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小説同人誌の本文フォントよもやま話


はじめに

※このnoteは同人誌、および二次創作の話題を扱います。
※R-18作品を扱います。(具体的な画像や内容はありません)
※上記が気になる方はスルーしてください。

前回の記事、「同人誌の表紙をデザインする」をたくさんの方に見ていただきありがとうございます。
表紙づくりに悩む方への手助けになれば幸いです。

というわけで、今回は本文フォントのお話です。

本文フォント。
ぱっとみてよほど特徴のあるフォントでなければ「正直読めればそれでよくね?」と思っている方も多いと思います。

ただ意外に「この内容にはこのフォント、合ってるな…」みたいなことが起きたりするのです。もちろん、逆も然り。
6冊+α作ってきた中で色々とフォントを試したので、つらつらと書いていこうと思います。

フリーフォント編

源瑛ちくご・こぶり明朝

「源暎ちくご明朝」は明治時代後期にうまれた「東京築地活版製造所による五号活字」(築五)の系譜に連なるオールドスタイルの仮名を持つ文芸・縦組み・長文向け本文明朝体です。

源瑛フォント置き場より

小説同人誌の本文フォント、といえばとりあえずこれを選んでおけば間違いない超超超ド定番なフォント。

オールドスタイル、と銘打っていますがそこまでオールドオールドしていないと思います。
読書の邪魔をしないことを目的に作られているためクセがなく、どんな文体、どんなジャンルにも基本的には合います。

というか本当にクセがなさすぎて合う合わないとかいう話ではない。(褒めてます)

この無味無臭さがこのフォントのキモかもしれません。

実際の使用例 こちらは「ちくご明朝」ちょっとカクカクしているのが特徴。

デザインに癖がない+同人誌ではよく見かけるフォントということもあって、個性を出したい場合には難しいフォント。
でも選んで変なことにはならないので、とにかくフォント選びに労力を割きたくない場合におススメです。

濁点つきのかなが全種類採用されているので、いわゆる濁点喘ぎにも対応。

しっぽり明朝

しっぽり明朝は、石井中明朝体OKLやリュウミンKO、A1明朝、筑紫Aオールド明朝等に影響を与えた、東京築地活版製造所の名作書体である五号系活字を下敷きに、物静かで上品で、見ているだけでうっとりするような明朝体を目指して制作した、オールドスタイル明朝体フリーフォントです。

しっぽり明朝公式サイトより

こちらも同人誌ではド定番のフリーフォント。
かなり線が細めなデザインで、文字を詰め込んでも紙面の圧が弱くすっきりと見えることが特徴。

絶妙なはらいの長さや、線のやさしさが相まって情緒のあるフォントです。その名前の通り「しっぽり」というのが本当に合う。

こちらも使う場所は選ばないですが、全体的な印象から比較的硬いジャンル(歴史もの、SF、ミステリー、シリアスものなど)にはちょっとアンバランスかも。

実際の使用例 「く」「と」などのしなやかな感じが印象的。

特徴的なのは!(感嘆符)が斜めになっているところです。

ただしっぽり明朝を採用していても、この斜め感嘆符が嫌という声がちらほら…。私は好きなのですが、読む側に不必要な負担を強いたくないので垂直の別バージョンのものを使用しました。

余談ですが、なぜ斜め感嘆符が好きなのかというと、縦書きに組版をしたとき「……!」のように三点リーダーと感嘆符が連続するとき、一直線に並んでいるのが絶妙に気持ち悪いというか、視認性が悪いと感じているためです。

特にしっぽり明朝は全体的に線が細いのでそれが顕著。
でもただの個人の好みなので、読む人に合わせて垂直にしてます。

こちらも濁点つきのかなが全種類採用されているので、濁点喘ぎにも対応。

有償フォント編

筑紫Aオールド明朝

美しい打ち込みや伸びやかなハネ、ハライが特徴的な、筑紫書体のオールドスタイルの明朝体です。 (中略)狭いふところのデザインにより、文字が図形的ではなく文字らしく見えてきます。

LETSの説明文より

しっぽり明朝をさらに情緒豊かに、ふところを狭くのびやかに「くねり」を加えた印象のフォント。

オールド体と銘打っているなかでも、視認性・可読性とオールドさが両立するギリギリを攻めているフォントだと思います。

特に「ハライ」が印象的で、左への払いが部首にまで食い込むほど長く伸びています。だけど組版をしてみるとあら不思議、全然ちゃんと読める。

実際の使用例 見れば一発でわかる特徴的なフォント。「砂」「動」のハライに注目。

ここまで特徴的なフォントなので、使う場所を選びます。
(このフォントでミステリーとか書かれても正直集中できないと思います。たぶん……)

