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黒字なのに、なぜ資金が足りなくなるのか|反・精神論 #18

決算は黒字。なのに、月末になると資金が足りない。
その正体は、利益とお金が別物だからです。

はじめに、見落とされがちな話をひとつ。
利益が出ているのに、会社が潰れることがあります。
黒字倒産です。決算書では黒字なのに、
手元の現金が尽きて、支払いができなくなる。
製造業では、決して珍しい話ではありません。

なぜ、利益とお金がずれるのか。
理由は、利益が「発生」で計算され、
お金が「移動」で動くからです。
製品を売れば、その瞬間に売上が立ち、
利益が計算されます。けれど、その代金が
実際に振り込まれるのは、何か月も先かもしれない。

一方で、材料の仕入れ代金や外注費は、
先に払わなければならない。
出ていくお金が先、入ってくるお金が後。
この時間差が、黒字でも資金を枯らす正体です。

特に製造業は、この時間差が大きくなりがちです。
材料を仕入れ、加工し、在庫として持ち、
納品し、検収を待ち、ようやく入金される。

その間ずっと、お金は製品の中に
閉じ込められたままです。
受注が増えて忙しいほど、
先に出ていくお金が膨らみ、かえって資金繰りが苦しくなる。
「忙しいのに金がない」というのは、これが起きています。

◤ 「黒字なのに、なぜ苦しいんだ」と社長が漏らした日

ある会社で、決算は黒字なのに、毎月の資金繰りに
追われている社長がいました。
「儲かっているはずなのに、なぜこんなに苦しいんだ」と。
私は、利益の話をいったん脇に置いて、
お金が出ていくタイミングと、入ってくるタイミングを、
一本の時間軸の上に並べてみせました。

並べてみると、答えははっきりしていました。
材料費の支払いから、製品代金の入金まで、
平均して三か月以上の開きがあったのです。
その三か月分の運転資金を、ずっと会社が立て替え続けていた。
受注が増えるたびに、この立て替えが膨らむ。
だから、売れば売るほど苦しくなっていたのです。

社長が見ていたのは、利益という「結果の数字」だけでした。
お金が動く「時間の流れ」は、見えていなかった。
並べて初めて、苦しさの正体が腑に落ちたのです。

「資金繰りは経理に任せている」という
経営者は多いものです。けれど、お金が入る前に
出ていく構造を理解するのは、経営者自身の仕事です。

これは経理処理の話ではなく、事業をどう設計するかと
いう経営判断だからです。

現金(キャッシュ)と利益は全く異なります。
ここを間違えると 黒字倒産に突き進みます。経理担当にすべてを任せるとだめです。

打ち手はあります。
入金のサイクルを早められないか、
支払いのサイクルを延ばせないか、
在庫を持つ期間を短くできないか。
一つずつ、時間差を縮めていく。

利益を増やす前に、お金が回る構造を整える。
これが、黒字倒産を避ける設計です。
さらに踏み込むなら、受注の段階で
「この案件は、入金までにいくら立て替えるか」
を見るくせをつける。大きな受注ほど、立て替えも大きい。

喜んで受けた大口注文が、資金繰りを
締め上げることもあるのです。売上の大きさだけでなく、
お金が戻るまでの時間まで見て、
初めて受注の良し悪しが分かります。

正直に言えば、私自身、大きな企業にいたときは
「利益が出ていれば大丈夫」と思っていました。
利益とお金は同じものだと、
どこかで信じていたのです。
要するに「大企業の潤沢なキャッシュフローの中にいて、
その怖さに気づけなかった」ということです。

けれど、現場で資金繰りに向き合ううちに、
痛感しました。
利益は意見、お金は事実」だと。

帳簿上の利益がどれだけ立派でも、
手元のお金が尽きれば、会社は止まります。
だからまず、お金の流れを時間軸で見る。利益の話は、その次です。

✓ 今日できる一歩
・主要な取引で「材料費の支払日」と「製品代金の入金日」
の差が何日あるか調べる。
・受注が倍になったとき、立て替える運転資金が
いくら増えるか試算してみる。

第17話 https://note.com/human_crab7218/n/n1e55969b704f    
第19話 https://note.com/human_crab7218/n/n3d75be6208d3

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