将棋が苦手なので、自分なりの将棋を作る
(2025/05/18追記:別記事で補遺を追加しました)
私には、とても優しい祖父がいた。
祖父は物知りで、頭が良かった。私はそんな祖父のことが大好きだった。
あるとき私は、祖父が嗜んでいる将棋に興味を持った。
本を読んでルールを学び、基本を押さえた私は、その勢いのまま祖父に手合わせを願った。

「おじいちゃん、将棋やりたい」

「おお、いいよ」
私は祖父と対局した。
結果は惨敗だった。

「おじいちゃんの勝ちだね」
負けず嫌いの私は思った。


(少年の日の思い出)
*
あれから十年以上が経った。
祖父はもうとおいところへ旅立ってしまった。
私は立派な穀潰しに成長した。
将棋のことなんてすっかり忘れた、ある日のことだった。
私は母に頼まれて、祖父の部屋の整理を手伝った。
祖父は大きな企業に勤めていた功労者だったらしく、押し入れの中からは賞状や記念品の類いがいくつも出てきた。私はそれを見つける度に、なんだか誇らしい気持ちになった。
小躍りしながら押し入れの最後の引き出しを開けると、そこには熟女モノのビデオの山と立派な将棋盤と駒が丁寧に収納されていた。

それを目にした瞬間、私は、思い出した。
あの頃の、私と祖父のこと。
祖父は物知りで、優しくて、私のことをほんとうにかわいがってくれた。
将棋に興味を持った私のために、新しい将棋盤まで買ってくれた。
それなのに私は、たったの一度、祖父に負けただけで、将棋を諦めてしまった。
私は、祖父に申し訳ないことをした。
今となっては謝ることも叶わない、大きな過ちだ。
だからせめて、私は祖父に顔向けができるようになりたい。
私は誓った。
もう、逃げない。
そして、決心した。

ここがダメだよ将棋
では早速、自分なりの将棋(以下、「私将棋(わたくししょうぎ)」)を考えていきます。
将棋はもう二度とやりたくないので、代わりに将棋っぽいアレンジゲームを考えて、そっちを頑張ろうという魂胆です。
まず、現状の将棋に対する不満とその解決策を考えます。
・完全実力勝負でつまんない
将棋には運要素もなければ、ポーカーのような心理戦も(形式上は)ありません。
このことが何を意味するかというと、「実力者とやる将棋は勝ち目がないので面白くない」ということです。
よって、私将棋には、サイコロを振って盤面が変わるような運要素を追加します。

心理戦を導入して人狼みたいなゲーム性を付加する選択肢もありますが、個人的に人狼というゲームが大嫌いなのでそれはなしでいきます。(というかQuizKnockがもうそういうゲーム出してサ終してる)
そもそも人狼が面白くないので、将棋にその要素を加えたところでつまらなさの濃度が二倍になるだけです。
なんなんですか、人狼って。詐欺師が有利になるゲームが存在していいわけないだろ。正直者が馬鹿を見るっていうのはこういうことなんですよ。許せない。(プレイの度にリアル狂人になってしまう人間としての意見)
・「戦」がモチーフなのがなんか嫌
何年前の話ですか、戦って。
だいたい、殺し合いをゲームにするなんて、あまりに品がありませんよ。それでいて崇高な頭脳戦みたいな面をしているから信じられません。お前らがやってることはただの殺戮だからな!
そういうわけで、私将棋では、殺し合いではない別のモチーフを用います。モチーフを、用います。(笑えよ)

・見た目が渋すぎる
絵面が木材と墨の色で満ちているということが、将棋というゲームの退屈さに拍車をかけています。
別に見た目が地味であること自体は何も悪くないんです。そういうのが好きな人もいるし、私も地味なのは好きです。
しかし、将棋においては、そもそものゲーム性が(上記のように)渋すぎるために、見た目まで渋いとなると手のつけようがありません。
そういう渋さ全振りのゲームが存在することを良くないこととは決して思いませんが、幼き頃の私が匙を投げてしまったことの原因の一つには、その徹底的な渋さがあるのではないかと思うのです。
よって、私将棋は、見た目だけでも多少は派手にします。たとえば駒のデザインには、漢字ではなく、より記号的な柄を採用しましょう。

