窮屈さに気づく夜に|鉢の底から、根が伸びる
心に、ひと呼吸の余白を。
こんにちは、ゆきのです。
観葉植物の鉢底から、
白い根が少しだけ出ていることに気づきました。
朝、水をあげようとして、
鉢を持ち上げたときのことです。
少し前から、
葉の色がいつもと違う気がしていました。
水はあげている。
日当たりも、大きくは変えていない。
それなのに、
どこか元気がない。
ふと底に目をやると、
穴から、細い根がのぞいていました。
鉢の中が、
もういっぱいになっていたのでした。
失敗というより、
その鉢では、根の行き場が少し足りなくなっていたのかもしれません。

うまく吸えなかったのではなく、
そこまで根が伸びていた。
見えないところで、
静かに育っていたのだと思います。
人の心にも、
似たような時期があるのだと思います。
前はちょうどよかった場所が、
いつの間にか苦しくなる。
前は自然にいられた関係で、
呼吸が浅くなる。
前は合っていた働き方や暮らし方が、
今の自分には、少し狭く感じられる。
そんなとき、
私たちはつい、自分を責めてしまいます。
「また合わなかった」
「自分に問題があるのかもしれない」
「もう少し平気な顔ができたらよかったのに」
そんなふうに思ってしまう日があっても、
不思議ではありません。
けれど、
窮屈さは、いつも弱さのしるしとは限りません。
もしかしたら、
見えないところで、何かが育っていたのかもしれない。
あの頃の自分が選んだ場所が、
間違っていたわけではなくて。
その場所で過ごすうちに、
根が伸びた。
感じ方が変わった。
人との距離に、必要な余白が生まれた。
守りたいものの形が、少し変わった。
ただ、それだけのこともあるのだと思います。
以前の私は、
「合わない」という感覚を、
全部自分の欠点にしていました。
朝、靴を履く前から胸が重い日。
誰かと話したあと、
肩だけがずっとこわばっている日。
帰り道、
理由もなく、足取りが遅くなる日。
それでも頭では、
「慣れなきゃ」と思っていました。
「ここで苦しいのは、私が弱いからだ」と、
何度も自分に言い聞かせていました。
でも今なら、少しだけ思います。
あのときの苦しさは、
鉢の底に根が当たっている感覚に、
少し似ていた気がします。
外から見れば、何も変わっていない。
けれど内側では、
もう動ける場所が少なくなっていた。
それを、身体や心が先に知らせてくれていた。
そんな気がします。

植え替えをする人は、
根についた土を、全部は払い落としません。
指先で土の塊をほぐしながら、抱えてきたぶんはそのままに、
新しい鉢へ移していく。
その姿を思い浮かべると、
「環境を変える」という言葉の輪郭が、
やわらかくなります。
今まで伸びてきた根に、
もう少し空気を通してあげること。
それくらいの手入れだと、
思える日があってもいいのかもしれません。
もちろん、
すぐに植え替えられない日もあります。
動くことが怖い日もあります。
今の鉢を選んだ自分を、
否定したくない日もあります。
どんな鉢が合うのか、
まだわからないこともあります。
広ければいい、というわけでもなくて。
日当たり。
風の通り。
水の量。
そばにあるものとの距離。
そういう小さな条件が、
呼吸を、少しずつ変えていく。

変える前に、
まず気づくだけでいい日があります。
「今、少し窮屈なんだな」
「この場所で、ずいぶん根を伸ばしてきたんだな」
そう心の中でつぶやけたなら、
それだけで、もう手入れは始まっているのかもしれません。
鉢底から出ていた白い根は、
どこか頼りなく見えて、
それでも確かに、生きていました。
見えないところで、
ちゃんと伸びていました。
あなたの中にも、
そんな根があるのだと思います。
まだ形には見えなくても。
まだ次の鉢が決まっていなくても。
窮屈さに気づいた今日、
あなたはもう、自分の根のありかに触れているのかもしれません。
今日は、植え替えなくてもいい。
ただ、鉢の底を見た。
それだけで、十分な日があります。
ゆきの

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