さよならバックパッカー inカンボジア⑥
そして、一番印象深かったのは、やはりこれだ、タ・プローム。
アンコール・ワットは、12世紀前半に建立されたヒンドゥー教寺院だが、19世紀にフランス人学者が再発見するまで、ジャングルの中で数百年間放置されていた。
そして、当時も今も熱帯植物は、人間の思惑と関係なく成長を続けている。
よく『天空の城 ラピュタ』のようと形容されるが、遺跡を覆う大木の根は、石壁を食い破り、天からビタンと着地したような形状で屋根に広がり、数トンもあるような巨石を軽々と抱きかかえながら宙に伸びている。
この人工物と自然のまじりあった状態こそが、きっと「正解」なんだろう。
修復工事の際に、庭の雑草を抜くように、もし榕樹を取り除いてしまってたら、味気ない遺跡になってたに違いない。

ヒンドゥー教寺院として生まれ、時代の移り変わりの中で、仏教の要素も取り込まれた。
「崩壊に抗う一方で、崩壊を受け入れながら、再生を目指す」。
なんだか、とっても仏教的だ。
内戦中は、ポル・ポト派の軍事拠点として利用され、現在は世界中からスピリチュアルな観光地として、人間とお金を吸い込み続けている。
善悪を越えて、人間の業という業を引き寄せ続けている。
唯一無二だ。
一ノ瀬泰造が、命と引き換えにしてでもここへ向かった熱情が、現地に行ってみて少しだけ理解できた気がする。
さよならバックパッカー inカンボジア⑦ に続く。