空から将棋を見てみよう
さて、新しい将棋を考える上で、いまある将棋について詳しく知っておくことは重要です。
そこで、このタイミングで一度、「さまざまな将棋」について学んでおきましょう。
一口に将棋と言っても、その形は一つではありません。
私たちがよく目にする、九掛ける九の盤面で「王」とか「金」とかの駒を使う将棋は、「本将棋」と呼ばれる、ジャンルとしての「将棋」のうちのひとつです。
将棋系ボードゲームにはほかにも、ばかみたいにでかい盤面を使う将棋(大局将棋)や、鳥類をモチーフにした将棋(禽将棋)など、いろいろな種類があるのです。
ここでは、そのさまざまな将棋系ボードゲームの中でも、私の琴線に触れたものを2つ紹介します。
他の将棋のいいところを、ばりばり参考にしようというわけです。
・国際三人将棋

これは名前の通り、三人でプレイする将棋です。
私が感心したのは、盤面の中心にある「楽園」というマスにまつわるルールです。
本将棋では相手の王を詰ませると勝ちになりますが、この国際三人将棋においては、王将にあたる駒を「楽園」マスに入れることでも勝つことができます。
相手を打ち負かさずとも、楽園にたどり着いたら勝利。なんだかロマンを感じませんか。
・哲学飛将碁

哲学者が哲学教育のために制作した、チェッカーのようなボードゲームです。
哲学思想の議論がモチーフとなっており、駒に書かれている言葉も「唯心」「唯物」「理」など、観念的な風合いです。
「思想」という単語が大好きな私としてはビビッとくるものがありました。(「だから何?」と言われるとそれまでですが……)
ちなみに、王将にあたる駒には「理想」という文字が書かれています。
理想を失った方が負けというのは、なんとも観念的で美しいルールではないですか。
私将棋をデザインする
さて、大枠のイメージが湧いてきたところで、ここからは実際に将棋盤と駒をつかって、私将棋の具体的なルールを考えていきます。
最終的には自作の盤と駒で遊べるようにするつもりですが、ここではひとまず将棋の盤と駒で代用できるようなゲーム設計をします。
まずは盤面のサイズを決めようとしたそのとき、私はふと、幼時に一度だけ行った囲碁教室のことを思い出しました。
*
そこでは子ども向けの体験教室のような催しが開かれていて、私は両親に連れられてそれに参加しました。
贅沢にも先生と一対一で囲碁を教えてもらえるその機会に、私はまたしても過ちを犯してしまいました。
先生は言いました。

「碁盤のマス目、線と線が交わるところに石を置くんだよ」
私は言いました。

「なんで?」
「なんで線の上に置くの? 四角の中に置けば良いじゃん」
先生はさぞ困ったでしょう。
囲碁の最も基本的な決まり事に、私は愚かしくもケチをつけてしまったのです。
その無意味な問答は、しばらく続きました。

「そういう決まりなんだよ」

「なんで? 将棋は四角の中に置くじゃん」

「囲碁は線の上に置くんだよ」

「なんで?」

「……」

「なんで?」
(少年の日の思い出2~よみがえる記憶~)
*
……ついにはそこから一歩も進まないまま、体験教室は終わってしまいました。
私は囲碁のことを、少しも理解できませんでした。これは恥ずべきことです。
ですからせめて、私はあの先生に顔向けができるようになりたい。
そして、決心しました。

そういうことなので、私将棋では、駒は線と線の交わるところに置くことにします。先生、見てますか。
将棋盤に描かれたマス目は、縦と横それぞれ10本。一番外側の線の上に駒を置くと盤上からこぼれ落ちてしまうので、その線を省いて、縦横それぞれ8本。
よって盤面のサイズは、8掛ける8にしましょう。
試しに駒を置いてみると、こんな感じ。

将棋の盤面に慣れていると、ちょっと違和感があります。
(「そもそも駒に書かれてる文字かどうかも分からないやつはなんなんだ」と思われた方は、水道の水200mlに食塩を小さじ1加えて、3分15秒かけて飲み干してください。飲み干したら、次へ進んでください。)
そこで、こうしてみます。

