【人生編第9話】モフモフに恋をした日❤️
夫が退院し、家の中に
少しずつ日常が戻り始めた頃だった。
まだ不安はあった。
それでも家族で食卓を囲む時間が
戻り、子どもたちの笑い声が、
ようやく以前のように響き始めていた。
そんなある日——
私は突然、
犬が欲しくてたまらなくなった。
子どもたちはずっと前から
「ペットを飼いたい」と言っていた。
でも私は、
仕事と家事と子育てで手一杯で、
ずっと首を振ってきた。
けれど、夫の病気が分かった頃。
ずっと相談に乗ってくれていた
友人の犬が、
あまりにも可愛かった。
その小さな命は、
ただそこにいるだけで空気を
柔らかくしていた。
彼女が私の膝に乗ってきた時、
私は強烈に思った。
「あぁ…私も、犬が欲しい」
それから何日も、
私は犬が欲しいと呟いていた。
私のお金で面倒を見ること
を条件に、夫は静かに頷いてくれた。
2025年3月。お彼岸の頃。
私たちは家族でペットショップを
回った。
一軒目。二軒目。
でも、ときめきはなかった。
三軒目に入った時——
出会ってしまった。
チワワなのに、
どこかチワワらしくない顔つき。
チョコタンの毛色。
まだ2か月なのに、やけに大きな足。
抱っこした瞬間、
胸の奥をぎゅっと掴まれた。
もうダメだった。
家族全員、一目惚れだった。
「一旦考えます」
そう言って店を出たのに、
帰宅後の家族会議は、
もはや会議ではなかった。
子どもたちは
「絶対に世話する!」と言った。
子供の常套句。
それでも、もう決まっていた。
翌日契約し、
お彼岸の最後の日に迎えに行った。
ロッキーと名づけたその子は、
来た日から勝気で、少し俺様だった。
でも甘えてくる姿が可愛くて、
私たちはすぐにメロメロになった。
11年間
ずっと家族の末っ子だった息子は、
最初は少しだけやきもちを
焼いていた。
けれど今では、すっかり仲良しだ。
ロッキーが来てから、
家の中が明るくなった。
どんなに疲れていても。
悲しいことがあっても。
あのモフモフに触れるだけで、
不思議と全部が軽くなった。
⸻
ロッキーが家に来てから、
私たちの暮らしは少しずつ
整っていった。
その裏で、夫の通院が始まり、
義母の体調もゆっくり弱っていった。
けれどその頃の私たちは、
まだ知らなかった。
これから先、
また別の喪失が待っていることを。
この頃の私たちは、
ロッキーの小さな足音に
救われていた。
家の中に、
もう一度光が差し込んだ。
そんな季節だった。
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