街明かりを忘れた夜 〜ヒサゴ沼の天の川〜
21時のヒサゴ沼。
そこは濃密な闇と光の世界。
水面が数え切れない星々の明かりで静かに揺れていました。
夏の夜空
本州では蒸し暑さが本格化する7月後半。
北海道の大雪山には、冷涼で清らかな空気が流れています。
この時期の山で見上げてほしいのが夜空です。
南の空から北の空へとダイナミックに貫く「天の川」に会えるからです。
今回は、大雪山の秘境で出会った特別な夜の景色をお届けします。
天然のプラネタリウム
標高を上げた山の上は、天然のプラネタリウム。
街の明かりの影響が少なく、空気が澄んでおり、星の一つひとつが強く、また優しく瞬いています。
息を吸い込むと、肺の奥までひんやりとした山の匂いが満ちていく。
そんな、五感が研ぎ澄まされる夜の空気感を、少しでも感じていただけたら嬉しいです。
ヒサゴ沼に流れる星の川
山に入って3日目。
夜の21時にふと目が覚めて外へ這い出ると、今晩も満天の星空が広がっていました。
登山口に到着した深夜、そして前日の忠別小屋に続く、3日連続で会えた天の川。
天気の移り変わりが早い山の中で連夜、天の川に会えた奇跡に視界が滲みます。
目の前に広がるのは、大雪山の山中にひっそりと佇むヒサゴ沼。
心地よい風が通り抜けるたび、水面がわずかに波立ちます。
その水面には、空から降り注ぐ星明かりが映り込み、柔らかく砕けながらきらめいていました。
カメラを三脚に据え、静かにシャッターを切ります。
ファインダーの向こう、漆黒の稜線から湧き上がるように立ち上る天の川の姿が、はっきりと浮かび上がりました。

実はこのとき、背後からは不穏な黒い雲がじわじわと迫っていました。
あと30分遅ければ、この星空は雲の向こうに隠れていたでしょう。
山の天気は気まぐれ。
だからこそ、自然がほんの一瞬だけ見せてくれたこの美しさに、心から感謝せずにはいられませんでした。
星降る山へ
星を撮るということは、ただシャッターを押すだけではありません。
その場所の風を感じ、時間の移ろいに身をまかせ、地球の一部になるような体験です。
「難しそう」と思うかもしれませんが、今のカメラはとても優秀です。
基本的な設定さえ覚えれば、あなたが感動したその夜空を、そのまま形に残すことができます。
この夏、バックパックにカメラを忍ばせて、星の降る山へ出かけてみませんか。
そこには、あなたの人生を変えるかもしれない夜が待っています。
【この旅の本編はこちら】
大雪山の奥深く、「神々の遊ぶ庭」へ。
移ろいゆく光の「目撃者」となった、3泊4日の写文録。
平日は都内で働く男が、カメラを相棒に北の大地へ。
そこには、ただ純粋に光と向き合うためだけの静かな時間が流れていました。
四夜連続の奇跡:漆黒の宇宙に架かる、息をのむような満天の天の川
生命の神秘:過酷な冬を耐え忍び、一度の夏を謳歌する女王「コマクサ」
野生との対話:人間のエゴをその澄んだ瞳に映した、悲しきキタキツネ
ファインダー越しに見つめた、大自然が放つ静かな「呼吸」の音 。
あの美しい記憶を、いま一枚のデータから解き放ちます。
あなたも僕と一緒に、聖域の光に触れてみませんか?