もっとややこしくなりましたね。
盤面を45度傾けることで、絵面がかなり変化しました。
まあ本来の将棋を打倒するためには、このくらい大胆なアクションも必要でしょう。ただ将棋を単純にしただけのゲームをマスターしても、何の意味もありません。
盤面のサイズが決まったところで、ここからは駒の種類と配置を考えます。これはテストプレイを繰り返す地道な作業ですので、みなさんには私の脳内会議の様子をダイジェストでお送りします。
とりあえず最前列の駒は歩みたいな簡単な動きにして……
駒ごとの役割分担ができるように、攻撃的な駒と防衛的な駒を用意して……
王将にあたる駒は奥の方に配置して……
飛車角みたいな飛び道具もほしいよね……
あと楽園のマスも設定して……
運要素もいるから、サイコロとかでランダムに動くお邪魔キャラも追加して……
あと思想を盛り込んで……
あ、そしたらこのお邪魔キャラはこの世界の象徴ってことにして……
お邪魔だけじゃなくてたまに協力もしてくれるんだってところを見せたいから、特殊ルールを追加しよう……
そうして完成したものがこちらになります。
まずはイカレたメンバー(駒)を紹介するぜ!
・「歩」みたいな駒:畢刺(ひっし)

斜め前方二方向にしか進めない駒です。
赤いお鼻と真っ白な瞳がトレードマーク。
「畢刺」という言葉は、「時間」を意味するのですよ、奥さん。
だから前にしか進まないのですね。
・「香車」みたいな駒:迎資(げいし)

真後ろと真ん前に一マス、そして斜め前方に二マス進める駒です。前に進みやすいですが、後ろには戻りにくい、強引に突っ走るタイプの駒です。
怒って眉間にしわを寄せている顔、もしくはハードゲイみたいなポージングが特徴です。
「迎資」という言葉は、「正義」を意味します。そのくらい暴力的です。
・「銀」みたいな駒:解左(かいさ)

真横と斜め四方向に進める駒です。横の動きがスムースなので、守りに向いています。
レジギガスみたいな顔がチャームポイントです。
「解左」という言葉は、「証」を意味します。多分保険証とかだと思う。
ちなみにここまで紹介した灰色の駒は「替わり駒」といい、将棋のように相手の駒として取ると自分のものにできますが、以降に紹介する駒はそれができません。チェスのように、取ったらそれっきりです。
・「金」みたいな駒:腕和(かいな)

真ん前と斜め四方向に進める駒です。
サイコロみたいなデザインが目印です。星のカービィ64のミラクルマターみたいですね、と言おうとしたのですが確認したら全然似てませんでした。
「腕和」という言葉は、「腕」を意味します。じゃあ一文字でいいよね。
腕和は、陣営によって駒の色が違います。これはこのあと紹介する駒も同様です。これらの白黒の駒を「一生駒」といいます。一生ものなんだね。
・「角」みたいな駒:指弾細工師(しだんざいくし)

マス目に沿って斜め四方向にどこまでも進める駒です。シンプルなバツ印のデザインです。
「指弾細工師」というのは、自己に批判的な姿勢を取る、精神の一部分のことです。極端に規範的で、他者から植え付けられた価値観を優先して意見を出してきます。
何を言っているのかわからないという人は、刑事裁判でいう検察的な人だと思ってもらえればいいです。
・「飛車」みたいな駒:視情守(しじょうもり)

上下左右四方向にどこまでも進める駒です。これも動き通りの十字のデザインです。
「視情守」というのは、指弾細工師とは対称的に、自己をひたすら肯定する精神の一部分です。底抜けに優しくて甘いです。
刑事裁判でいう弁護士だと思ってください。
・よくわからない駒:死生判官(しせいほうがん)

斜め四方向と前後二方向に進める駒です。後ろには二マス進めます。
日の丸みたいな模様が目印です。※政治的意図は含まれていません
指弾細工師と視情守をまとめる存在であり、精神全体を代表する立場です。弱虫なので、逃げ足は速いです。私に限った話かもしれないけど。
・「王」みたいな駒:拿楽(だらか)

周囲八方向に進める駒です。まっさらな見た目。それこそが王の印。
「拿楽」とは端的に「身体」を意味します。サンスクリット語「dalaka」に由来します。もちろん嘘です。
駒の、数と配置は?💢
こちらをご覧ください。

