚫︎ツアーについて
会社:Ultimate Hikes
値段:NZD2,750(約24万円)
日数:4泊5日(ミルフォード・サウンド含)
補足:山小屋、食事、レンタル用具料全て込み。全山小屋に水洗トイレ、温水シャワー、乾燥室付き

2025.3時点

オフィスには限定グッズがたくさん売られていて、せっかくなので"Milford Track"と書かれたTシャツを1枚購入した。既に24万円×2人分を支払った財布の紐は決して緩くない。種類違いを2枚欲しかったけど、夫と共有できるように大きめのサイズ1枚だけに留めてその日はオフィスを出た。いよいよ、24万円の山旅が始まる。


遠く離れた登山口へ向かう

空が澄んでいて、雲ひとつない晴天の朝。事前説明会に来ていた人数よりもずっと多いハイカーたちがオフィス前のバス乗り場に集結していた。トータルで45人くらいだったと思う。順番に荷物を預けて、バスに乗り込んでいく。

驚いたことに、私の祖父母くらいの年代の方も結構いた。中には日本人の方も1人参加されていて、少しお話ししてみると彼は70歳だと言う。み、見えない・・・!しゃんと背筋が伸びていて動きが軽やかで、何て元気な方なんだろう。

一方、ガイドは全員女性でぴちぴちに若い。おまけに美女揃いと来た。4日間も山籠りするんだから、てっきり渋くてベテランのお爺さまがやるものだと思っていた。なんだか色々と想像していたのと違うけど、面白くなりそうだ。そう思いながら私もバスに乗り込んだ。

途中トイレ休憩を挟みながら、Te Anau(テアナウ)に到着。すでに用意されたお昼ご飯を食べ、再出発してすぐ、船が見えてきた。

好きなだけ取り放題

船の中は意外と広くて快適に過ごすことができ、船酔いが心配だったけれど全く問題なかった。と言うのも、気を紛らわすために夫と5文字しりとりをしたり、四文字熟語どっちが多く言えるかな?ゲームをして遊んでいた。いや、アラサーが何してんねん。

フリーコーヒーとティー

しばらくすると、深い緑に包まれた山の麓にポツンと船着場が見えた。人の気配が全く感じられない。これから、この広大な自然の中に足を踏み入れる。少しずつみんなが興奮してきているのが伝わってきて、気持ちがさらに高揚する。ここからが本当の始まりだ。

入山前に、靴やストックを洗う

振り返ると、透明な湖の上に浮かぶ船と陽気な船長さんが見送ってくれていた。Milford Trackと書かれた看板の前で記念に写真撮影をした後、各々自由に出発する。

はじまりは緩やかに

ふと入り口の看板を見ると、今日泊まる山小屋までは20分となっている。え、今日歩くの20分だけ・・・?ベリーベリーイージー!

今日の山小屋まで20分

道中は70歳日本人のY男さんとお喋りをしながら、整備された平坦な道を進んでいく。なんと彼は30歳でニュージーランドに留学して以来すっかりこの国の虜になり、ほぼ毎年のようにニュージーを訪れているらしい。まさに、ニュージーランドに恋をしただ。めちゃくちゃわかる。かく言う私も飛行機から降り立った瞬間から、自然との距離が近くて何だかとてもいいなぁと感じていた。

途中、木から巨大なキノコのようなものが生えているのを発見した。「これはね、猿の腰かけって言うんだよ」Y男さんがガイドのように教えてくれる。

触ってみると、かなり固かった。ほぉ、初めて知った猿の腰かけ。確かに猿が座れそうなくらい頑丈だ。

そんなことを話していると、森が開けて小屋が見えた。どうやらもう宿に着いたらしい。山小屋で待機していたであろう若い男性が「おーい」とこちらに手を降って迎えてくれた。ここが今日のゴールだ。

エントランスにはケーキと飲み物が用意されていて、そのケーキがたまらなく美味しかった。20分しか歩いていないのに、糖分で胃が満たされていく。山小屋は新しくてとても綺麗で、目の前には川が流れている。

