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同人誌の表紙デザインをする~テーマから派生するデザイン~


はじめに

※このnoteは同人誌、および二次創作の話題を扱います。
※R-18作品を扱います。(具体的な画像や内容はありません)
※上記が気になる方はスルーしてください。

前回の記事、「サークルひとり参加ノススメ」をたくさんの方に見ていただきありがとうございます。

これからサークル参加を始めてみようかな?という方たちの手助けになれば幸いです。

というわけで今回は前回の記事でも触れていた、デザインについての話を書いていこうと思います。

前提~経験値と使用ソフト~

まず私のそもそものスペックのお話です。こちらについては参考になるかどうかはわかりませんが、前提としての経験値などあるので参考程度に。

文字書き(歴10年以上。同人経験は空白期間を除いて2年ほど)
絵も描く(小学生から現在まで。基本アナログ。この経験はもしかするとデザインに対しての影響が大きいかもしれません)
デザインを専門に習った経験はなし
・使用ソフトは主にillustrator、たまにCanva
・ほどほどのスペックのBTOPCで作業

私のスペック

いわゆる絵も小説もかく両刀なのですが、正直絵についてはたまに息抜き程度の落書きしか今はしていないです。
昔はむしろ絵の方をたくさん描いていたのですが、アナログから脱却できずかといってデジタルに移行することもできず、コピー用紙に落書きを残す毎日です。

illustratorはちょうど同人誌制作のために導入しようとしていた去年、運よくセールをやっていたので1年契約しています。歴は9か月ほど。
Canvaは軽めの作業(簡単な画像編集など)をするときに使用しています。4年前に初めて個人で同人誌を制作したときから導入しています。

おおまかな作業の流れ

小説同人誌を作るときの作業の流れです。
だいたいどんな長さのお話を書くときも同じです。

  1. 話の内容を決める

  2. 内容と同時にタイトルを決める

  3. 書き始める

  4. 1/3~半分ぐらい進んで全体像が決まったあたりで表紙を作る

  5. 最後まで書く

  6. 事務ページを作る

  7. 微調整

表紙はもちろん話の内容や雰囲気を踏まえて制作するので、作り始めておおまかに内容が決まり、これ以上ブレることがないと確信した時点で作り始めます。

また私の場合タイトルは内容より先に決まるか、ほぼ同じタイミングで決定する先決めタイプです。なので表紙に着手するのも早いのですが、これに関してはタイトルは最後まで書いてから決めるタイプの人が体感多いような気がするのでちょっと特殊かもしれません。

表紙制作開始

テーマ決め

さて、本題です。
上記の通り「これ以上内容が変わらない」と思ったら、表紙制作に着手します。
ですがいきなりまっさらなアートボードの前に座ってアイデアが湧いて出てくるなんてこともないので(作る前からこんな表紙にしたいと固まっている場合もありますが)、まずはこの表紙・お話の全体のテーマは何か?というのを決めます。

まずは大枠の「重い話」か「軽い話」かを判断します。

  • 重い話=シリアス、非道徳的な内容を含む、死、別れ、題材が歴史・SF・ミステリー・純文学などの硬いジャンル、長編など

  • 軽い話=恋愛、青春、ギャグ、日常、エロ、パロディ、特殊設定(いきなりネコミミが生えたなど)、短編など

こんな感じです。
これらの判断がついたら、さらに細分化していきます。

ここで拙作、「Gimme!Gimme!Gimme!」を例に出します。

お話の前提として攻め(以下A)と受け(以下B)は部下と上司の関係。Bは妻と子供がいる妻帯者です。つまりふたりの関係は不倫関係です。
こんな関係は駄目だと思いつつもAを拒むことができないB、ということに主題を置いたお話です。

以上の内容からこれは成人指定なのでエロありですが、ふたりの関係の前提やストーリーから重い話と判断しています。

この重い話をさらに細分化し、今回は「不倫という不道徳的な関係」「別れたいのに別れられない駄目な大人」「そこから生まれる歪んだ愛」という部分に重点を置きました。

似ているデザイン探し

テーマが決まり、さらに細分化ができたら次はそれに合う雰囲気のデザインを片っ端からインプットします。

インプットする先は何でもいいです。画像検索、Twitterでの情報収集、似た内容のお話を探す、などなど。とにかく決めたテーマでどのようなモチーフ、デザインが効果的なのか、多用されているのかを収集します。

決めると楽なもの

上記のテーマにさらに踏み込んで決めると楽なものが、いわゆる「アートジャンル」というものです。
ここではつまり「和風」だとか「シック」だとか「ポップ」だとか「モダニズム」だとか、そういうものを指します。

昨今上記の既存のアートに加え、「インターネット美学」というものが勃興し賑わいを見せています。
Backroomsに見られる「リミナル・スペース」、00年代の清潔感溢れるクリアな未来「フルティガー・エアロ」、消費社会にスポットを当てた「ヴェイパーウェイヴ」などなど。

または末尾に「〇〇コア」とついているものも、インターネット美学の仲間です。
ファンシーながらちょっと不気味な「ドリームコア」、00年代のネット上のヲタク文化を懐古する「ウェブコア」などなど。

これらのテーマには必ずと言っていいほど、共通する装飾品やお決まりの表現が含まれています。(リミナルスペースにおけるショッピングモールのような)
なのでちょっと踏み込んでモチーフに使うアートジャンルを決めておくと、インプットするときに非常にはかどります。

