【連載小説】w 「あたしの道草」④
(四)
あたしがそんなことを考えながら、目の前のおじさんの鼻をまだコッソリ見ていたら、持ってたバッグの中でブブーってスマートフォンのバイブが鳴った。
スマホをバッグから取り出してみてみると、SNSの通知が来ていた。
「リエちゃん!」
と、あたしはSNSのアプリを開いてメッセージを見て呟いた。
”サカガミさんに、スズキさんから連絡があって、急な仕事で行けなくなったらしくて、マリに謝っておいてほしいって”
あたしは、リエちゃんが紹介してくれた、その”スズキ”さんに今日会うことになってた。
待ち合わせは午後2時だったんだけど、まだ昼の12時だから早過ぎるんだけどね。
”サカガミさん”っていうのはリエちゃんの彼氏のサカガミさんのこと。
いきなり連絡先を教えあうよりは、とりあえず間にサカガミさんが入ってくれてて、そのほうがミナシロも安心だろって話になったみたい。
あたしはどっちでもよかったんだけど、確かに会ったこともない人にケータイの番号とかSNSを教えるのはリスクがあるよね。スズキさんは、そんなにおかしな人ではないって話だけど、一応ね。
”わかりました”
あたしはリエちゃんにメッセージを返した。
スズキさんは、今日、日曜日が仕事が休みって話だったんだけど、まあ働いてればそんなこともあるよね。
スズキさんに会うのは、ちょっと楽しみにしてたから残念だけど、まあ仕方ないよね。
でも、今日あたしはずっと家にいて、退屈だったから、早めに家を出たんだけど、これからどうしよう。
引き返して家の近くにあるスポーツジムに行こうか、とも思ったんだけど、もう待ち合わせのお店がある都心のターミナル駅に着きそうだったから、引き返すのもなんかもったいないよね。
あたしは、誰かと待ち合わせするときはいつも早めに向かうようにしてる。
理由は単純で、あたしが時間まで待てないから。
あと、あたしは方向音痴だから、待ち合わせのお店を探すのに時間がかかるだろうって”読み”でいつも早く向かうようにしてる。
でも、大抵は早く着きすぎて時間を持て余しちゃうんだよね。
今日は、予定自体がキャンセルだから、そういうのとは違うけど、時間ができたことには変わりないね。
とりあえず、あたしは駅前をブラブラすることにした。まあ、もともと早く着いたら駅前をブラブラするつもりだったしね。
なんたって、待ち合わせの二時間前に着いちゃってるからね。
※
駅は終点だから、ドアが開くと電車に乗っている人はすごい勢いで降りていってる。
あたしの前に座ってた、鼻が光ってるおじさんも駅に着く頃には、どこかシャキッとした顔になって、鼻も光が増したみたい。
そこで初めてあたしは、そのおじさんがネクタイはしているものの、薄いグレーの作業着みたいな服を着ていることに気が付いた。
もしかしたら、建築関係の人なのかな、とあたしは思って、スズキさんももしかしたらこんな感じの人なのかも、と想像していた。
そのおじさんが立ち上がって、そそくさと電車の出口から出ていった後、あたしも降りていく人に続いて電車を降りて、ホームに立った。
今日は日曜日だからか、少しだけいつもより人が少ないみたい。お昼ということもあるのかもしれないけど、なんだか少しだけのんびりした雰囲気を、あたしは感じた。
平日の朝なんか、人だらけで凄いことになってるからね。
あたしは、まばらな人の流れになんとなく乗りながら、ホームから階段を降りて改札に向かった。
少ないとはいってもターミナル駅だから、やっぱり人が多い。でも、いつもとは顔ぶれが違うよね。
いつもは、あたしも行き先が決まっているから、あまり意識することはないけど、こうしてみると、みんなどこに行くんだろうね。
それぞれの人がそれぞれの目的地を目指して歩いているのがなんか不思議。
「あたしの道草」⑤に続く
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