一回見ただけで理解するのは厳しいと思いますが、ひとまずなんとなくの分布だけ分かっていただければ大丈夫です。
ちなみに鋭い方はここで、「黒と白の丸いやつは何だ?」と思われるかもしれません。というか思ってください。思うまで見てください。目を離さないでください。
思ったら次へ進みます。
思いましたね?
さて、ここからが重要です。
この黒丸と白丸は、「条理石(じょうりせき)」です。ターン数に応じて、一定のインターバルで盤上を動く、第三勢力です。
この条理石は、1から4の数字に対応した動きをもっています。そしてその数字は、機械的な乱数発生装置や専用のサイコロによって、ランダムに決定されます。
つまり、「運」なのです。
この世界は、我々には操作できない不条理さによって動作しています。
その不条理さこそが、むしろ唯一の秩序といってもいいでしょう。
条理石は、それを体現する存在なのです。

それから、鋭い方はまだ「盤面の真ん中らへんにある、黒と白の四角い枠は何だ?」と思っているかもしれません。思ってください。目を離すな。
これは、「楽園」です。黒と白の陣営ごとに、異なった位置に楽園が設定されています。楽園の場所は人それぞれなのです。楽園についてはこのあと詳しく説明します。
また、「真ん中の黒い棒みたいなやつは何だ?」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、今は気にしないでください。目を離せ。
ゲームの勝利条件
このゲームにおける勝利条件は「拿捕」「解放」「救済」の三つです。
・拿捕(だほ)

相手の「拿楽(だらか)」を取る勝ち方です。いちばん将棋チックな勝ち方ですが、将棋と異なるのは、相手の拿楽が条理石に巻き込まれても(「失拿(しつだ)」)こちらの勝利となる点です。将棋に慣れている方は注意してください。
とにかく相手の拿楽がなくなると勝ちということです。命あっての物種ですからね。
あくまで「拿捕」ですから、殺すわけではありません。とはいえ品のない勝ち方ではあると思いますよ、私は。
(というか、別に将棋においても殺しているわけではないことに今気付きました。でも戦がモチーフだから。用いているから。ねえ。笑えよ。)
・解放

自分の拿楽(だらか)を、対応する楽園に入れる勝ち方です。国際三人将棋のやつです。ただし楽園はお互いにとってすこし奥のほうに位置しているので注意が必要です。
また、国際三人将棋とは違い、楽園のマスに相手の駒が利いていても拿楽を置くことができます。つまり楽園が相手の睨みの下にあっても勝ち逃げできるということです。国際三人将棋に慣れている方は注意してください。
・救済

自分の「死生判官(しせいほうがん)」を、対応する色の条理石に取らせる勝ち方です。
条理石はランダムに動き、どの駒でも取ることができないので、条理石がこちらの死生判官のところに来てくれるのを待つ必要があります。
なんでこんなややこしい勝ち方があるのかというと、精神の救済はとても重要なことだからです。もちろんゲームにおいてではなく、生きることにおいて。(分からないという人は、今すぐに南の方角を向いて、遠くにある見えない星のことを想ってください。想い終えたら、先に進んでください。)
人生とは違って、救済されたらそこでクリアなので、人生に慣れている方は注意してください。
ゲームの進行
私将棋では、プレイヤーは「かみやる」と「かいら」に分かれます。
「かみやる」は虚構、精神、陰鬱さ等々、いろいろな意味を持つ言葉です。黒い駒を用います。
「かいら」はかみやるに対して、事実、肉体、躁狂を意味する言葉です。白い駒を用います。
かみやるとかいら、どちらが先手でも構いません。交互に一手ずつ指していき、決着がつくまでそれを続けます。
ただし、八手ごとに条理石を動かすターンが入ります。この時、プレイヤーのどちらかがコンピュータやサイコロを用いて乱数を生成し、出た目に応じて条理石を動かします。
ちなみに条理石に取られた駒は、どこへともなく散っていきます。そういう定めなのです。(分からないという人は、クラシックギターを背負って海辺に行き、砂に木の枝で「分からない」と書いてください。書いた文字が波に消されるのを確認したら、先へ進んでください。)
用語について・ルールまとめ


