探検?遭難?サバイバルアマゾンツアー①
① ウォームアップに、ピラニア釣りでもやるか?
1990年代末のある年の休暇期間。ごりごりの「アマゾン通」「アマゾンマニア」のおっさんらと仲良くなり、
「仲良しの数家族で一緒に、久しぶりのジャングルツアーに行くんだ。お前は日本人だから、ジャングルなんて行ったことないだろ? 一緒に行かないか? めちゃくちゃ楽しいぞ!!」と、半分連れ去られるように、メンバーに入れられた。僕も、「人生でこんな機会はそうそうないだろ」と冒険心がうずいた。うずくんじゃなかったと、ツアー中後悔することになるのだが。
あれから30年…。皆さんご存じの通り、アマゾンの環境破壊は加速度的に、不可逆的に深刻化しており、当時では許されたことも、今ではいろいろ問題があることもあるかと思う。
元気に帰ることだけが目標のツアーだったので、写真もほとんど残っていない。できる限り、当時を思い出しながら、10回シリーズくらいにまとめてみたい。
出発当日。
おっさんらとその奥さんたちや僕を含め、総勢30人くらいが、5~6台の4WDに分乗し、早朝、住んでいた町を出発した。予定では、次の日の夕方には町に戻るという。おっさんらの感覚では、「近所の山にお手軽キャンプに行く」感じらしい。
が、大型トラックが一台同行し、その荷台には全員分の食料と飲み水、大量のビールとタバコ、万が一に備えた満タンのガソリンタンク、猟銃10丁、弾丸、巨大なナタ、釣り竿20本、小型ボート(エンジン付き)などなどが積まれ、僕も「いち荷物」として、その荷台に乗るよう指示された。ごく平均的な日本人の感覚では、キャンプどころか「決死の探検隊」以外の何物でもない。
当時は、スマホもカーナビもGPSもなく、そもそも紙の地図すらない、というかジャングルでは役に立たない。
それでもおっさんらは、「これまで何十回と行ったことのあるエリアだから、俺の庭みたいなもんだ。安心してついてこい!」と威勢がいい。
町を出発して数時間。アスファルト道路も電線も、いつの間にか見えなくなった。森林伐採業者用なのか、かろうじて車が一台通れる幅の、ぬかるんだ凸凹道を、おっさんらは爆音のラテンミュージックをBGMに、とんでもないスピードで爆走する! 僕は振り落とされないよう、大型トラックの荷台で手すりにつかまるが、人形のように転がるのみ…。
顔を上げるといつしか人間世界の気配は完全に消え、道の両側は高さ数十メートルの樹木に覆われ、まったく見通しの効かない「ザ・ジャングル」。
しばらくして探検隊の車列が止まった。
「ウオッ、ウオッ、ウオッ!」とべたすぎる、猿のような鳥のような謎の鳴き声が響く。
リーダー格のおっさん、ホルヘ(仮名)が笑って言った。
「さあ、こっからが本物のアマゾンだ。すぐ近くに小さいが湖がある。昼飯のおかずにするから、軽く釣りでもやろうぜ。」
すでに足腰がガタガタの僕は荷台から降りて、よろよろとついていく。ホルヘは、ナタで草木を豪快に切り開きながら進む。はぐれたら死ぬな、ということだけはすぐに理解した。30分も歩くと、湖面が見えてきた。
「琵琶湖?」ってくらいのでかさだが、地図にはない。これくらいのサイズの湖や川は、雨季のたびに大きさを変え、流れを変えるから、いちいち地図には載せようがないのだ。
僕はほとんど釣りの経験はないし、苦手だ。が、おっさんたちは、手早く用意した釣り竿を渡しながら、「大丈夫だ。ピラニアは、アホでも釣れる」と力強く断言した。釣り針の先には、2センチ大の牛肉の切れっぱしが。
いきなりピラニア釣りですか? まだ旅は始まったばかりなのに、メインイベント感があるんですが…。
見よう見まねで釣り糸を垂れた瞬間、たしかに「アホでも入れ食い」状態で、次から次に20センチくらいのピラニアが釣れた。割れたガラスの破片のような歯がびっしりと並んだ、凶暴な口元をしてらっしゃる。
「おい、針を外すときだけ気をつけろよ。そういや、むかし〇〇は、小指を食いちぎられてたよな、hahaha~」
hahaha~じゃねえ、それは最初に言っとけ!と、激しくツッコミながら、全員で100匹近い昼食のおかずがゲットできた。
そのまま、ワイルドおやじの奥様達が調理を始めた。町から持参したパンやイモと、ピラニアのフライ(サルサソースかけ)とビール。味は、何のクセもない白身で、食べ応えもあり、ちゃんとうまい。何を食って大きくなったのかは知らんが…。
