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優秀な人材を採ったはずなのに、現場が壊れた…ミスマッチ採用で起きた悲劇と“丸投げ”の罪

「あんなに優秀な人を採用できたのに、なぜうちのチームはガタガタになってしまったんだ……」

大手企業での華々しい実績、洗練されたプレゼンスキル、面接で見せた鋭い課題分析。誰もが「この人が入れば、我が社の遅れていた組織が一気に生まれ変わる」「喉から手が出るほど欲しい人材だ」と確信し、破格の条件で迎え入れたはずでした。

しかし、入社からわずか半年後。そこに広がっていたのは、改革された強固な組織ではなく、疲弊しきった既存社員の離職、そして「この会社の低いレベルにはついていけない!」と去っていった、その優秀社員の姿でした。

なぜ、優秀な人材を入れたはずなのに、組織は良くなるどころか崩壊してしまったのでしょうか?

↓同じ内容でAIによるポッドキャストもありますので、耳で聴きたい方はよろしければどうぞ!(多少、言い回しがおかしなところがありますが、ご了承を💦)


キラキラした「トッププレイヤー」がやってきた日

物語の始まりは、誰もが胸を躍らせる最高のスタートでした。

中途採用されたAさんは、誰もが知る企業でトッププレイヤーとして活躍してきた人物。「まさにうちが求めていた変革者だ」と経営陣も満場一致で採用を決めました。全社朝礼で挨拶するAさんの姿は頼もしく、現場の社員たちも期待の眼差しを向けていました。

しかし、サッカーで例えるなら、これは「J1リーグでバリバリ活躍していたトップ選手を、地域の社会人サッカークラブに引っ張ってきた」状態です。

経営者は「J1の凄技をチームに注入してくれ!」と期待していました。しかし、グラウンドに立ったAさんと既存メンバーの間には、決定的な「前提の乖離」が存在していたのです。

「なんで、こんなこともできないの?」が現場を刺す。その裏にある“焦り”

異変は、すぐに入社1ヶ月目から起き始めました。

Aさんにとって、前職の環境──潤沢な予算、高度なリテラシーを持った同僚たちの中で培われた「仕事のやり方」は、息を吸うのと同じくらい「当たり前」の基準です。

  • 「なぜ、このデータを出すのに半日もかかっているの?」

  • 「こんな基本的な顧客分析もせずに提案に行っているの?」

  • 「前の会社では、こんなの新人でも1時間で終わらせていたよ」

Aさんに悪気はありません。純粋に「チームのレベルを引き上げたい」という善意から出た言葉だったかもしれません。

限られたリソースと泥臭い運用で必死に事業を回してきた既存メンバーにとって、Aさんの言葉はアドバイスではなく「自分たちのこれまでの努力の全否定」として突き刺さります。J1のスピード感で出されたパスに、地域リーグの選手たちは追いつけません。追いつけないどころか、どこに走ればいいのかすら分からない。「この局面で、なんでこの場所に走ってないんだよ」と優秀なプレイヤーは不満を募らせることになります。

「こんなことさえ、できないのか」という無意識の軽蔑の視線の中で、現場の空気は加速度的に冷え込んでいきました。

しかし、ここで知っておいていただきたいのは、中途で入社した優秀人材のAさんには、決して悪気はないということです。

彼ら彼女らも、新しい会社に大きな希望を持って入社してきます。一時的にでも前職以上の高い給与で迎え入れられ、経営者からは「君に期待している。うちの組織を変えてくれ」と強いプレッシャーをかけられています。

「早く成果を出さなければ…」「経営者の期待に応えなければ…」という強烈な焦り。

その真面目さゆえの焦りが、現場の現状やペースを無視した「正論の押し付け」となり、結果的に既存社員を追い詰める刃となってしまっていることも多いのです。

魔法の杖は折れ、組織には誰もいなくなった

悲劇が決定打となったのは、入社半年のことでした。

長年泥臭く現場を支え、顧客からの信頼も厚かった生え抜きのエース社員が「辞めさせていただきます。私たちが積み上げてきたものを、すべて『レベルが低い』と片付けられるのには耐えられません」と会社を去りました。これを皮切りに、社員が次々と「サイレント離職」をしていきます。

焦った経営陣がAさんに面談を行うと、Aさんからも信じられない言葉が返ってきました。

「この会社は思った以上にレベルが低すぎます。指示したこともまともにできないし、変革意識もない。私のような人間がここにいるのはキャリアの無駄です」

結局、Aさんもその後すぐに退職。残されたのは、実績を出し続けていた既存のエース社員たちを失い、残ったメンバーも自信を打ち砕かれて意気消沈した、荒れ果てた現場だけでした。

「優秀な人材」という魔法の杖に飛びついた結果、会社が得たものは成果ではなく、取り返しのつかない組織の崩壊でした。

なぜ「プレイヤーの優秀さ」は組織を破壊する毒になり得るのか

なぜ、このような惨劇が起きてしまったのでしょうか。

まず前提として、「プレイヤーとして優秀であること」と「その組織の環境に適応し、周りを生かすこと」は、全く別のOS(能力)であるという事実を見落としていたからです。