テストプレイを重ねるうちに大量の用語が発生したので、画像にまとめました(保存or別タブで開いておくことを推奨します)。
「双極棋」というのは、私将棋の名前です。「私将棋」のほうが分かりやすいと思うので、今後も一応その呼び方を採用します。
ついでにこれまで説明したルールについてもまとめたので、分からない人は読んでおいてください。めんどくさいという人は、窓から青色の旗を掲げて、双眼鏡で付近の建物をよく観察してください。ひととおり観察しきったら、先へ進んでください。
ブラウザで遊べるようにするよ
さて、私将棋のイメージが完成してきたところで、ここからは実際の対局の流れを説明したいところなのですが、今のままでは将棋の駒を代用するほかなく、ビジュアル的にもややこしくなってしまいます。
そこで、まずはプログラム上で私将棋を実装して公開することで、みなさんに私将棋のイメージをよりダイレクトに理解していただこうと思います。
といっても、私はプログラミングに通暁しているわけではありません。ここでは教育用の視覚的なプログラミング言語である「Scratch」を使用して、簡易的な私将棋プログラムを制作します。
(本当はC#を勉強してUnityで作ろうと思ったのですが、宗教上の理由でUnityを学ぶことができませんでした。やむを得ず。許せよ。許せないという人は、私にUnityを教えてください。教えたら、先へ進んでください。)
Scratchでは、難しい英語の文字列を書かなくてもプログラミングができます。また必要な操作は全てウェブ上で完結するので、ややこしいインストールの手順を踏む必要もありません。つまりはめっちゃ簡単ということです!
その代わり自由度にも限界があるのですが、やれるだけやってみようよ。ベストを尽くさない理由はありません。
Scratchについて、お話しします
私将棋をつくる上では少々複雑な説明が要るので、ひとまずScratchの基本的な使い方について軽くお話しします。

Scratchのサイトにアクセスして、プロジェクトを作ります。

コードを作る画面では、左側にブロックがたくさん並んでいます。このブロックを組み合わせて命令を作り、右上の旗マークを押すと、猫がいる画面上で命令が実行されます。
文字を打つ代わりにブロックを組み立てることでプログラミングができるというわけです。
そういうわけで、完成したものがこちらになります。(https://scratch.mit.edu/projects/1057382009/)

緑の旗マークを押すとプログラムが実行されます。
対面対局モード、オンライン対局モード(Scratchの仕様上、アカウントがScratcherにならないと使えません。これはScratchで作品を投稿したりしないとなれないやつです、ごめんね)、そしてAI対局モードがあります。
ちなみにAIはめちゃくちゃ弱いです。数え切れないほどの夜を犠牲にして作ったのに、笑っちゃうくらいへなちょこな出来になりました。何度もおんなじ手を行ったり来たりします。やさしくしてね。
詳しい制作過程について説明するとばかみたいに長くなる上にややこしいアルゴリズムの解説が必要なので、断腸の思いで割愛します。

ざっくり説明すると、駒とかオプションボタンの見た目を作って、それを配置して、プレイヤーがそれをクリックするごとに内部データを調整して駒などのオブジェクト(スプライト)を動かしています。
AIにはミニマックス法というアルゴリズムを採用しています。これは独自の盤面採点基準を元に、なるべく点の高い手を選ぶというやつです。(付け焼き刃の知識なので曖昧です)
右上の「中を見る」をクリックすると、文字通りプログラムの中を見ることができるので、興味がある方は覗いてみてください。

バグ報告は毎年4月1日に限り受け付けます。そして全部虚偽情報としてスルーしますので、よろしくお願いします。もちろん嘘です。
盤と駒を作ろう
コンピュータ上で私将棋が遊べるようになったところで、ここからは物理的に私将棋盤と駒を作っていきます。やっぱり実体がないとね。作った感じがしないよね。
とりあえずホームセンターでそれらしい木材を購入しました。

ホームセンターの店員さんに訊いたら、「将棋盤に向いてる木材は売ってないですね」とのことだったので、サイズだけで決めました。
盤用の木材は、二枚の縦長の板を横に並べることで正方形にしています。塗装とかが済んだ後に、蝶番で繋げるつもりです。
駒は、細長い木材を四角く切り落として作ります。

この作業をしていた部屋が父の寝室の隣だったのですが、通りかかった父に「木くず片付けといてね」と言われました。
これによって、私が「木くずを片付けない人間」だと思われていることが発覚しました。今まで自分のことを、「木くずを片付ける人間」だと信じて疑わなかったので、認識の違いにショックを受けたことは言うまでもありません。

