雪の降る街で 第八章 「萌芽」 ①(Special Thanks clutch0105様/アホウドリの空MV第二弾完成しました!)
ふふふふふ。本編に入る前に、ついに完成しましたよ! clutch0105様によるアホウドリの空MV第二弾!(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾
今回、私の方で追加生成した画像はエイミーとの対峙や下関ラブラブ、結婚式などに加えて、F35Bの飛行シーン。
それらをクラちゃんが巧みな技術で動画に興して、溢れる才能で見事なMVに再構成・バージョンアップしてくれました!(๑˃̵ᴗ˂̵)
ああもう凄すぎるぅ〜!。゚(゚´Д`゚)゚。
クラちゃん、大好きです💞 本当にありがとうございました!😭😭😭
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改めてクラちゃん、本当にありがとうございました😊 これからもよろしくお願い致します🙇♀️
それではこれより本編開始です。
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※この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件・出来事とは一切関係ございません。
※若干、三島由紀夫著「潮騒」のネタバレ的な感想箇所がございますので、これから同著を読もうとされている方はお気をつけくださいm(_ _)m
第八章 「萌芽」 ①
「三等陸尉・橋本藍、貴殿を第一師団第一戦車大隊第一中隊第一小隊長に異任させる」
女性としては珍しい機甲科への異動。しかも小隊長なので戦車乗務ということだ。
こんな異動はこれまで聞いたことが無い。いや、僻地への異動はもとより覚悟していた。
だが、まさか最前線部隊とは。
防大を首席で卒業して以来、公には市ヶ谷・陸上幕僚監部でのデスクワークが中心だった女の子が、身ひとつで荒ぶる男たちの中に放り込まれる。
これはあたしを辞めさせたいってことね。
最初に思ったことはそれだった。
演習になれば風呂に入ることも着替えることもできず、狭い車内で過ごさねばならない過酷な職種。女性としてプライバシーを確保しづらいことが、これまで配属が制限されてきた理由だ。
「米軍でも最前線への女性兵士配置の制限緩和が進んでいる。今回の辞令は全国の女性自衛官達にとっての礎であり希望だ。しっかりと頑張ってもらいたい」
取って付けたような上官の訓示に、藍は通り一遍の謝辞を述べると、その場を後にした。
職場に戻ると、藍を認めた同僚達が慌てて視線を逸らし、机に向き直る。
大方、自分の陰口でも叩いていたのだろう。
「あたし、駒門の戦車隊に異動になっちゃいました」
開き直って笑いながら報告するも、誰も反応しない。
唇を噛み締める。
謹慎明けのここ数日間で、この状況にはもう慣れっこだ。
座る者のいない課長席に目を遣る。聞けば十条駐屯地の閑職に追いやられたらしい。
全ては自分のせいだ。迂闊な自分の……。
彼と出会ったのは、幹部候補生学校での教育期間を経て市ヶ谷に配属された初日のこと。
この人が何で? それが第一印象だった。
配属先は陸上幕僚監部防衛課。DIHの身分は秘匿。ただ、彼の怪しい行動をつぶさに観察して報告せよとの指示。
早くから素質を見抜かれ、防大の頃から情報部員としての訓練も受けていたので、配属先の上官が監視対象と言われても慌てることもなかった。
普通に新人隊員として振舞い、普通に防衛課員として業務をこなす。報告も、公にDIHに所属している仲の良い女性の先輩と、毎日昼食を共にしていれば怪しまれることはない。
それよりも、この任務自体が藍には理解出来なかった。
エリート街道を歩んできた仲木戸は予想に反し、とてもフランクな男。
藍のことも何かと気に掛けてくれ、時に厳しいことも言われるが、育てられている実感が湧く。
飲み会では指揮官先頭で率先して騒ぎ、休憩時間には家庭の話で子煩悩な一面も垣間見え、とても人間味の溢れる人物。エリートにありがちな冷徹さは微塵も感じられなかった。
一年も経てば監視対象者であることを忘れそうになるくらい、藍は彼に傾倒していた。
「何を読んでいるんだい?」
それはある日の昼休み、自席でサンドイッチを片手に本を読んでいる時だった。