小屋の裏には美しい山

先ほど迎えてくれた若い男性は、明日以降一緒に山を歩くツアーガイドらしい。やはり渋いお爺さまではなかったが、今ツアー唯一の男性ガイドとなる彼はとても明るくて話しやすく、そして超絶イケメンだった。彼が部屋を案内してくれ、中に入ると二段ベットがふたつある4人部屋になっていた。

聞いてみると、今日この部屋を使うのは私たち夫婦だけらしい。相部屋だと思っていたのでラッキー。夫とそれぞれ二段ベットの下の段を陣取った。

裏山には初めてがたくさん

全員が到着した後、オプショナルツアー(無料)を開いてくれることになったので、川で泳ぎたい人、裏山へ登りに行きたい人、部屋でゆっくりくつろぎたい人に分かれる。私は裏山に登りに行くことを選択し、美人ガイドのEmmaについて行くことにした。

ざっと1時間半くらい、山を歩きながら「この植物の名前はね」「あの鳥が見える?」とたくさん自然について教えてくれた。どれもこれも、初めて見るものばかり。いや、多分知識や意識がないだけでいつも素通りしていただけかもしれないけど。

「この葉っぱ食べられるよ、食べてみて」と、その場で葉っぱを食べることも体験した。

それはピリッと辛くて、これまで体験したことのない不思議な味だった。Emmaがいなかったら知らない世界だったな。

その後、Y男さんに教えてもらった猿の腰掛けもまた見つけたり、可愛いお花が咲いていたりで、みんなで写真撮影会。

猿の腰かけ

トータル1時間半のオプショナルツアーは一瞬に過ぎ去った。

最高のご褒美をいただく

山小屋に戻って少し休憩し、夕食の時間がやってきた。ツアーの中で、とても楽しみにしていたことの一つである。どの口コミにも、ご飯がとっても美味しいと評判だったのだ。

円テーブルに座り、ツアー仲間とお喋りをしていると食事が運ばれてきた。前菜、メイン、デザート、どれも山小屋の料理とは到底思えないクオリティ。出てくるまでにかなり時間はかかっていたけど、そんなのどうでもいい。美味しいご飯をありがとうございます。

鹿肉、サーモン、ラザニアから選べるメイン

全てぺろっと胃に入れて幸せな気分でいると、明日の連絡事項や注意点の説明が始まった。とてもわかりやすく、質問にもしっかり答えてくれる。ガイドたちはみんな私と同い年くらいか年下だと思うけれど、すごくしっかりしていて頼りになりそうだ。

プロフェッショナルガイドたち

実は、夕食を食べているとき、Sophie(ソフィー)という美人ガイドに「いかちゃん、食事はどう?」と話しかけられた。これにはズッキュン、胸を射抜かれた。

とても人数が多いというのに、初日でもう私の名前を覚えてくれたの?惚れてまうやろー!!!と声を大にして叫びたい気持ちを胸に、グッと親指を押し出し「デリシャス!」と伝えるのが精一杯だった。小学生男子か。

PM9:00頃。出発してからずっとアドレナリンが出ていて高揚感が収まらず、まだ眠れそうにないので山小屋にある小さな博物館ゾーンへ足を運んだ。

小さな空間ではあるけれど、ミルフォード・トラックが出来た歴史や、ここにやってきた人たちの歴史がぎゅっと詰まっている。心なしか、この部屋だけ少し昔の匂いがした気がする(良い意味で)。

入り口にあるトラベルノートには、直筆で訪問者たちの名前や訪問日、メッセージが書かれていた。先輩方のメッセージを読むと、前向きなものばかりで頬が緩む。

私たち夫婦もそっと名前を記し、ドキドキとワクワクを乗せてメッセージを残した。次にこのノートを読む誰かに届くように。そうして、その夜は眠りについた。

残り4日間、どんな景色が待っているのだろう。すっごく楽しみだ。


25/4/4 "今日の注目記事"に選ばれました。ありがとうございます!

25/9/17 創作大賞2025 中間選考を通過しました。
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