楽な育児(7) じーじのピーマン
はじめに
私が子供の頃、親に嫌いなワカメを無理矢理食べさせられましたが、結局食べられるようにはなりませんでした。嫌いなものを無理に食べさせるとさらに嫌いになるだけで、好きになることはないようです。
子供の好き嫌いで悩んでいる親は多いのではないでしょうか。栄養バランスを気にして、無理に食べさせようとしたり、説得しようとしたり。でも、そんな努力が空回りして、親も子供も疲れ果ててしまう。そんな経験をしたことがある人も多いはずです。
しかし、ある簡単な方法で、子供が自然に食べられるようになった体験があります。その方法とは、子供をイベントに関わらせるというシンプルなものです。
ピーマンを食べられるようになったきっかけ
うちの息子は好き嫌いがほとんどありませんでした。もちろん辛いものとかはダメですけど。なぜかと考えてみると、間食をさせない、何でも食べる子だとほめる、食べられないものは気にしない、などが理由かもしれません。まあ結果論で、単なる本人の性格の問題かもしれませんが。
しかし、ある特別な体験がありました。世の中のほとんどの子が嫌いというピーマン、うちの子は大好物です。最初に食べたのは 2、3 歳のころだったかな。ちょうどその頃帰省していて、田舎の祖父が家庭菜園で作っていたピーマンを、二人で取って食べたのがたぶんそれ。
もちろん出てきた料理を前に「これがじーじと取ったピーマンだよ。」とみんなで盛り上げます。するとバクバク食べます。そして横浜に帰ってからもただのピーマンも「じーじと取ったピーマン」と呼びます。するとまたバクバク食べます。
自分が関わったものは、普段よりおいしく感じられるようです。これは大人でも子供でも同じですね。自分が作った料理は何となくおいしく感じるし、自分が選んだ服は愛着が湧く。その心理が、食べ物にも当てはまるのです。
この手法の核心
この方法の核心は、子供をイベントに関わらせることです。自分が関わったものには特別な感情が生まれるのです。
家庭菜園で野菜を取るなどの体験が、食事への関心を高めます。ただスーパーで買ってきた野菜を食べるのではなく、自分で取った野菜を食べる。この「自分で関わった」という体験が、食べ物への特別な思いを生み出すのです。
また、祖父母など他者との関わりを通じた体験も効果的です。ただのピーマンでも「じーじと取ったピーマン」と呼ぶだけで、特別なものになります。この言葉の力と体験の組み合わせが、子供の心を動かすのです。
子供の世界に歩み寄ることで、自然な形で食べ物への関心が高まります。無理に食べさせようとしなくても、子供自身が「食べたい」と思うようになる。これがこの手法のいいところです。
実践例の拡張
さて、翌年は小松菜と壬生菜を祖父と取りました。「〇〇くんが取った壬生菜だよ。」「これなーんだ?」「僕が掘って取った小松菜。」と、家族みんなで盛り上げます。そんな感じで、小松菜、壬生菜と食べました。壬生菜はちょっと子供には食べにくいかなと思ったのですが、元気よく食べております。
この体験から学んだのは、一度の体験が長く続く効果 があるということです。ピーマンの時と同じように、自分で関わった野菜には特別な思いがあるのでしょう。一度の体験が、その後の食生活に大きな影響を与えるのです。
子供が食べにくそうなものは、祖父や祖母にお願いして栽培しておいてもらうといいかもしれません。家庭菜園が難しければ、スーパーで選ぶ体験でも効果がある可能性があります。料理の過程に関わらせることも有効です。「一緒に作った料理だからおいしい」という感覚は、子供の心に強く残るものです。
重要なのは、子供が実際に関わることができる体験を用意することです。どんな小さなことでも、子供が「自分がやった」と思える体験が、食べ物への特別な思いを生み出すのですね。
なぜこの方法が効果的なのか
認知的一貫性の心理から
自分が関わったものに対して、一貫性を保とうとする心理が働きます。「自分が取った野菜だから、おいしいはず」という思い込みが、実際に食べる時にもプラスに働くのです。これは「自分が関わったものは良いものに違いない」という、人間の基本的な心理でもあります。
体験学習の効果
実際に体験することで、知識だけでなく感情も動きます。体験を通じた学習は、記憶にも残りやすい。ただ「ピーマンはおいしいよ」と言われるよりも、「自分で取ったピーマンはおいしい」という体験の方が、ずっと強く記憶に残るのです。
社会的な承認の重要性
周りの人が「すごいね」「おいしいね」と認めることで、自己肯定感が高まります。祖父母など他者との関わりが、特別な体験として記憶される。この社会的な承認が、子供の心を動かす重要な要素となるのです。
楽な育児シリーズとの関連
この方法は、楽な育児シリーズの基本思想を体現したものです。親が楽になることで、ゆとりが生まれる。ゆとりが出れば、よりよい育児ができる。
無理に食べさせようとしなくても、自然な形で食べられるようになる。これが親の負担を軽減し、結果的に子供にとっても良い環境を作ることにつながるのです。
また、この手法は他の楽な育児手法とも共通点があります。シンプルで実践的。子供の主体性を尊重し、長期的な視点を持っている。一度の体験が長く続く効果がある。これらは、楽な育児シリーズ全体を通じた重要なテーマなのです。
実践のコツ
成功のポイント
まず、子供が実際に関わることができる体験を用意することです。家庭菜園が理想的ですが、難しい場合は別の方法を考えましょう。スーパーで一緒に選ぶ、料理を手伝ってもらう、など、どんな小さなことでも構いません。
次に、ポジティブな言葉がけをすることです。「じーじと取った」「ばーばと取った」「〇〇くんが取った」「一緒に作った」など、子供が主人公になれる表現を使いましょう。周りの大人も一緒になって「すごいね」「おいしそうだね」と声をかけることで、特別感がさらに高まります。
そして、無理に食べさせようとしないことです。体験を提供し、言葉がけをする。それだけで十分です。あとは子供自身が食べるようになるのを待ちましょう。プレッシャーを与えると、せっかくの体験が逆効果になってしまうこともあります。
最後に、体験を継続的に活用することです。「じーじと取った」と呼び続けることで、特別感が維持されます。一度の体験を、言葉で何度も思い出させる。これが長期的な効果につながるのです。
注意点
家庭菜園が難しい場合は、別の方法を考える必要があります。スーパーで選ぶ体験、料理の過程に関わらせることなど、様々な方法があります。
また、一度の体験ですべてが解決するわけではありません。継続的に体験を提供し、言葉がけをすることが大切です。
そして、子供の個性によって効果は異なる可能性があることを覚えておきましょう。この方法がうまくいかない場合でも、他の方法を試してみることが大切です。
おわりに
子供をイベントに関わらせることで、好き嫌いを自然に解決する。この方法は、親が無理に食べさせようとしなくても、子供自身が食べるようになるという、楽な育児法です。
親のストレスが軽減され、子供が主体的に関わることで、自己肯定感も高まります。体験を通じた学習が、長期的な効果をもたらす。これが、この手法の価値なのです。
完璧な育児を目指すのではなく、親も子供も楽になる方法を探すことが大切です。この方法がうまくいかない場合もあるかもしれませんが、子供の個性に合わせて、様々な体験を試してみてください。みなさんの育児が少しでも楽になる方法が見つかるといいなと思います。
(つづく)