切り出した駒は、形を整えるためにヤスリがけをしていきます。

駒の数は大体30個です。将棋の駒よりは少ないので楽ちんですね。
替わり駒は、向きが分かりやすいように下部を切り落として五角形にします。
将棋の駒も五角形なので、多分それと同じ道を辿っています。あの形は合理的なんだね。

これは、条理石の動きを決めるために用いる、専用のサイコロというか回す方のコマです。駒用の木材を切り落として成形したものに、切った竹串を接着しました。詳しい使用方法については後述します。まあ回すだけですが。

ここからは、塗装をしていきます。
いろいろ調べた結果、とりあえずホームセンターで売られていたDIY用の塗料を使ってみるのがよさそうだという結論に至りました。無難な人生。

先に下塗り用の塗料を塗って乾かしてから、色をつけていきます。そうしないと色乗りが悪くなるみたいです。めんどくさい。窓から青色の旗を掲げてしまおうかな。

下地の色を塗ったら、駒の模様も描いていきます。最後に仕上げ用のコーティング剤を塗ったら完了です。(写真はありませんでした。許せよ。)
鋭い方はここで「白と黒の丸いのはどうやって作ったんだ?」と思われるかもしれません。
もっと鋭い方はここで「百均で買った、パン生地とか伸ばす棒を切り落として円柱形にしたんだな」と気付かれているでしょう。
なのでいちいち説明はしません。

盤も塗装していきます。赤い塗料をばかみたいに重ね塗りした後、マス目を描いていきます。
将棋盤のマス目は刀に墨を付けて描くらしいですが、家のあちこちを探しても刀が見つからなかったので、マスキングテープを利用して地道に描きます。
鋭い方ならここで「盤の中央にある白黒の小さな山は、さっき出てきたコマを塗装して、あらかじめ盤の中央に作っておいた溝に差し込んでいるんだな」と気付かれているはずです。
そういう勘の良さが、今後は必要になりますからね。



こんな感じで、あらかた塗装が完了しました。あとは盤の裏側に蝶番をつけるだけです。

つけました。釘を打つのとか中学の技術の授業以来です。難しい。そして音がでかい。寝室の隣でやっていい作業ではない。
鋭い方はここで「盤の両端についている突起のようなものは、蝶番の厚みによって盤の中央がすこし高くなって傾斜がついてしまうことを防ぐ役割を持っているんだな」と気付いているはずです。
さらに鋭い方なら「突起を互い違いの位置に付けることによって、盤を畳んだときに不都合のないようにしているんだな」と瞬時に理解できたことでしょう。
何を言っているのかわからないという人は、この記事を最初から読み直してください。

そういうことで無事に完成しました、私将棋。

ノコギリなどの道具は、日曜大工だった祖父が持っていたものを拝借しました。おじいちゃん、見てますか。

ここで、先ほど登場した乱数発生コマについて説明します。
上のように、各辺に1から4の数字を割り振ったコマを回すことで、ある程度ランダムに条理石の動きを決めることができるというわけです。
鋭い方はここで「このコマは造りが荒いから出目が偏ってしまうな」と感付かれていることでしょう。まさにその通りです。
試しに400回ほどコマを回して調査したところ、出目の確率が最大で2倍異なることがわかりました。
鋭い方はそこで「でもたしか黒と白の条理石は点対称に動くはずだから、どちらかが極端に不利になるようなことはないだろうな」というところまで考えられるはずです。
なのでわざわざ説明はしません。




実際に対局してみた
モノが完成したので、友人と対局します。わくわく。
今回は二人の友人に協力してもらいました。忙しいだろうに私みたいな引きこもりと日程調整してくれて頭が上がらない。
協力者①:ポスチくん(ボードゲームサークル所属・将棋が強い)

協力者②:五所川原くん(ダジャレ好き・塾講師のバイトをしている)

私①:せうりく(制作者・引きこもり)

二人には事前にルールをひととおり説明して、何度かデモンストレーションを行っています。準備はバッチリの模様です。
今回は総当たり戦で優勝者を決めます。
せっかくなので、対局を盛り上げるために、勝者に与えられるタイトルの称号を設定しました。
その名も……

