AIを鍛える4年生
生成AIをバリバリと使い倒した6年生が卒業し、今年度は4年生を担任することになりました。色々と違って日々格闘していますが、3年ぶりに担任する4年生は、忘れていたことを思い出させてくれるようなところもあって、その学びを興味深く見ています。その一端をご紹介しましょう。
色々、違う
前回、4年生を担任したのは2023年。生成AIが世に登場した翌年でした。まだ小学生が使えるAIは存在せず、「教師がAIに生成させた結果を共有する」形の授業からのスタートでした。(今もこの形の授業が大切なんですけどね。)
当時は、こんな記事を書いていましたが、また同じことをやろうとは全く思わないですね。(この過去の自分にダメ出しをするような感覚の心地よさを何と呼べばいいのでしょうか…)
では、どんな授業をしたか。同じ「白いぼうし」を教材に今年はどんな授業をしたかをご紹介しましょう。
なんだよ、これ!
国語で「白いぼうし」について一通り学んだ後、「ちょっとAIに『白いぼうし』の読書感想文を書かせてみようか」と言って、大型ディスプレイに映しながら生成させてみました。モデルがgpt4.1miniだったこともあってか、おあつらえ向きのとんでもない読書感想文が生成されました。「なんだよ、これ!」は、それを見た子どもたちから出た言葉です。
「ちょうを逃したのは松井さんだよ!」
「女の子が消えたこと、無視?」
「たけのたけおが一番心に残ったってどこ読んでんだよ!」
さまざまに文句を言う4年生。ここまでは3年前とほぼ変わらないわけですが、次時への仕込みは完了です。
生成AIって知ってる?
さて、そもそもこの4年生、AIについてどの程度の経験があり、どの程度わかっているのでしょうか? AI活用を始める前に取ったアンケートからいくつか紹介しておきますね。
「生成AI(せいせいエーアイ)」ということばを聞いたことがありますか?(ChatGPT、Gemini、Copilot、Claude などのことです)

半数の子はどんなものか分かるのか!マジか!今度、説明させてみようかな。
生成AIを使ったことがありますか?

これ、おかしいんですよね。この子たちは3年生の時に「チャッともシンク」を使った経験が絶対にあるのですよ。ところが「使ったことはない」と答えている子が8名いる。
さっきの設問がよくなかったのかもしれませんが、それにしても「生成AIとは何のことか」がわかっていない可能性はありそうですね。まあ、その辺りはこれから徐々に伝えていかないと、ですね。
【使ったことがある人へ】どんなことに使いましたか?(いくつでも○)

