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高度CKDの掻痒感へのプレガバリン使用について考えてみた(後編)― 症例から考える「慎重な一歩」

前編では、高度CKDの掻痒感にプレガバリンを使うことについて、私自身がどこで迷っているのかを言葉にしてみました。

📖 この記事は2部構成の【後編】です。

前編では、高度CKD患者さんの掻痒感に対してプレガバリンを使用する背景と判断の前提を整理しました。まだの方は、先に前編を読んでみてください。

後編の本記事では、実際の症例から「慎重な一歩」をどう踏み出すかを掘り下げます。

  • 「効く量と安全な量の重なりはどこにあるのか」

  • 「ナルフラフィン・採用品・包括医療の壁の中で、 どこまで“標準治療を尽くした”と言えるのか」

  • 「チームで誰がGOサインを出すのか」

頭の中をぐるぐる回るこの3つのモヤモヤは、
書き出してみてもなお、
簡単には解けませんでした。

でも、迷っているばかりでは前に進めません。

後編では、
いったん「事実」に立ち返りたいと思います。

プレガバリンという薬の
薬理・薬物動態・腎機能別の用量、
そして掻痒に対するエビデンスを
整理し直したうえで、

・回復期リハ病棟で実際に経験した症例
・それをもとに考える「仮想症例」

を通して、いまの私が
「どんな条件がそろったときにだけ、どのような前提でプレガバリンを検討しうるのか」
その“慎重な一歩”を、
言葉にしてみたいと思います。


※前編をまだ読んでいない方は、こちらから
📖 前編:高度CKDの掻痒感へのプレガバリン使用について考えてみた


■ プレガバリンの“教科書的な姿”を整理する

ここからは、いったん感情を脇に置いて、
プレガバリンという薬を
「事実」として並べ直してみます。
頭の中を整理し直すことで、
モヤモヤの“どこが情報不足で、
どこが価値判断なのか”が
少し見えてくるかもしれません。

① 作用機序と本来の適応

プレガバリンは、電位依存性カルシウムチャネルのα2δサブユニットに結合し、グルタミン酸など興奮性神経伝達物質の放出を抑える薬です。

国内で承認されている適応は、

  • 末梢性神経障害性疼痛

  • 線維筋痛症に伴う疼痛

  • 中枢性神経障害性疼痛

の3つで、皮膚瘙痒症は適応に含まれていません
CKD関連掻痒に対するプレガバリンは、あくまで「適応外使用」です。


② 腎排泄という性質と、腎機能別の用量調整

プレガバリンは、ほとんどが代謝を受けず、そのまま尿中に排泄される「腎排泄型」の薬です。
添付文書では、CLcrに応じて1日量・投与回数を細かく調整するよう示されています(下表)。

プレガバリンは、腎機能に合わせて投与量調節が必要

血液透析患者では、
透析後の補充投与も別途規定。
つまり高度CKDの患者さんでは、
そもそも“通常用量”の世界に入れない薬
です。

https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00066754.pdf
(リリカカプセル添付文書/PMDAより)


そして無視できないのが、
用量を守っていても高齢者で副作用が多く発現するというデータ。

PMDAの
「リリカカプセル 適正使用のお願い」では、

  • 70代の患者で副作用発現率 25.3%

  • 80歳以上で 23.4%

  • 主な副作用は浮動性めまい・傾眠

と示されています。
65歳未満と比べて
明らかに高齢者で発現率が高い。

▶適正使用のお願いはこちらで確認できます。
https://www.pmda.go.jp/files/000144302.pdf

「用量を守れば安全」ではなく、
用量を守っても、高齢腎機能低下患者では副作用が出やすい」というのが、この薬の現実的な姿だと思います。


③ 掻痒に対するエビデンスの「ものさし」

次に、CKD関連掻痒に対するプレガバリンのエビデンスを冷静に並べてみます。

代表的な報告を並べたのが、下の表です。

プレガバリンの掻痒へのエビデンス ─ 4本のものさし

並べてみると、「効くかもしれない」報告は確かにあるけれど、サンプルサイズも対照薬も観察期間もバラバラ。
「効果が示唆されてはいるが、推奨度の高いRCTで確立されているわけではない」というのが、現時点の正直な立ち位置です。

各論文の原文は、以下のリンクからどうぞ。

  • Solak 2012 →

  • Yue 2015 →

  • Foroutan 2017 →

  • 皮膚瘙痒症診療ガイドライン2020 →

https://www.jstage.jst.go.jp/article/dermatol/130/7/130_1589/article/-char/ja


ここまで整理すると、プレガバリンは

  • 適応外使用であること

  • 腎排泄で、高度CKDでは“通常用量”に入れない薬であること

  • 腎機能を守っても、高齢者では副作用頻度が高いこと

  • 掻痒への効果は、症例〜小規模RCTレベルで示唆されている段階であること

という4点を前提として持っておく必要のある薬だとわかります。

この前提のうえで、次は実際に経験した症例を振り返ってみたいと思います。


■ 回復期リハ病棟で、私が立ち止まった症例

ここからは、実際に経験した症例をベースとした仮想症例をもとに振り返ってみたいと思いす。

この記事で取り上げている症例は、複数の症例を掛け合わせており、個人が特定されないように配慮しています。

“きれいに解決した話”ではありません。
むしろ、最後まで自分の中に
「これでよかったのか」という問いが
残った症例です。

その正直な葛藤も含めて、
書いてみたいと思います。

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