この構造は、優れたプレイヤーが初めてマネジメントに就いた時に陥るトラップと非常によく似ています。

自分が最初からできてしまった「無意識の有能」であるプレイヤーは、「なぜ相手ができないのか」「どこで詰まっているのか」の構造が理解できません。そのため、相手のレベルに合わせた「階段の設計」ができず、ただ「正論」という鈍器で現場を殴りつけてしまうのです。

特に、以下のようなギャップがある場合、優秀すぎる人材は組織を破壊する毒へと変貌します。

【大手と中小でよくある、組織ギャップの構造】
・相手の前提(リテラシー):高度な環境 ✕ 泥臭い環境
・仕事の基準(当たり前):完璧なデータ分析 ✕ スピードと関係性重視
・関わり方のスタンス:正論での指導 ✕ 寄り添いとステップ設計

どれだけ個人の能力が高くても、自社の「今の靴のサイズ」に合わない巨大な足を無理やり押し込めば、靴(組織)そのものが破けてしまうのは当然のことです。

本当の戦犯は誰か?──「あなたに任せた」という経営者の丸投げ

採用時の見極めが甘かったのでしょうか?現場のレベルが低すぎたのでしょうか?Aさんの人間性に問題があったのでしょうか?

もちろんそれらも要因の一つかもしれません。ですが、最大の原因は、実はそこではありません。「優秀な人材を採用したから、あとはやってくれるだろう」と、変革を他人事にして丸投げした『経営者のスタンス』にあります。

これは私自身の過去の失敗体験でもあります。かつて私も、ある中小企業の経営者に請われて、組織変革を任された時のこと。現場の無関心の克服や反発に遭いながらも必死にもがいていました。経営者の本気こそが変革のエンジンになると信じ、私を誘ってくれた経営者に相談をすると、こう言われたのです。

「それは、私じゃできません。あなたに全て任せているので、いろいろあると思いますが、よろしくお願いしますね」

まるで他人事な反応にその瞬間、目の前が真っ暗になりました。「あぁ、この人は本気で組織を変える気はないんだ。自分は血を流さずに外から眺めているだけなんだ」と絶望したことを、今でも鮮明に覚えています。

どれほど優秀な人材であったとしても、外から入った人材がたった一人で、長年に渡って染みついた組織文化やカルチャーを変えることなど不可能です。現場との摩擦が起きたとき、間に入って「なぜ彼(彼女)の力が必要なのか」「会社はどうなりたいのか」「なぜ、今ここで変化しなければならないのか」を現場に翻訳し、時には矢面に立って泥をかぶらなければならないのは、他の誰でもない経営者自身です。

経営者が他人事のスタンスをとった瞬間、どんなに優秀な人材を入れても、組織は絶対に変わりません。

悲劇を繰り返さないための「採用の決断」と「経営の覚悟」

事業を成長させるための採用だったのに、結果的に組織の崩壊を招くことになった「採用ミスマッチ」の悲劇。この悲劇を二度と起こさないために、経営者や人事責任者はどうすればいいのでしょうか。ポイントは、採用時の見極めと、入社後の関わり方の両輪にあります。

1. あえて「優秀すぎる人を見送る」決断をする

自社の現在のフェーズ、現場の受入体制を客観的に評価したとき、その候補者が「過剰スペック」である場合は、あえて不採用にする勇気が必要です。

自社の「今の靴のサイズ」に合わない巨大な足を無理やり入れれば、靴(組織)が破れるだけ。採用の目的は、優秀な人のコレクションではなく「自社にフィットするピースをはめること」です。

2. 面接で「アンラーニング(過去を捨てる力)」を見極める

実績の華やかさよりも、「過去の成功体験を捨て、新しい環境に泥臭く適応できるか」を見極めてください。

【面接で見極めるための質問例】
「これまでのキャリアで、ご自身の『当たり前のやり方』が全く通用しなかった泥臭い現場はありましたか?その時、自分のやり方をどう捨て、周囲にどう合わせましたか?」

この質問に対して、他人のレベルの低さを呪うのではなく、自分のスタイルを柔軟に変化させたエピソードが具体的に出てこない場合は、いくら実績があっても警戒が必要です。環境が変わってもできるという、「再現性」がなければ組織にフィットはしません。

3. 経営者が、現場と優秀人材に「関わり続ける」覚悟を持つ

高い給与で迎えたからといって、成果を急がせ、現場に丸投げしてはいけません。

優秀人材が現場に馴染むまでの数ヶ月間、経営者は彼らの「焦り」を取り除き、現場とのコミュニケーションの橋渡し役を担い続ける必要があります。変革は、経営者が当事者として泥まみれになる覚悟がなければ成し遂げられません。

経営者の本気ありきで、ヒトは活きる

「優秀な人材を採用すれば、会社が変わる」

これは半分正解で、半分は幻想です。

人材はあくまで「きっかけ」に過ぎません。採用はゴールではなく、新しい組織づくりのスタートライン。「最高のピース」ではなく「はまるピース」を探す営みです。

そのきっかけを活かし、既存社員との摩擦を乗り越え、組織を次のステージへと引き上げるのは、経営者やリーダー陣の「絶対に組織を良くする」という本気のコミットメントです。

魔法の杖などありません。経営者の本気ありきで、初めて人材は活きるものです。


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