そう、勝った者が、このゲームの制作者になるのです。
制作者が強いのは当然のこと。つまり、強いヤツが制作者。
絶対に負けられない戦いが、始まります。
(ここからは、用語集・ルールまとめ画像を確認しながらご覧頂くと、より楽しめます!)
第一対局:五所川原くん vs せうりく
4年にわたる会議の末、五所川原くんがかみやる:黒(先手)、私がかいら:白(後手)に決まりました。
持ち時間は両者20分、それ以降は一手につき15秒以内で指すルールです。



互いに4手指すごとに、中央の独楽を回します。


上に来た数字が出目になります。今回は3が出ました。

出目にしたがって条理石を動かします。
ここから、お互いの作戦がはっきりしてきました。

五所川原くんは、死生判官を条理石に取らせる「救済あがり」を目指しています。
一方私は、その隙に拿楽を前に進め、楽園に入れる「解放あがり」を狙っています。
楽園の枠を盤に描き忘れた(あほ)ので、ここでもう一度確認しておきましょう。

中央の賽山を飛び越えるような動きは「登頂」という禁じ手にあたるので、楽園に入るためには、賽山を横から迂回するように進む必要があります。



条理石が動いて、五所川原くんの救済あがりにリーチがかかりました。
死生判官を動かして条理石に取らせるようなことはできないので、ここからは条理石が死生判官に向かって動いてくれるのを待つことになります。
この後私は付近の畢刺(灰色の顔の駒)を使って死生判官を後退させましたが、次の賽回しで条理石が動き、またもやリーチがかかります。


「間に合え……!」
五所川原くんは救済あがりにリーチがかかっていますが、私の拿楽も楽園のとなりまで来ているので、油断できません。
上の写真では、前に出てきた私の拿楽を、五所川原くんが懐和(かいな:黒くて点々がついている駒)で牽制して後退を迫っています。
これは次の賽回しのターンまでの時間稼ぎです。
このままあと数手もすれば私の拿楽は楽園に入ってしまいますが、それよりまえに賽回しのターンで「4」の目を出すことができれば、五所川原くんの救済あがりが決まります。

「俺が制作者、俺が制作者……」
とうとう私の拿楽は楽園に入らぬまま、賽回しのターンがやってきました。
ここで「4」が出ると、黒の条理石が同色の死生判官を取って救済あがりが成立し、五所川原くんの勝利。いっぽうでそれ以外の目が出ると、私の解放あがりが確実になりますが……?



「4」だ!!!!!!!!



「……」
「負けた……?」
「制作者の私が……? 初戦から……?」
戸惑う私を尻目に、五所川原くんはスーツ姿で歓喜しています。

「制作者の座は頂きますよ」
もし次の対局で私がポスチくんに敗北すれば、私の二敗及び制作者の更迭が決まります。
後がない状況で、私は第二対局に臨みました。
第二対局:ポスチくん vs せうりく

「一回勝ってるからな~」
そう、ポスチくんは数日前に私とデモンストレーションで3時間対局をし、持ち前の将棋力で私をボコボコに打ち負かしています。
将棋がやりたくないからこのゲームを作ったというのに、将棋力で負けてしまっては意味がありません。
制作者として、このゲームが将棋ではないということを示してみせましょう!!!


厳正なる野球拳の結果、ポスチくんがかみやる:黒(先手)、私がかいら:白(後手)に決まりました。
上の盤面では、お互いに拿楽を前に出して楽園に進もうとしていますが、条理石が中央付近にあるため、駒がぎゅうぎゅう詰めになっています。
そしてこの後、条理石はさらに中央に移動します。


「渦だ~!!!(用語を使えて嬉しい)」
「渦(うず)」と呼ばれるこの状態になってしまうと、お互いかなりやりづらいです。
2つの条理石によって盤面の中央は完全にブロックされています。普段なら駒が激突する舞台になりやすい中央付近が封鎖されることによって、戦いは一時膠着状態に。
この後、渦はもとの方向に解消され、死生判官を使った救済あがりがしやすい状況になりました。

ここで、私の死生判官が白の条理石に隣接し、救済あがりにリーチがかかりました。
「4」が出れば、私の勝利になりますが……?