ただオールド体ということで時代背景が古いもの、この情緒を活かしての成人向けなどピンポイントでバッチリハマるフォントでもあります。

個人的には今のところ一番好きなフォントです。毎回使うわけではないけど、ここぞというときに「頼むぞ!筑紫Aオールド!」という付き合い方が良い距離感なフォント。
ふところが狭いので紙面の圧を感じにくいのも大好きなポイント。

ちなみにもっとオールドな「Bオールド」さらにさらにオールドな「Cオールド」がありますが、これらは小説本文には向いていないです。オールドすぎてめっちゃ読みにくい。

秀英にじみ明朝

2009年にリリースされた「秀英明朝L」をベースに、活版印刷による紙面上でのインクのにじみを再現した書体です。線画にランダムな揺らぎや太み、丸み処理を施すことで、やわらかい印象をもったアナログ感やレトロ感を演出します。

モリサワより

「い」のかたちが特徴的な秀英明朝に、インキのにじみ要素を足した情緒のあるフォント。

にじみがあるぶん少し太って見えるので、長文向きではないです。実際使用したときも表裏2ページのペーパーに使用しました。

詩集や30P以下などの印刷物なら、組版を調整すれば十分読むのに問題ないとは思います。

実際の使用例 やはり「い」の形が特徴的。

秀英明朝自体は100年以上の歴史のある、明朝体の中でも定番中の定番なフォントです。期待を裏切らない安定感と縦組み・横組みでも綺麗に整う美しさはさすがの歴史。

全体的な幅も広すぎず・狭すぎずで読書の邪魔をしないデザインです。

ただ逆にこの整った美しさは「硬い」「重い」印象を与えがち。
なんといってもこの秀英明朝は広辞苑に採用されているフォント。そりゃあお堅い印象にもなります。

凸版文久明朝

本文用である凸版文久明朝は、縦組みの読みやすさを第一に考えて作られました。凸版文久体ファミリーの中でもっとも代表的な書体で、戦前から受け継いできた凸版明朝体をベースに、現代に合うように明るく平明に磨きあげています。

TOPPAN株式会社より

最近の個人的推しフォント。
なにより縦組みの整い方が美しい。見ていて引っ掛かるようなポイントがいっさいありません。

また歴史がありながらもスタイリッシュさを感じる細さというか、現代に即した空気を持っています。オールド体のような味の濃いものに比べると使う場所を選びません。

実際の使用例 ちくご明朝よりカクカクしていない。ちょっと柔らかい印象。

無味無臭感がありつつも、源瑛系のカクカク感がなく、秀英明朝・筑紫明朝のような硬さもない本当に中間的なフォントだと思います。

なのでもっと流行ってほしい…と思っているのですが、同人誌の本文フォントで使われているのをみたことがない。というか少なくとも周りでは使っている人がいないです。悲しい。

実は有償フォントといってもMacOSには標準搭載されているフォントでもあります。なので縦式などMacOSで作業されている方にとっては導入しやすいのです。なのに少ない。

Windowsの方は購入するか、Adobe系のソフトに加入すれば使用することができます。

余談

今後使ってみたいフォントの候補は実はだいぶ絞られていまして、いわゆる「書籍によく使われている有償の明朝体」です。

上記で書いた「秀英明朝」、筑紫Aオールド明朝のオールドじゃないほう「筑紫明朝」、商業本での圧倒的な採用実績を持つ「リュウミン」このあたりです。

あとはやはり全文字書きのあこがれ「イワタ明朝体オールド」でしょうか。導入するには購入しかないですが、やはりあこがれ。

どれも歴史あるカッチカチの明朝体にはなりますが、こういったカッチカチのフォントで同人誌を作ってもいいじゃない…という希望です。

あとはフリーフォントでも「さつき現代明朝」はかなり気になっています。
活字っぽいひらがなの作りが好きで、現在ハマっているジャンルがかなり時代背景が古いこともあって似合いそうだなと常々思っています。
ただ若干特徴的なデザインでもあるので、中文~長文小説を書きがちな私はチキってるのが正直なところ。

それ以外では「Zenオールド明朝」「夜永オールド明朝」でしょうか。オールド体が大好きなので、このあたりはめちゃくちゃ使ってみたい。

さいごに

というわけで色んなフォントを本文に使ってきたわけですが、まだまだ試したいフォントは山のようにあります。

別れの話に合うのは?
グロテスクな描写が多い話なら?
甘々ハッピーイチャコラ話なら?
時代背景が現代なら?むしろ古代なら?

考えれば考えるほど「こんなときにどんなフォントが合うのだろう」と想像が膨らみます。

私自身、執筆する内容の幅が広いのでせっかく自分で全て作るのなら細部までこだわっていきたいなと思います。

それでは、次は5月に2冊、6月に1冊新刊を刊行したので表紙のデザインなどについてお話できればと思います。

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