さよならバックパッカー inカンボジア⑤
いよいよアンコールワット遺跡の中心部、バイヨンに入場する。
僕がきちんとインドシナ半島の歴史や建築を勉強していれば、もっと現地でたくさんのことを気づくことができたのだろうが、ほぼ白紙状態なのが残念である。
当時のメモには、「とにかく美しい」というアホの小学生みたいな感想しか残っていない。
左右対称の均整の取れた寺院が、水面に反転して揺れている。
広大な敷地を歩いていると、何度も巨大な「クメールの微笑み」と出合う。神様や仏様の一瞬の表情や感情を、よくあんなサイズで表現できるなあ。
ちなみに、それから数年後に娘が生まれ、ミルクを腹いっぱい飲んで満足そうに眠ってしまったときの顔が、「あのときのクメールの微笑みそっくりだ」と感心することになる。人間という生き物の根源にある何かを、くっきりと投影しているのだろう。

Kさんは、バイクで行ける範囲の全てを君に見せてあげたいと、10か所くらい大小さまざまな遺跡に連れて行ってくれた。
一つ一つの名前は記憶できなかったが、どこを切り取っても美しい。
砂岩に彫りこまれた、超絶技巧のレリーフ。刺繡のような、和紙細工のような。風化して壊れないのだろうか心配になる。
赤っぽい砂岩と、周りの木々や苔の緑とのコントラストも映える。

砂岩に彫られた女性のレリーフは、顔つきや体つきが微妙に異なる。多分、それを彫った職人の好みが出ているんじゃないだろうか。
「おれは、もう少しぽっちゃりタイプが好きなんだよね~」的な。

さよならバックパッカー inカンボジア⑥ に続く。