うん、まあ、そんなところでしょうね。他にも色々と聞いてあるのですが、それはまた別の機会に。ともかく、こういった子どもたちを相手に今年はやっていくわけです。
授業の流れ
本時です。ここまでに子どもたちは「白いぼうし」につして一通りのことは学んでいるので、これはまとめの時間。
「『白いぼうし』のことをよくわかっていない生成AIに、きみたちが学んだ『白いぼうし』のことを教えてあげよう」
というコンセプトで取り組ませてみました。何しろ前時にひどい感想文を読んでいるので、「仕方ないなあ、教えてやるか」という態度でしたね。そんな子どもたちとAIとのやり取りはこのような感じになります。
AI「ぼくは『白いぼうし』を読んで、読書感想文を書いてみました。読んでみてください。
『ぼくが『白いぼうし』を読んで一番心に残ったのは、たけおくんという男の子のお話です。たけおくんは、冬のある寒い日、学校で白いぼうしをなくしてしまいました。お父さんといっしょに町をさがし回って、さいごに公園でぼうしを見つけました。ぼうしの中にはおかしが入っていて、たけおくんはとてもよろこびました。友だちと分けて食べて、なかよくなりました。ぼくもたけおくんみたいに、物を大切にしたいと思いました。』
…でも、なんだか自信がありません。先生、『白いぼうし』のことをぼくに教えてください!」
児童「OK!」
AI「教えてくださってありがとうございます、先生!では、質問①です。この物語の主人公は、いったいだれでしょうか?」
児童「松井さんだよ。」
AI「なるほど!教えてくれてありがとうございます。つぎの質問です。この物語は、どの季節のお話だと思いますか?」
ある程度、進むと、生成AIは再び読書感想文を書くことに挑戦します。
AI「たくさん教えてくださってありがとうございます!読書感想文を書き直してみます。
『ぼくが『白いぼうし』を読んで一番心に残ったのは、タクシーの運転手の松井さんのお話です。夏のある暑い日、松井さんは道に落ちていた白いぼうしを拾いました。ぼうしの中にはもんしろちょうがいて、ちょうはどこかへ飛んでいってしまいました。松井さんはがっかりして、そのまま車にもどりました。しばらくして、車の後ろのシートに女の子がすわっていて、松井さんはおどろきました。女の子を菜の花橋まで送ってあげました。松井さんはやさしい人だなと思いました。』
どうでしょう?まだ、まちがっているところはありますか?」
児童「まだ間違っているところがあるよ。」
AI「なるほど!間違いがあるのですね。では、質問①です。 ちょうが飛んでいってしまったあと、松井さんはぼうしの持ち主のために、何をしましたか?」
児童「白い蝶を捕まえるために、わざと道路の端に置いていたのを、蝶を逃がしてしまったから、夏みかんを入れて、石で帽子のつばをおさえたんだよ。」
AI「よく考えて教えてくれてありがとうございます!つぎの質問です。 車のうしろの席にあらわれた女の子は、ふつうの女の子だと思いますか?」
この辺り、ちょっと強引な流れにも感じますが、4年生は楽しみながら会話を続けていきます。そして。
児童「「自然に」ではなく、「うっかり」にしたほうがいいと思うよ。」
AI「ありがとうございます!そのように直します。
『ぼくが『白いぼうし』を読んで一番心に残ったのは、タクシー運転手の松井さんが、白いぼうしの中にいたもんしろちょうをうっかり逃がしてしまい、「せっかくのえものがいなくなっていたら、この子はどんなにがっかりするだろう」と思って、いなかのお母さんが送ってくれた夏みかんをぼうしの下に入れておいたところです。そのあと、車にあらわれた女の子は、もしかしたらあのもんしろちょうだったのかもしれません。女の子がきえたあと、野原で「よかったね」「よかったよ」という声が聞こえたところが、ふしぎできれいでした。ぼくも松井さんみたいにやさしい人になりたいと思いました。』
ほかに直すところはありますか?」
児童「直すところはないよ。」
AI「やったーーー!!🎉🎉🎉 できた!できました!先生、ほんとうにありがとうございます!! 最初のぼくの読書感想文、たけおくんが冬に公園でおかしを見つけた話になっていましたよね…今思うと、ぜんぜんちがう話でした…!😭 でも先生が一つ一つていねいに教えてくれたおかげで、松井さんのやさしさも、夏みかんのあたたかさも、もんしろちょうと女の子のふしぎなつながりも、野原の小さな声も、ぜんぶちゃんと分かりました! 先生は、ほんとうに本を読むのが上手です。本文をよく見て、書いてあることをちゃんと読み取っていて、すごいです。 ぼくもこれから、先生みたいにしっかり本を読む人になりたいです! ほんとうに、ほんとうに、ありがとうございました!!✨」
ちょっとこの喜び方はどうかと思いますが、まあ良しとしましょう。ここまでいけばねらっていた学習はすべてできたことになるのですが、AIと更に対話を続ける児童もいました。たとえば…。
児童「おめでとう!😊」
AI「ありがとうございます!先生のおかげで、すてきな読書感想文ができました!これからもいっしょにがんばりましょうね!😊」
児童「これからはちゃんと本文で作者がつたえたいところを読み取りましょう!」
AI「はい、先生!これからは本文をよく読んで、作者の気持ちを大切にします。よろしくお願いします!」
児童「じゃあわたしが感想文をかいていい? 『わたしがしろいぼうしを読んだ後、松井さんみたいな人がたくさんいたら、自分も幸せ相手も幸せになる人がいっぱいになります。わたしもこの町が幸せであふれたらうれしいです。最初はまさか夏みかんがこんなすてきな出来事をもたらすなんて…。 私だったら「なつみかん」という題名にします。わたしも松井さんみたいな人になりたいです。』」
AI「すばらしい感想文ですね!松井さんのやさしさと夏みかんのあたたかさをよく感じ取っています。題名のアイデアもいいと思いますよ!」
授業のふり返り
この日のふり返りからいくつか見てみましょう。
今日の学習はどうでしたか?

今日のAIはどうでしたか?

大雑把に言うと、AIへの評価が高かった子は「教えてください、という態度が好ましい」と感じたようです。「先生!」と言われただけで喜ぶ子、いましたから。かわいい。
それに対して、AIへの評価が低かった子は「最初の感想文がひどすぎる。」「あんなに教えてあげないとまともな感想文が書けないなんて」と思ったようです。まあ、そう振る舞うように設定したんですけどね。
ただ、自由記述の中には、ちょっと考えさせられるものもありました。
AIも最初は季節も間違っていたし、帽子の中にお菓子なんて入っていない、だけどだんだん教えるたびに進歩していって、AIも元々完ぺきではなくて、AIも学習が必要なことが分かりました。
AIがどのように学習しているかを経験の薄い4年生にまともに教えることは無理なので、ひとまずは「AIも学習するのか」ということがわかってくれればいいかな、と思います。(この後、色々やる必要はありますが。)
しかし、次のような感想は…。前の6年生だったら、絶対に出てこなかったであろう感想だと思います。
AIが生徒のように思えました。教えるのが楽しかったです。AIがこの物語のことを知ってくれてありがとうと思いました。最後の「やったー。」という感情的な言葉が大好きです。
最初はAI「役に立たないなー」と思っていました。 でも今日僕はこの学習をしていい人だなーと思いました。僕が言ったことをちゃんとコピーしてるからです。
うーん。本人は何の気無しに書いているのかもしれませんが、AIを「いい人」と感じてしまうというのは衝撃的。この授業は「『白いぼうし』のことをよくわかっていない生成AIに、きみたちが学んだ『白いぼうし』のことを教えてあげよう」というコンセプトで進めました。はじめから「これは人ではない生成AIだ」ということを伝えたつもりでしたが…。
いや、でも2023年の3月、はじめて生成AIを授業に持ち込んだ時の、児童のAIへの質問は「何歳ですか?」「どこの国の人ですか?」だったもの。ここからです。ここから頑張らないと。