下記のIdeoaves様のまとめている「美学ウィキ」は眺めているだけでも刺激になるのでおススメです。

制作にとりかかる

では色々集めた結果できあがった表紙を先に載せてしまいます。

イラレで制作し、初めて世に出した表紙。

まず表紙のベースとなる下地の色は黒を選びました。
黒は高級感や格式高いイメージを与えますが、同時に視覚的に重たい色でもあります。また喪服や死などマイナスなイメージも同時に持っています。

次に面積を占めているグラデーション画像は、上記の暗いイメージだけでは重たくなりすぎることを避け、敢えてオレンジなどが含まれている明るい色を使用しています。
これは全体的なイメージは重たいが、死や不幸になる展開は含まれていないため黒で重たくなりすぎたイメージを軽くする目的で入れています。

ただしこれらの画像を不規則に並べ、重ならせることで不安定な印象を狙っています。
また原作ジャンルが非常に古いので、レトロ感を持たせるためノイズ加工を施しています。

タイトル文字は視認性を上げるため白を選択。フォントは軽さを重視しゴシック体にしています。こちらも不安定さを演出するためメッシュで歪めています。

配置は人がまず一番最初に見る、と言われているZ配置に基づいて左上に。反対に成人指定表記は右下に置いています。

サブタイトルは反対にセリフ体を使って硬い印象を出していますが、色をぼやかすことで付属品程度の印象に収めています。

下準備のインプットや、テーマとするアートジャンルをしっかり先に決めておくことでデザインの制作はスムーズになります。

おそらく「表紙が全然できないよ~」と嘆いている方の多くは、この下準備が不足しているせいで進まないのではないかと個人的には考えています。
しっかり作りたいものやそのイメージがあれば、それを自分流にアレンジしながら出力するだけです。その基礎になるイメージがあやふやだと当然できあがるものもあやふやになるので、このインプットやアートジャンル決めは非常に大切だと私は考えています。

できあがったら言語化だ

世にあるデザインの心得として「なぜそのようなデザインにしたのか言語化できないといけない」というものがあります。

これについては私は大いに賛成しています。
私はどのような狙いでこの色・フォント・加工・配置にしているのかを上記で簡単に書きましたが、これができると「〇〇をしたから△△な雰囲気になった」ということを体系づけることができます。

これは今後似たようなデザインを行うときに非常に役に立ちます。

また物理的に本になったとき、意外に「思ったよりも違う仕上がりになったな」とか「不安だったけど良い感じになったな」とか「挑戦的な組み合わせにしてみたけど意外にもあってるな」とか、物理本ではないと起こりえない変化というものは必ずあります。

使っている用紙の影響や、印刷所さんによって同じデータでも違う色味・違う仕上がりになることは往々にしてあります。

これらもしっかりメモや写真として残しておくと、次に生かすことができます。

失敗談(余談)

1月に刊行した3冊の新刊ですが、物理本になったことでの失敗は山ほどあります。余談として軽く受け流すとともに、今後作る方の糧になればと思います。

1冊目『Just the Two of Us.』

こちらは表紙にシェルルックN_ツインスノー<180K>というキラキラした紙を使用したのですが、重い色をベタ面で印刷してしまったため白抜きのタイトル・枠以外はほぼキラキラが失われました。

もっと薄い色合いか、余白を大胆に残すデザインにすればよかったと後悔。

あと表紙ではないですが本文に淡クリームキンマリ<90K>を使用したのですが、100ページある本で斤量90はあきらかに硬すぎました。ギチギチのめくりにくい本になってこれは大失敗。

2冊目『熱帯夜』

こちらは表紙にサガンGA_スノーホワイト<170K>という柔らかく画用紙のような風合いのある紙を使っています。

こちらは反省点だらけでして

  • 重い色をベタ面で印刷してしまった

  • ↑のせいで、かけたマットPPが白い気泡になり、近くで見るとブツブツして見える

  • 特色ゴールドを使用しているがマットPPであまりゴールドっぽく見えない

  • マットPP+重い色ベタ面で用紙が負けて反っている(画像でも表紙の左上と下が若干反っているのが分かります)

  • 「FUNBOOK」という痛恨の綴りミス

等々…。
一番心に来たのは「FUNBOOK」の綴りミスです。
※上記でも間違いではないですが、厳密には「FANBOOK」が正しい。皆さんお間違えなきよう…。

3冊目『September』

こちらは表紙にパルルック_トワイライト<185K>という偏光ペーパーを使用しました。

偏光する紙というのを考慮せずデータを作ったので、青い印刷データが死ぬほど緑に転びました。
全体的な印象は変わらなかったのでそこまで気にしていないのですが、おしながきの書影と色が全然違うのでヒヤヒヤしました。

さいごに

表紙を作るのは楽しいです。
絵が描けなくても、インプットをしっかりこなし、頭の中でイメージを固めてから出力すれば迷うことはほとんどありません。

イラストが描いてある小説本ももちろん華やかで良さがありますが、私は是非内容を書いた執筆者の方が考える表紙、というのを大切にしたいと思っています。

それでは次回はスパコミ2日目に新刊2冊(もちろん表紙は自作です!)を持ち込む予定ですので、イベント雑記やデザインのお話ができればなと思います。

怖くないぞ!表紙デザイン!


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