「無人島生活 専用福袋・2択」ヒスイの毎週ショートショートnote
すべての人間は、猫の下僕である。
たとえ、無人島に二人きりでも。
「くそぉ……こんな事なら、あのとき『体に役立つ福袋』を選べばよかった!」
猫草を取りに行った崖の途中で、おれは叫んだ。
あぶねえ。転げ落ちそうだ。
半年前、おれは詐欺罪で逮捕された。判決は『無人島への流刑』。
この十年ほど人口が減り、無人島が増えた。そこへ囚人を送りこめば金のかからない刑罰になる。経済難の政府はコスパの良い流刑を量産したのだ。
島へ送られる前、刑務官に聞かれた。
「あなたには選択の権利がある。『体に役立つ福袋』か『体と心に役立つ福袋』。どちらかを持って行けます」
「……じゃあ『体と心の福袋』を。一粒で二度おいしいわけでしょ」
刑務官は微妙な顔で書類に書き込んでいた。
おれのその後を暗示するように……。
無人島へ着き、手渡された福袋を開けたら、子猫と書類が入っていた。
『猫は心の癒し、いざとなったら食べられる』
「くそっ、猫が食えるか!」
足元では子猫が、にーにーと泣き声を上げていた。
しょうがない、その日からおれは猫の下僕になった。
猫はやりたい放題。全然いやしにならない。むしろ手がかかる、振りまわされる。良いことなし。
「あー、失敗した。『体にやさしい』には、何が入っていたんだろう?」
ある日、島に手紙入りの瓶が流れ着いた。開けてみたら、近くの無人島へ送られた囚人かららしい。
『僕は体に優しい福袋を取りました。ニワトリのつがいが入っていました。
毎日卵を産むのはいいんですが、朝は四時にトキを作るし、夜はオンドリがつつきまわすので不眠でおかしくなりそうです。
そちらはどうですか』
……どうですかって言われても。
おれは猫の下僕だ。
こいつは卵を産まないが、少なくとも一緒に寝てくれる。
どっちがいいかは――神のみぞ知る。
ま、おれはやっぱり下僕がいいかな。
さーて、猫草でもとってくるか!
先週みたいに、崖から転げ落ちないようにしよう。
【了】やく800字
本日は、たらはかにさんの #毎週ショートショートnote に参加しております。
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明日はシロクマ文芸部。
だせるかな(笑) がんばるな、ヒスイよ!
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