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新幹線が通過する駅で、急がずにコーヒーを飲む午後──武蔵小杉

春までは、まだ少し遠い二月。
今日は、武蔵小杉駅に来た。

武蔵小杉は、タワーマンションが多い街だ。
乱立というほどではなく、どこか一定の秩序を保ったまま、高い建物が並んでいる。
タワーマンションには、上の階と下の階で、何かが違うらしい、という話を、どこかで聞いたことがある。
本当かどうかは、よく分からない。

東急線の駅は近いが、JRのホームまでは少し歩く。
思ったより長い通路で、まだ着かないのか、と途中で一度思う。
南武線は川崎から立川へ向かい、
横須賀線や湘南新宿ラインは、それぞれ違う方向へ伸びていく。

武蔵小杉は川崎市にあるが、川崎駅のある川崎とは、少し雰囲気が違う。
東急がつくった駅前の景色は、どこか明るく、整っている。

横須賀線のホームに立つと、
すぐ横を、東海道新幹線が平行して走っているのが見える。
新横浜と小田原のあいだ。
どちらにも、少し遠い場所だ。

武蔵小杉駅


午後のホームには、ビジネスマンの姿はあまり見えない。
代わりに、少し余裕のありそうなマダムや、
子どもを連れた若いお母さんの姿が目に入る。
何か習い事に向かう途中なのかもしれない。
……ちょっと考えすぎかな。

新幹線が、右から左へ、左から右へ、
何事もなかったように通り過ぎていく。

私は、駅の売店でコーヒーを買い、ベンチに座った。
寒くもなく、風もない。
時間は、ある。

相鉄を抜けて海老名へ行く電車。
小田原へ向かう湘南新宿ライン。
久里浜行きの横須賀線。
行き先も、色も、形も、少しずつ違う電車が、次々にホームへ入ってくる。

人生も、たぶん、
こんなふうに、いろいろな方向があっていいのだと思う。

コーヒーは、半分くらいになっていた。
いつ飲んだのか、よく覚えていない。

右の方へ走っていった新幹線は、
東京で止まる。

私は、乗らない。
ただ、ベンチに座ったまま、
しばらく、通過していく音を聞いていた。


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