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夜職保育士さんと僕13 ミキさんの秘密

この物語はたぶんフィクションです
ミキさんと僕もたぶん空想上の誰かです
でも、空想上でも良いから、2人のかけがえのない時間を残せたら良いなと思います



年末年始は学生だけではなく、保育士さんも長い連休が取れる時期だった
折角だから旅行にでも行こうとなって、行き先を二人で考えることになった

「寒い所でも良いけど、温泉とかも良いな。どうせなら極端な所で沖縄か北海道なんてどう?」
と旅行会社のパンフレットを並べながらミキさんが言う
「一度、北海道には行ってみたいかな。本場のジンギスカンとか食べてみたい」

そんな感じで4泊5日の札幌・函館旅行が計画されることになる
結局ミキさんの同僚の美幸さんと、その彼氏の幸さんの4人で行くことになった
この二人、名前と苗字の違いこそあれ同じ『みゆき』さんだったので、非常にややこしかった

出発前日の12月28日の夜
4人で前日打ち合わせのため、近所の台湾料理屋に集まった
その日は昼過ぎくらいからミキさんが腹痛で不調で、早めに解散して旅行に備えようと言うことになった
ご飯を食べながら、航空券の確認や待ち合わせの時間などの確認をする
途中ミキさんトイレに立ったが、中々戻ってこない
一度美幸さんが、声をかけに行った時には
「もうすぐ戻る」
って返事をしたみたいだけど、それから20分経っても出てくる様子がない
再び美幸さんが様子を見に行ったが、慌てて帰ってきて
「ミキが返事しない、どうしよう」
と、なった
急いで店長さんに事情を説明して、トイレのドアを外す
ミキさんは顔面蒼白で「うー…」と唸っていて、声をかけても返事もできない状態だった

救急車を呼んでもらい、日赤病院に救急搬送
そのまま緊急手術となった

救急車には僕が同乗させてもらった
幸さんは
「旅行どころじゃないだろうから、今回は中止にしよう。美幸はミキちゃんの家寄って、必要なもの持って病院に行って、彼についててあげて。旅行関係の連絡と手続きは俺がやっとくから」
と言ってくれた
美幸さんは僕から家の鍵を受け取って、家に向かってくれた
「詳しい事分かったら連絡ちょうだい。必要なもの揃えて日赤向かうから」
と、二人とも本当に頼りになった
そう思うと同時に、自分の無力さを感じてしまっていた

病院で緊急手術になると説明を受け、美幸さんに連絡をする
美幸さんは1時間程で到着して、色々と手続きを済ませてくれた
手術が終わったら声をかけますと言われ、待合室で美幸さんと二人で座っていた
慌ただしくしているうちは大丈夫だったけど、こうして落ち着くと急に不安感が押し寄せてきた
不安というよりは恐怖の方が近い感覚だったかもしれない

「そんなに大変な手術じゃないみたいだし、大丈夫だから」
と、美幸さんが、声をかけてくれる
それでもあんなミキさんを見たのは初めてで、不安は強くなるばっかりだった

日付も変わった頃、ミキさんの手術が終わったと声をかけてもらった
病棟に上がったけど、婦人科だからと言われて僕は廊下の端で待つことになり、美幸さんが病室まで行ってくれた

美幸さんが病室の前に着いたくらいに
「痛い!痛い!痛い!」
と、叫び声が聞こえた
ミキさんの声だ!と反射的に立ち上がってしまったが、どうすることもできなかった
「痛い!痛い!助けてよ!」
「ミキ、私のことわかる?どこが痛いの?私にも教えて」
「痛い!お腹が痛いの!」
と、ミキさんと美幸さんの声が聞こえてくる
「麻酔でまだ混乱してるみたいで、しばらくすると落ち着くと思いますが、あまり酷いようなら鎮静剤使いますね」
と看護師さんが話している

不意に
「私の赤ちゃん返してよ!お願いだから返して!」
と叫び声が聞こえた
聞いた瞬間、理解不能だったけど
『見てはいけないもの・聞いてはいけないもの』
に触れてしまったようで、息ができなくなるほどの不安感が押し寄せてきた

とてつもない不安感に立ち尽くしていると、美幸さんが戻ってきた
「ミキもあんな感じだし、男性は病室入れないみたいだから、今日はこのまま帰りな。このまま私がついて、明日連絡するから、そこで交代しよう」
と言ってくれた

そのまま病院の一階フロアまで美幸さんは一緒に来てくれた
「ミキさんが、私の赤ちゃんって言ってたのって…」
と、僕が話すと
「やっぱり聞こえてたよね。君が聞けば話してくれると思うわよ。私から話す話じゃないし、聞くには覚悟が必要だと思う。もし、その覚悟があるなら、落ち着いたら聞いてごらん」
と美幸さんが話してくれた

タクシーでマンションまで帰り、部屋に入る
ミキさんのいない、ミキさんが帰ってこない部屋が急に知らない他人の部屋のように感じられて怖かった

ミキさんがいない寂しさを我慢できずに、ミキさんの枕を抱いて布団に入った
なかなか眠ることができなかったけど、新聞配達のバイクの音を聞いたあたりで意識を失い、気がついたら朝8時だった

美幸さんからショートメールが入っていて、一般病棟に移ったから10時には面会できるとの事
僕はシャワーを浴びて目を覚まし、急いで病院に向かった


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