スウェーデンウインク、毎週ショートショートnote裏お題
こちらは、下記の作品の続編になっております。
夜のない国、白夜のただなかで、湖の中に妖精がいた。湖の底には音がなく、時間もなかった。
ある日、光が射した。
金色だった。
妖精は、その金色に近づいた。そこにいたのは金色の子供。湖面に映る己の影へ、声にもならぬ嘆きを吐いた。
ゴールデンユニークと呼ばれ、世界を救う人間として崇められていたが、その名にふさわしいものなど、何ひとつ彼の中には見つからなかった。
妖精は恋をした。
言葉を持たなかったから、ただひとつの手段で気持ちを伝えようとした。
ウインク。
金色の子は、それに気づき、わずかに笑った。
それは、物心ついて初めて浮かべた、ほんとうの笑みだった。
そして、足繁く湖に通うようになった。
ある日、妖精は肌で感じた。
火山が噴き上がったことを。
金色の子が、壊れていったことを。
たくさんの人間たちの記憶が書き換えられ、塗り替えられ、悲鳴が賛歌に変わったことを。
金色の子が、湖のほとりに立った。
妖精が喜び、ウインクをしたその瞬間、冷たい声がした。——妖精なんて、最初から存在しなかった。
妖精は、ゆっくりともう片方の目も閉じた。
両目を閉じた妖精が、湖の底深くに眠るように沈んでいった。
けれど、ときどき。
風が止まり、太陽が低く傾く白夜の夕方。
湖面がわずかに揺れることがある。
光の瞬きが、まばたきに似ていた。
それを見た誰かが、ふと、こう呟いた。
「あれは湖のウインクだ」と。
そして、誰ともなく囁く。
——あれが、スウェーデンウインク。
(601字)
