短編小説w「アリス」 (第二回すべて失われる者たち文芸賞応募 )
1月20日
今日は私の誕生日だ。
何才になるかというと14才だ。
私は日記をつけている。
だいたいは今日あったことを書いている。
学校であったこと、家であったこと、など。
また、思ったことも書いている。
これは、思ったことを書いているということだ。
今日だけじゃなくて昨日やもっと前に思ったことも書いたりするので、いつ思ったかは今日とはかぎらない。
私は文学少女というわけではないが、本を読むのはわりと好きだ。だから日記を書くのも好きだと思う。今どき、ノートに日記を書くというのは古くさい感じがするが、書くことでページが埋まり、1冊書き終わるととても充実した気分になる。
楽しいのは、時々読み返したりして、書いた時のことを思い出す時だ。
例えば、去年の夏ごろの日記では、友達の日奈多と花火大会にいったときのことが書いてある。これを読むと、そのときのことを思い出す。
ちなみに日奈多はひなたと読む。
日奈多は私の友達だ。
日奈多とは同じ小学校で6年生のときに同じクラスで仲よくなった。日奈多とは家もわりと近くだったがいっしょに遊んだことはなかった。日奈多とは運よく同じ中学にいって同じクラスになった。日奈多とはよかったねと喜びあったものだ。
そして、去年の夏に日奈多と2人で花火大会にいった。
夕日橋の河原の花火大会は毎年いっているが、日奈多とは初めていった。花火大会の花火はきれいだったが、見たことがない他の学校の中学生たちが大声でウオーと言っていたので、日奈多が「バカみたい」と言ったので私も「ほんとそう」と言った。
日記には、花火のことよりも他学校の中学生がうるさいということがたくさん書いてあっておもしろい。私はその中学生たちのウオーという声をよく思い出したものだ。
私がなぜ日記を書きだしたかというと、それはアンネの日記という本を読んだからだ。アンネはかわいそうだったけど、本はおもしろかった。アンネが書いた日記は、後に本になった。
私は、もしかしたら私も日記を書けばそれがいつか本になるかもしれないと思って日記を書き始めた。それは中1の時だ。
そのときはただのノートに書いていたので、そのノートはけっこう増えた。書いてみると、意外にも書けるので自分でも驚いた。ノートはどんどん増えて10冊くらいになった。
私は、お母さんに日記を書いていると言った。お母さんは、あらいいわね、と言ったが、そのとき目が光った。中学生になってから、お母さんは私の部屋に勝手に入ってくることはあまりなかったから油断していた。お母さんは私の日記を読んだのだ。
でも、私は怒ってはいない。なぜなら誕生日に日記帳をプレゼントしてくれたからだ。
ノートに書いていた日記に、私は「ちゃんとした日記帳がほしい」と何度も書いていた。それをお母さんが私がいないときにこっそり読んで、お父さんに言って日記帳を買ったのだろう。
私はうれしかったので、日記をこっそり読んだことを許そうと思った。
日記帳はしっかりしたかたい茶色の表紙でとてもおしゃれだ。ちょうどこういうのがほしかったのでうれしい、
私はさっそく、アンネの日記をマネして日記帳に名前をつけた。いろいろ迷ったが名前はアリスにした。名前はルイスキャロルの「不思議の国のアリス」からとって決めた。
そういうわけで、うれしくて5ページも書いてしまった。
アリス、これからよろしく!
Dear Alice my diary
※
1月23日
あの子の誕生日に日記帳をプレゼントしてよかった。
あの子の笑顔がうれしかった。
今日、昼間あの子が学校に行ってる間に、ダメだと思いつつどうしても我慢できなくて、プレゼントした日記帳を開いてみた。
あの子は机の鍵付きの引き出しに日記帳を入れてたが、肝心の鍵は掛けてなかった。こういうところ、あの子は詰めが甘いんだよな。
読んでみて「かわいいなあ、、」と思わず独り言を言ってしまった。同時に、やっぱりバレてたか、とも思った。
あの子は、自分から日記を書いていると言ってきたから、誕生日に日記帳をプレゼントするのは不自然ではないと思っていたけど、やっぱり感づいてたか。
夫はマフラーがいいんじゃないかとかアクセサリーが、、とか言ってたが、あんなに喜んでもらえたなら日記帳にして正解だった。欲しがってたしね。
思い出してみると、私も日記を書き始めたのは中学生の時からだから血は争えないな、と思う。今では10年日記と、メインのこの日記の2冊を同時に書いている。知っての通り、飛び飛びだけどね。
でも、一番驚いたのは、、、たぶん、あなたもそうだと思うけど、あの子が日記帳に名前を付けていたこと。
驚いたよね、私も。
これから親子共々よろしくお願いします、アリス (笑)
(おわり)
「1922文字」
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