「え? ああ、潮騒です。三島由紀夫の」
藍はブックカバーを外すと、表紙を示してみせた。
「ほう。今時珍しいね。三島を読むなんて。しかも潮騒は彼の作品の中では異質な類だ」
藍は軽く微笑むと、本に視線を落とす。
「好きなんです、このお話。主役の二人がとても瑞々しくてキラキラしていて。何度も読み直しているんです」
それは偽らざる本心。三島自体は彼のことをマークし始めてから読み始めたのだが。
「だが、結局二人は分かり合えない」
「それでいいんですよ、女は。課長は知らない方が幸せなことってありません?」
「どうかな」
「彼女はきっと航海から還ってきた彼の変化を分かっているんです。でも敢えてそれを言う必要などない。ただ彼の傍に居られればそれでいい。自分の存在が彼の中にさえあれば」
「面白い解釈だな」
藍の講釈に仲木戸は立て肘をつきながら柔らかい笑みを浮かべる。
「男の人は女を馬鹿にし過ぎですよ。女は全て分かっていますから」
「そんなものか」
「そんなものです」
藍がしたり顔で頷くと、仲木戸は苦笑して背もたれに身体を沈めた。
「男は夢に生き、女は現実に生きる、ってやつだな」
「夢に生きる女もいますよ? ここに」
「はは。頭のいい娘だな、君は」
「……そういう女はお嫌いですか?」
「いや……馬鹿な女は疲れる」
絡み合う男と女の視線。と、仲木戸の机の電話が鳴った。
「はい、仲木戸です。………分かりました。今から行きます」
彼は受話器を置くと、ふうっと深い溜息をついた。
「陸幕長殿からの呼び出しだ」
呆れたような笑みを浮かべると、モバイルを携えて席を立つ。
「読書の邪魔をしてすまなかった」
彼は通り過ぎざま、労うように藍の肩をポンと叩いて部屋を出て行った。
その彼の消えたドアを見つめる。
彼の素性は知っている。だから敢えて釣り餌に引っ掛けただけだ。
なのに……肩に彼の手が触れただけで、何でこんなに胸が高鳴るのだろう?
彼が触れた肩をそっと上から撫でると、余韻を惜しむように藍は目を瞑った。
〝藍……〟
賢治……さん?
「藍さん!」
はっと我に返り、慌てて肩から手を離す。
「ああコウ君、ごめんね。考え事してた」
「大丈夫ですか? あまり寝てらっしゃらないようなので」
「うん、大丈夫よ。どうしたの?」
「司令部から呼び出しです」
「あ、うん、分かった。すぐ行くわ」
「パジェロ回します。運転しますんで」
「ありがとう」
馬鹿ね、もう終わったことなのに。
真っ白な息。小雪のぱらつく小千谷市内。
日本有数の豪雪地帯だが、今年は例年に比べ積雪量は少ないらしい。やがて、光一の運転する新七三式小型トラックが横付けされると、藍は助手席に乗り込んだ。
「そろそろ……始まるんでしょうか?」
ゆっくりとパジェロを発進させながら光一が藍を窺う。
「分からないわ。ただ、長引くとまずいのは確かよ」
「何故ですか?」
「自国民保護を名目とした諸外国の介入や、国内外の経済活動の停滞。日本は破綻するわ」
「自分には……理解できません。あの仲木戸って人は国の将来を想い、起ったと言っていました。でも、仲間を……傷つけてまで得られる未来って何なんでしょうか?」
「……そうね。あたしもそう思うわ」
呟くように同意すると窓の外に目をやる。
思い浮かべるのは「潮騒」のラストの美文。
あたしは、初江ちゃんとは違う。あたしだって眉を聳やかすのよ。
雪国の空は、ラッパを携えた天使の降臨を憂えるかのような陰鬱さを湛えていた。
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雪の降る街で 第一章 「鼓動」 ①|京
あとがき
三島作品と言えば病的な内面を抱えた登場人物たちが苦悩するような描写が多いのですが、ここに出てくる「潮騒」はひたすらにピュアな純愛物語ですよね。
「憂国」をバイブルとする仲木戸と、「潮騒」が好きな藍。
初江ちゃんは本当は全て解っている、と仲木戸に講釈していたあの頃の藍と、あたしは初江ちゃんとは違うと心の中で仲木戸に呟いて見せた今の藍。
皆さんはどう感じられましたか?
さて、次回は10月19日(日)に掲載予定です。
藍がいよいよ、粟谷によって、対策本部のあのお偉方の前に引きずり出されます💦 果たして、どうなってしまうのでしょうか?
引き続きお付き合いいただけますとありがたいです。
