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遅延もたまには【『合間』連載②】

 まっさらな画面を前にすると、先刻まで思い浮かんでいた書きたいことが、途端に纏まらなくなることがよくあります。 書き出しさえ書ければすらすら進められるのにな…という感覚は、小学生の時に、最後まで溜めていた読書感想文の宿題を書いていた頃とあまり変わっていないなと、思います。 あまりにも書き出せないでいると、4分33秒とか、フェルマーの最終定理とか、タブラ・ラサとか…といった、肯定された余白たちが頭を過ぎる。しかし今回は、その余白を語ることがテーマなので、潔くキーパッドを動かすことにしました。

 この記事は、コラボアルバム『合間』の連動企画です。詳細は以下より。

Iceky / 由末イリ / manika Collaboration Album『合間』のリリースに併せて、マジカルミライ2026(以下マジミラ)の開催期間である七月末から八月末にかけて、三人でのnote連載企画を行います。内容としては、制作秘話・イベントの話であったり、「合間」にまつわる話、それぞれの普段語られない生活の合間の話などを、それぞれの気の赴くままに書き記してゆく予定。連載の内容に関するスケジュールなどは決まっていないので、とりとめのない連載になるかもしれませんが、暑い夏の合間に、一種夕涼みの日陰のような場所として、立ち寄っていただけると幸いです。

由末イリ,『合間』というCDを制作しました。【『合間』連載①】より

 この記事で私を知る人もいるかもしれないので、手短に自己紹介を。
ボカロPのIceky(あいすかい)です。 爽やかさを主軸としつつも、最近はそれが持つ不可逆性、ノスタルジーに焦点を当てた楽曲をよく書いています。
『ピクセルを越えて』『さよなら超新星』などが代表作になるかと思います。 「コード進行コンピ」の主催をしたりもしています。

 アルバム『合間』の企画趣旨などは、由末イリが既に説明してくれていたので、気になる方はそちらを。ゆったりとした生活音が聞こえてくるような、素敵な文章ですので、ぜひ。


 今回、「合間」というテーマで曲を作ることになりましたが、合間にも色々な捉え方があります。朝と夜、夏と冬、夢と現、日陰と日向……。
今年の梅雨は、どんな合間を描くのが良いだろうか…と思い悩んだ期間でした。 晴れた日は出来るだけ外に出て散歩をしたり、雨の日は、図書館で借りていた本を読んだり…。特に考える時期が長く、大変だったように思います。
 悩みに悩んだ結果、「架空と現実」それぞれを問い直すことを主題に置くことになりました。 「現実」を扱うぶん、普段書く楽曲より、私自身の考え方が表に出るような重さのある楽曲になりました。そういう意味では、過ごした思春期を赤裸々に語り尽くしていた1〜3年目の楽曲たち(1stアルバム『青態変化』期)に近い気持ちで制作に臨んだ側面もありました。 書き下ろし楽曲『月も歪』『空びらきのたより』のそれぞれ、この連載で詳しく語っていこうと思いますので、後日投稿をお楽しみに。

 「合間」をテーマとした作品を制作した訳ですから、私が最近の生活の中で感じた合間について、ひとつ語ろうかと思います。
 物事が日々せわしなく過ぎていく街に越してから、早1年が過ぎました。
私の立ち止まりたい思いはつゆ知らず、過ぎていく時間、人、電車。 立ち止まらせてくれないのは街ではなく、生きるための仕組みなのは分かっているけれど。
 休みの日は、専ら散歩に出かけている気がします。越してきてからは以前よりは海が近くなったので、気が向けば、海を見に電車に乗ったりもします。 主に、見る機会の減ったアースカラーを求めて。時に、小さな家出をしたくて。
 高層ビルの隙間、凪いだ時間に癒されながら、新曲の歌詞を練る。 曲のタイトルも決まったので、帰りの電車に乗りながら完成した歌詞を眺めていると、ちょうど頭上から、コンクリートのようなアナウンス。 「この電車は現在45分遅れで運行しています。この度は列車遅れまして...」
 電車遅延の案内放送でした。この放送を聞いた途端、少し安堵したことを覚えています。 あの電車でも、大幅に遅れることがある。もしかしたら電車も、少し気分転換に、失敗してみたかったのかもしれない。 電車も、誰かに逢いに、行先を変えてみたかったのかもしれない。もがくように生活をこなし、時に、足を出す順番を一度でも違えたら、もう帰ってこられないのではとさえ思えてしまう 時間の密度の中、無機質なものでさえ持ち得る隙、そして少しの現実から非現実を妄想できる余地に、温かみを覚えたのかもしれないなと思います。

 「合間」は、どっちつかずで、はっきりしない。分かりにくくて、扱いづらい。 境界付近というものは常々憎悪や意地、危険の波風に晒されてきたようで、今では削られてしまった場所も多いと聞きます。
 それでも、決まらない境界に救われる瞬間もあるのだと思います。私にとってのそれは、あの日遅刻した電車でした。 私が思い悩んだ「架空と現実の間」の曲たちが、誰かの合間になれたら良いと思います。

≪おまけ≫
おどりばといえば、小学生くらいの頃、実家にあった陽の当たるおどりばにわざわざ小説やゲームを持って行って、陽が落ちるまで過ごしていたことを思い出しました。暖かい場所です。

好きな合間2
敷布団とマットレスの間(ひんやりしている)


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