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夜職保育士さんと僕14 受け止める覚悟

この物語はたぶんフィクションです
ミキさんと僕もたぶん空想上の誰かです
でも、空想上でも良いから、2人のかけがえのない時間を残せたら良いなと思います


ミキさんの病名は『卵巣嚢腫』というものだった
大抵の場合はここまで酷い状態になる事はないらしく、珍しい部類に入るらしい
何より驚いたのは、摘出されたものだった
画像でしか見ていないので、はっきりはしていないけど、肉片らしきものに混じって、髪の毛と小さな歯のようなものが見えた

なんでこんなものが?と驚いていると、美幸さんが
「こういうものが混ざってることもあるみたいだよ」
と教えてくれた
その画像は美幸さんが
「そんなもの見せたら、ミキがショックを受けるから、絶対に本人には見せないでください」
ってお医者さんに伝えてた

病室に着くと、ミキさんが昨日が嘘だったかのように落ち着いて迎えてくれた
「迷惑かけちゃってごめんね。北海道行きたかったなぁ」
と、いつもの調子で話している
「北海道はまたチャンスがあるでしょ。とりあえず大丈夫そうで良かった」
「大丈夫じゃないよー。お腹に傷できちゃったし、しばらく水着着れないかも」
とお腹の手術痕を見せてくれた
おへその下15センチ位の所に、横向きの傷が見える
水着とか下着姿になっても目立たない、ギリギリの所を切ったらしい
入院は五日間の予定で、年末年始は病院のベッドが確定してしまった

病室は電話厳禁だし、面会も面会時間があるし、入院中の生活はなかなか不便だった
でも毎日面会に行き、自分のお弁当を買って一緒にお昼ご飯も食べた
ミキさんは雪見だいふくが大好きで、毎日差し入れに買って行った
「毎日ハンバーグと唐揚げで飽きないの?」
というミキさんに
「自分だって毎日雪見だいふく食べてるじゃん」
というやりとりが、退院までの日常会話となっていた

旅行がキャンセルになってしまい、幸さんは実家に帰省する事になり、美幸さんはやっぱりミキが心配だからと東京に残ってくれた

大晦日、ミキさんの病室には美幸さんも来てくれていた
「また、とんでもない時期に入院したわよね。でも、休園期間で良かったわよ。しばらく休むにしても、早く退院できそうで良かった」
そう言う美幸さんに
「1月いっぱいは病休で休んでも良いって言われてる。傷が引っ張られる感じが無くならないとストレスすごいんだよね」
とミキさんが答え、さらに
「あと、美幸は今日の夜予定ある?」
と聞いた
「誰かさんのせいで予定は無いですけど、なんかすることある?」
「もし予定ないなら、うちの子の面倒見てあげてくれない?一人でいさせるのが心配なんだよね」
「私は別に良いんだけど、あんた達的にそれは良いの?」
なんだか僕が口を挟む余地のないところで、勝手に話が進んでいく

結局、僕は美幸さんと家で過ごす事となった
病院からの帰り道
「うちの子って、犬じゃないんだから、なんか他に言いようがあるだろうに。ミキって君に対していつもあんな感じなの?」
と美幸さんから聞かれた
「はっきりどんな感じって言えないけど、いつもあんな感じですよ」
「ふーん、そっか。とりあえず一回家帰って、準備したらマンション行くから、駅前で待ち合わせしよ」

美幸さんと別れて家に戻り、部屋を軽く片付けて掃除機をかける
少し寒いけど換気もする
食器を洗い終えてから駅に向かった

駅で10分程待つと、美幸さんが改札から出てくる
「やっぱりデカいと見つけやすいねー」
と笑っていた

二人で近所のスーパーで買い物をする
「やつぱり年越しそばと、お酒と、あとはフライドチキンは絶対」
「年越しにフライドチキンって変じゃないです?ミキさんもフライドチキン好きだったけど、年越しチキンって聞いた事ないですよ」
「いや、やっぱりイベントにはフライドチキンなのよ。私とミキはこれが定番なの」と、言う事でそばとお酒、フライドチキンなどを買いマンションへ

部屋に着くと美幸さんが
「二人で住んでるって言ってたけど、私と住んでた時とあんまり変わってないね」
「3年前くらいになるけど、私たち付き合ってて半年位一緒に住んでたんだよね」
と話してくれた
(……ん?付き合ってた?)
きょとんとする僕に
「そう言えばちゃんと話した事なかったよね。私、ミキの元彼女なのよ」
いよいよ混乱してきた
「まあ、そんな訳で改めてよろしくね」
と驚くべき事実をサラッと笑顔で伝えられ、美幸さんに対する距離感が分からなくなってしまった

夕飯に年越しそばを食べ、早めにお風呂を済ませる
ミキさんと電話ができたので少しだけ話せた
「あいつそんなことまで話したの!まったく何考えてるのよ、君はあんまり気にしなくて良いからね」
と言われたけど、気にしないでいられるわけがない
電話を代わったけど、美幸さんは
「はい、はいはい」
「大丈夫だよ」
とニコニコしていて、何を話していたのかは分からない

そんなこともありながら、ビール、日本酒を飲みながらチキンを食べ、ダラダラと紅白を観る
美幸さんはお酒を飲むと声が大きくなって、よく喋るようになる

酔ってニコニコしていた美幸さんが不意に真顔になり
「君はナイト様ってよりは犬って感じなんだよね。ミキの事を護ってるんじゃなくて、一緒にいるって感じ。元彼女から言わせてもらうと、ミキにはそういう感じが必要なんだと思うの。私は出来なかったから、君には頑張って欲しいのよ」
と話してくれた
「僕は一緒にいる事しかできないし、どっちかっていうと護られてる側っていう感じなんです」
と僕が答えると
「そう、それが良いのよ。あの子にはそういう相手が必要なんだと思うよ。あとは君が、昔のあの子を受け止められるかだけだと思う」

そんな話をしているうちに年が明けた
「あけましておめでとう、明日も病院行かなきゃだし、そろそろ寝ようか」
と美幸さんはベッドに向かう
「一緒に寝る?ミキには黙っとくよ」
と美幸さんが、からかうような顔でこっちを見てくる
「僕はこっちで寝るから大丈夫です。枕だけ一個貰います」
といつもミキさんが使ってる方の枕を持ってリビングに戻る
「やっぱり、そういう所だよ。君はそのままでいて欲しい。あと、もう少し上手く断らないと、私傷つくからね」
と美幸さんが笑いながら答えた

部屋の電気を消し、真っ暗な部屋で考える
覚悟なんてものは意識した事がないし、この先も考えたりはしないだろう
ミキさんが過去にどんな秘密を持っていたとしても、きっと僕はそのままのミキさんが好きだから
そんな事を考えながら、わずかにミキさんの匂いがする枕を抱きしめて眠りについた


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