氷河期世代ADテレビの片隅で。#22「マジで恋する5秒前♩誕生日から始まった奇跡」
その頃の僕は、
かなり調子に乗っていたと思う。
仕事は増えていた。
レギュラー番組もあった。
ロケして、
編集して、
またロケして。
忙しかった。
でも楽しかった。
昔、テレビの前で憧れていた世界に、
やっと自分が入れた気がしていた。
VTRも、かなりウケていた。
そうなると人は正直、
調子に乗るものだ。
AD時代、僕はいわば、
修羅の国で育ったようなものだ。
周りには、
北斗の拳で言うなら
“カイオウ”みたいなディレクターがたくさんいた。
怒鳴られる。
詰められる。
殴られる。
そんな世界で長く生きてきた。
だから当時は、
「怖い=仕事ができる」
みたいな、
テレビ業界の悪い慣習に、
少しずつ染まりかけていたのだと思う。
本当なら、
自分は優しくしようと思えたらよかった。
でも僕は正直、
そこまで人間ができていなかった。
たぶん当時の僕は、
“優しいディレクター”
ではなかった。
どちらかと言うと、
DDに仕上がりかけていた。
“デンジャラス・ディレクター”
である。
嫌なヤツだった頃のベジータみたいな感じだったと思う。
そんな頃だった。
戦友のディレクターに誘われて、
合コンへ行った。
当時は、まだマッチングアプリなんてない。
出会いと言えば、合コンだった。
場所は、赤坂のしゃぶしゃぶ屋。
個室だったと思う。
男メンバーだけで先に座って待っていると、
女性たちが入ってきた。
その瞬間。
「マジか!」
と思った。
そこにいた一人の女性が、
広末涼子並みにかわいかった!
僕は、広末涼子が好きだった。
なので見た瞬間、
♪マジで恋する5秒前
だったと思う。
しかも、
話したらさらに衝撃だった。
ノリがいい。
めちゃくちゃ面白い。
明るい。
テンション高い。
内面は、ほぼ野沢直子だった。
つまり、
“広末直子”
である。
かなり強い。
他のディレクターたちも、
当然みんな広末直子を狙っていた。
そりゃそうである。
抜群にかわいいしおもしろい。
でもその後、いろいろあり
僕と付き合うことになった。
なぜ、僕だったのか…理由を聞くと、
広末直子は
「誕生日が一日違いだから」
「ほぼ同じじゃん」
と言っていた。
そう、僕と彼女は奇跡的に
誕生日が一日違いだった。
同じなら、もっと運命的だったけど
惜しくも一日違いだった。
そんな理由ある?
と思ったけど
でも人生なんて、
案外そんなものなのかもしれない。
この日に産んでくれた母に、
とっても感謝した。
今までの人生、
決してモテるタイプではなかった。
キャバ嬢とも、いい感じになりそうでならなかった。
ホスト体験では、まったく才能がなかった。
でも広末直子と付き合い始めてから、
少しだけ、
人間らしい生活に戻った気がする。
仕事だけじゃなく、
私生活も充実しだした。
たぶん僕は、
知らないうちに、
かなりギスギスした人間になっていたのだと思う。
でも広末直子、効果である。
ベジータが、
ブルマと出会って少し丸くなった感じに、
少し近かったのかもしれない。
仕事も、
プライベートも、
全部うまく回り始めていた。
レギュラー番組。
仲間。
ロケ。
恋愛。
ようやく、
人生がちゃんと前に進み始めた気がしていた。
そして、
あの日が来た。
2011年3月11日。
僕の実家は、東北だ。
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#23 「2011年3月11日」
大阪ロケ中に知った、東日本大震災。
何度電話してもつながらない家族。
一睡もできなかった、あの日のことを書きました。
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『氷河期世代AD、テレビの片隅で。全話まとめ』
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