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怒りを飲み込んでしまうあなたへ|その熱は、守りたかったものの声だった

こんにちは、ゆきのです。


相談室で、ある人の話を聴いていた夜のことを、
今も思い出します。
 


「あの人に何を言われても、私はいつも笑って流してしまうんです。
おかしいですよね、私」
 


おかしくない。

そう思いながら、私はしばらく黙っていました。

話しながら、その人は椅子に浅く座っていました。

胸を少し小さくして、背中が丸くなっている。

怒りの話をしているのに、その姿は怒っている人には見えなかった。
ただ、疲れ果てていました。
 


私自身にも、似た時期がありました。

矛盾した指示が、毎日のように飛んでくる職場でした。

理不尽な言葉を受けるたびに、
「ここで言い返したら面倒になる」
「私の受け取り方が悪いのかもしれない」

と、熱くなりかけた何かを、その都度押し下げていました。

気がつくと、背中の中ほどが固まっていました。

肩でも喉でもなく、そこだけ。


押し込んだものが出口を失って、
じんわりと溜まっていくような感じ。

怒りを飲み込むのが上手くなるほど、
背中が重くなっていきました。


怒りは「悪いもの」だと思っていました。

感情的になること。
関係を壊すこと。

湧き上がりかけた熱を感じるたびに、急いで蓋をしていた。


ある夜、台所で鍋の底に焦げを見つけたとき、
ふと違うことを考えました。

焦げは、火が入った跡です。

何かを温めようとしたから、焦げができた。
熱がなければ、焦げは生まれない。

怒りも、少し似ているのかもしれません。
 


湧き上がってきた熱は、何もないところからは生まれません。

何かが傷ついたから。
何かを大切にしていたから。
何かを、守ろうとしたから。


あの職場で理不尽な言葉を受けるたびに熱くなったのは、
「丁寧に扱われたかった」という願いがあったからなのだと、今は思います。

当時はその願いに名前をつけることもできなかったけれど、
身体は先に知っていた。


背中が固まるたびに、そう伝えていたのかもしれません。


相談室のその人も、きっと同じだったと思います。

「怒るあなたは、何かを守ろうとしていたんだと思いますよ」

そう言うと、その人はしばらく黙っていました。


それから少しだけ、椅子に腰を落として、
背中をかすかに伸ばした。

ほんの数センチ。
でも、何かが少しほどけたような時間でした。


怒りを飲み込み続けているとき、私たちはたいてい怒っている自分を責めます。

こんなことで腹を立てる自分がおかしい。
感情のコントロールができていない。
もっと大人にならなければ。

でも、その前に少しだけ、その熱がどこから来たのかを覗いてみる。


鍋の焦げを見るように。
なぜここが焦げたのかを。

「この怒りは、どこを守ろうとしていたのだろう」


もし心が向いたら、
背中のまんなかあたりに、手のひらをそっと当ててみる。


その問いだけを、その温度のそばに置いておけたなら、
今夜はもう十分な気がします。

怒りそのものを責める声が聞こえたとき、
それはあなたが何かをまだ大切にしている、ということなのかもしれません。

焦げは、火が入っていた跡でもあります。


ゆきの
 



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