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#17 編集後記


「ひと呼吸 weaver」の取材をした編集メンバーが、後日感想などを綴った「編集後記」です。ぜひ、記事本編とあわせてお読みください。



「冬の日差しの中で」


大前勝利/『ひと呼吸weaver』撮影担当



今回の場所は大阪大学豊中キャンパス。これまでにも何度かお邪魔した馴染みのある場所です。キャンパスの空には、伊丹空港を離陸した飛行機が駆けていきます。

望月さんとはHEAPのイベントでご一緒したり、一緒にラーメンを食べたことも。緒方さんとは研修でご一緒したりと、おふたりとも日頃からお世話になっている方々です。そんなおふたりの対談ということもあって、とても楽しみにしていました。

いざ対談がはじまると、寒い冬の日でもおふたりの話すその場の周りだけ、ほっこりとした温かな空気が流れているようでした。望月さんは「撮られ慣れていない」と言いながら、どう撮ってもさまになります。緒方さんは、柔らかな眼差しの奥に力強さがあって、どのようにシャッターを切るか考えながらの楽しい対談でした。

対談では緒方さんが高校の先生から「大学の合理的配慮ってこうなんですね」と驚かれた経験を話してくださったのが印象的でした。合理的配慮の考え方は、教育段階が違っても変わるものではないはずです。それでも教育段階によって捉え方に差があるとすれば、進学してきた学生が戸惑うことになってしまいます。大学の中だけで完結するのではなく、それ以前の段階とも連携していく必要があると、あらためて感じました。

対談後、カメラを置いてご一緒したお昼の時間は、撮影できないことをもどかしく感じるほどでした。本編では語られていませんが、カレーの話や美味しい焼肉屋さんの話など、何気ない会話の中から、おふたりのひととなりが自然ににじみ出ていました。「余白を写す」と言いつつ、今回その「余白」を写せていないのはご愛嬌。またいつものカメラを手に、次の対談の機会に立ち会える日を楽しみにしています。


大前勝利・おおまえかつとし
京都大学ディスアビリティ・インクルージョンセンター ATスペシャリスト

大学在学中に学生サポーターとしてPCテイクに携わったことをきっかけに、支援技術(AT)の世界に魅了される。2021年10月よりHEAPプロジェクトスタッフとして携わり、2025年4月よりディスアビリティ・インクルージョンセンター ATスペシャリストを兼務。現在に至る。
高校生の頃から写真を始め、風景を中心に撮影していたが、フォトグラファーの浅野友朗氏に師事したことを契機に人物撮影へと領域を広げる。被写体との対話を大切にしながら、企業・ブライダル撮影を中心に手がけてきた。
ATスペシャリストとしても、フォトグラファーとしても、根底にあるのは「ひとに向き合うこと」。その難しさのなかにこそ発見があると日々感じている。





「支援者は「ひと」である」


木谷恵/『ひと呼吸weaver』執筆担当


今回の対談記事を書くにあたって、どうしても心残りなことが一つあります。
力不足と言われればそれまでなのですが、望月さんも緒方さんも、それぞれご出身地のイントネーションや言葉づかいで話されていたにもかかわらず、それをうまく表現できなかったことです。その場で聞いていて心地よく、艶かしくすら感じていた空気感が、いざ文字にしてみると残らないのです。それは、語尾だけをそれっぽくして表現できるようなものではなく、声色、間、テンポといった、喋ることにまつわるあらゆる要素がそのひとの「喋り」を構成しているのだと、記事を書きながら気づかされました。

望月さんはお話のなかで、いずれ障害学生支援もAI化していく部分があるのではないかと指摘されました。すでにAIを活用している大学もあると思いますし、私自身も普段、生成AIを使う機会はぐんと増えました。わざわざ言うまでもなく、AIはあらゆる分野で無視できない存在になりつつあります。

私自身も最近、Googleの「NotebookLM」をつかって、気になる話題を耳から取り入れるようなことをしています。動画や文章などの資料をアップロードすると、AIが内容を解析して二人の話し手がまるでラジオ番組のように掛け合いをしながら解説してくれます。おかげで、移動中も耳から情報をインプットできるようになりました。
ただ、一つだけ、どうしても受け入れがたい違和感があります。そのせいで、もう聞くのをやめてしまおうかとすら思っているのですが、AIがまるで人間であるかのように話す、まさにその「人間っぽく話そうとする」のを感じれば感じるほど、身構えてしまうのです。これは個人差が大きい部分であり、あくまでも私の場合の話です。
ほかにも、たとえば不安で仕方がないようなときにAIに相談するのも、どこか心もとなく感じてしまいます。客観的なデータをもとに成功率を出してくれたり、心理学をベースに適切な慰めをしてくれるかもしれません。けれどもやはり、それよりも、大切なひとや信頼しているひと、あるいはたまたま横にいる見知らぬひとでもよくて、だれか生身の人間に「大丈夫」と言ってもらえることのほうがずっと心が頑張れる気がします。それはおそらく、人間が「痛み」を知っている生き物だからです。そのひともきっといつかどこかで、痛みを経験したことがあるだろうと思えることが大事なのだと思います。

緒方さんが、いま、小規模の大学で日々同僚とああでもないこうでもないと言いながら目の前の学生に向き合っていること。そして望月さんが、相談相手とお互いに変化していくことが許されるような対話や支援が大事だと言われたこと。その背景には、やはりAIでは代替できない何かがあるのだろうと思います。
ひとの温度や湿度。そして、冒頭に書いた喋り言葉ですら、書き言葉で表現するには限界があります。そうした温度感や手触りは、障害学生支援のなかでもきっと大切な要素だと思います。この連載でも、そうした息づかいを届けられたらと思います。   


木谷恵・きたにめぐみ
京都大学ディスアビリティ・インクルージョンセンター プロジェクトマネージャー
『ひと呼吸』創刊時より編集メンバーとして参加。2020年まで京都大学DRCで障害学生支援に携わり、その後、フリーランスのライターとして障害に関する取材・執筆を行う。2023年より京都府南丹市にて書店「九」をオープンし、読書会やお話会を開催している。2025年10月より現職。