#17 対談者振り返り 望月直人×緒方敦子
#17で対談をしていただいた望月直人さんと緒方敦子さんに、対談を終えて、それぞれに感想や気づきをお便りとして寄せてもらいました。
望月直人さんより
私が緒方さんに関心を持っていたのは、対談よりもずっと前のことでした。筑波大学BHEのオンライン研修で見かけたり、精神障害のある学生への合理的配慮に関する話題の中で何度かお名前を耳にしていて、対談の機会をいただいた時から楽しみにしていました。軽くご挨拶をしたことはありましたが、しっかりとお話しするのは今回が初めてでした。
年齢もそうですが、仕事の経験年数も私の方が上で、わざわざ阪大まで来ていただいての対談でもあったので、どこかで私が話をリードしなければと思っていました。ところが実際には、緒方さんの包み込むような安心感のある雰囲気の中で、専門性のベースや職務の歩みが似ていたこともあり、気がつけば私の方がずいぶんとべらべら話してしまっていました(笑)。
最近関心を持っているテーマですが、障害学生支援分野ではまだ主流ではないかもしれないと感じ、これまであまり人に話してこなかったことも、今回の対談で引き出していただきました。言葉にして話すことで、自分の中にあった考えや課題を整理することもできたように思います。
私はもともと、わりとフランクに誰とでも話す方ですが、本当の内面を知られることには少し苦手意識があります。フランクな雰囲気をある意味カモフラージュとして使っている自覚もあります。ただ今回は、緒方さんが障害学生支援というテーマに真っ直ぐ向き合い、私にも真正面から言葉を投げかけてくださいました。その姿勢に触発されたのか、また安心感のある雰囲気の中で自然と応えることができ、自分の言葉で率直に話すことができたように思います。だからこそ、今の自分の「本音」の部分まで話ができたのではないでしょうか。これは学生との対話でも同じことで、相手とどう向き合うかという姿勢の大切さを改めて実感する機会にもなりました。
所属大学では近年マネジメント業務が増え、俯瞰的な視点で物事を見る機会が多くなっています。その中で、障害学生支援を大学という枠組みの中だけで考えるのではなく、地域社会も含めたより広い視点で取り組む重要性を感じるようになりました。10年以上この分野に携わる中で、慣れのようなものもあったのかもしれませんが、最近は学外の地域との関わりにより意識が向いていました。
今回、緒方さんと対話する中で、率直に言えば「もう一度、障害学生支援をしっかり頑張っていこう」と思える気持ちになりました。緒方さんの仕事への向き合い方に触れたことに加え、自分の大学の課題についても、これまでとは少し違う角度から捉え直すことができたように思います。
結局のところ、学内と学外を分けて考えるのではなく、両者がフラットに行き来しながら還流していくようなアプローチが大切なのだと感じています。特に印象に残っているのは、「合理的配慮」という言葉は広まりつつある一方で、その背景にある「社会モデル」という軸となる概念が十分に浸透していないという課題について、互いに問題意識を共有できたことです。また、将来的には支援部署がなくても機能する持続可能な体制づくりを目指すという大きな目標についても共有することができました。
こうした取り組みは、支援室や大学の中だけにとどまるものではありません。学内外のさまざまな人や場とつながりながら、目指す方向に向けて一歩ずつ進んでいきたいと思います。
緒方敦子さんより
望月先生は、これまで学会でお見かけしたり、同僚や知り合いを通してお名前を聞く機会も多く、以前からどんな方なのだろうと気になっていました。少し前に日本学生支援機構の応用プログラムで先生の講義を受けたのですが、その時のロールプレイ形式の研修が印象に残っていて、対談のお話をいただいた時はとても嬉しかったです。
ただ、いざ対談となると、普通にお話しする以上に緊張してしまい、最初はがちがちだったのですが、あっという間に先生のお話に引き込まれ、気がつけば終わりの時間を迎えていました。
今回さまざまなお話を伺いましたが、事前のお話にもあった、支援部署に依らない体制づくりの考え方に強く共感していました。私の所属先でも支援室の設立から10年近くが経ち、大学の中に「障害学生支援」という文化はある程度根付いてきたように感じています。だからこそ、これからは支援室という枠組みを前提にするのではなく、大学という組織そのものが障害学生支援に関わっていく形へと少しずつ変わっていくことが大切なのだと感じました。
お話を伺う中で、学生との対話のあり方についても改めて考えさせられました。合理的配慮は迅速に提供することが求められる側面もありますが、「提供を急ぐことだけでよいのか」「決まった枠組みに当てはめようとしていないか」という問いはとても印象に残っています。対談のあと、学生との面談でもその言葉を思い出し、学生の“納得感”や“実感”を大切にできるコーディネーターでありたいと感じました。
もう一つ心に残っているのが、経験年数を重ねるほど対等に議論することが難しくなるというお話です。先生のお話や姿勢からは、常に周囲と対等な立場で関わろうとする意識が伝わってきました。私の職場でもそれぞれの持ち味が異なり、新しい取り組みを始めるときには自然と意見を聞きたくなる関係性があります。そんな空気感を大切にしながら、年数を重ねても互いの専門性を尊重し合える関係であり続けたいと改めて思いました。
今回の対談は、これまでの実践を振り返ると同時に、これからの在り方を考える時間でもありました。私よりも長くこの道を歩んでこられた望月先生とお話しする中で、年数は違えど「大切にしている共通の軸」が見えたことは、私にとって大きな自信となりました。先生から感じた、周囲と対等であり続ける姿勢や問い続ける姿勢に触れ、私もそうありたいと自然と背筋が伸びる思いでした。
今回の対談で得た気づきを胸に、これからも学生一人ひとりと、そして組織の在り方と誠実に向き合いながら、障害学生支援の実践を積み重ねていきたいと思います。
