見出し画像

【私小説】未知#4

まもなく

職員玄関の外に救急車が到着し、

真希は、

ほぼ全員の先生に見られながら

救急車に乗せられた。


オオツとタケモリも乗った。

オオツはタケモリにひどく怒っていた。

「なんてことをしてくれたんだ」


学校からバス停2つ分の総合病院には

あっという間に着いたが、

そこからが長かった。


時刻はお昼頃で、

終わらない診察を待つ人で

ごった返していた。


真希は救急車で運ばれたのに、

どういうわけか、

ストレッチャーに乗せられたまま、

廊下で何時間も待たされた。


オオツは病院に着いてから

ようやく真希に言葉をかけた。


が、それは、

耳を疑う、

腹立だしい、

オオツの本音だった。


「細い子じゃなくてよかった。」


悪かったね、細くなくて。

じゃない、よかったね、細くなくて。


「売店でパン買ってくるか?」


昼時に起きたこの事故で

昼食を食べ損ねたのは

真希も先生も家族もみな同じだが、

毎朝一斤もの食パンを食べる

大食いのオオツは

おなかがすいたのだろう。


だが、真希は、

背中の痛みで何も食べたくはない。

オオツの言葉に無言で首を振った。


連絡を聞いて病院に来たのは、

いつも家にいる祖母の敏江と、

家の近くに事務所がある父の文雄だった。


母の夏子は、

仕事で浜松にはいないのだろう。

時は平成2年。

この頃は

まだケータイが普及していなかった。



いいなと思ったら応援しよう!

ほりんぽす 記事が「よかった」と思っていただけたら、チップで応援いただけると嬉しいです。いただいた応援が、次の記事を書くエネルギーになります。これからも読んでよかったと思える記事をお届けします。