そう上手くはいきません。そして……

「時間がない!!!!」
私の持ち時間が底をつきました。ここまで40分ほど時間が経過しており、お互いに秒読み(15秒)に入ります。
ほぼノータイムで指していかないとあっという間に時間切れになってしまうので、かなり焦ります。
この後、ポスチくんが持ち駒の畢刺を盤面の中央に打ちます。



「あーわかんねえ!!!!」
私は打たれた駒をこちらの畢刺で取りますが……






「勝った~!」
拿楽が、取られた。
拿楽は将棋でいう「王」。失ったら負けです。
秒読みに焦るあまり、拿楽が相手の駒の射程圏内に入ったことを認識できませんでした。

「負けた……?」
「制作者の私が……? 将棋力で……?」
否、私はもう制作者ではありません。
これは総当たり戦。最も勝利数の多い者が優勝し、制作者の称号を手にします。
私はこの時点で全敗しています。
つまり、私は制作者の肩書きを失い、ポスチくんと五所川原くんのどちらかが制作者になることが決定したのです。



「……なんだよこのクソゲー、誰が作ったんだよ💢」
いち早く勝負から降りることになった私は、悪態をつきながら最終決戦を傍観することにしました。
最終対局:五所川原くん vs ポスチくん

桃鉄99年をプレイした結果、五所川原くんがかみやる:黒(先手)、ポスチくんがかいら:白(後手)に決定しました。

「にしても天気いいな~」
傷心中の私は、対局そっちのけで辺りの風景を写真に収めることにしました。




よけいな写真を撮っていたら、いつの間にか盤面が進んでいました。

いくつかの駒が条理石に取られて墓地へ送られています。
条理石は互いに反対の色の方面に位置しており、今回は死生判官の出る幕ではなさそうです。

ポスチくんのいくつかの駒が、五所川原くんの陣地に迫りました。
いっぽうポスチくんの陣地の方でも五所川原くんの駒が進んできており、お互いにばちばちやり合っている状況です。


「なんか詰めそう」

「なんか詰みそう」

(これ詰んでるな……)


実はここで、ポスチくんには一発で五所川原くんの拿楽を詰ませることのできる手があります。皆さんは分かりますか?
ヒントは、ポスチくんの持ち駒です。
正解は……

写真の位置に迎資(げいし:グリコのポージングみたいな駒)を打つことで、黒の拿楽は完全に詰みます。次の手でどう動かれても、ポスチくんは拿楽を取ることができるのです。

しかしポスチくんは……

少し違う位置に迎資を打ちました。
この後、五所川原くんは粘りに粘ります。

「さっき詰んでたな……」

「さっき詰んでたんだけどな……」

「さっき詰んでたんだけどな……」
三人が口々にそう呟くなか、五所川原くんが粘り続けたことによって状況が変化しました。

ポスチくんが持ち駒を使い切り、五所川原くんにチャンスが訪れたその時。

「ごめん、用事あるから、あとは二人でやっといて!」
ポスチくんは忙しい大学生です。今日も予定の合間を縫って来てくれたのですが、どうやら時間が来てしまったようです。

「残念だね~(さっき詰んでたんだけどな……)」

「任せろ!(さっき詰んでたんだけどな……)」
やむなく、ここからは私がポスチくんの代わりに五所川原くんの相手をすることに。
しかしここで、ある事実が発覚します。

「あれ、これ五所川原の解放あがり確定してない?」
(Tips:五所川原くんの一人称は「五所川原」)

「え、ほんと?」
現在の盤面をよく観察してみると……






この時点で、ポスチくん側が五所川原くんの拿楽の楽園入りを防ぐことは不可能になります。ここからどう指しても……

拿楽が楽園に入ってしまいます。
ここが国際三人将棋と違う点で、上のように楽園のマスに相手の駒(この場合は白の拿楽)が利いていても、拿楽を楽園に置いて解放あがりをすることができます。
上に示した以外の場合においても、現在の盤面からポスチくん側がどう指しても五所川原くんの解放あがりを防ぐことができないと判明しました。
ということで、なんと五所川原くんの逆転勝利が決まりました!!



「やった~!!!!」

「おめでとう……君が制作者だ……(さっき詰んでたんだけどな……)」
ということで、私将棋の制作者が五所川原くんに決まりました。
私は運でも将棋力でも負け、ついには無名のプレイヤーになってしまいました。

「将棋から逃げるとこうなるのか……空しい……」
私は、祖父の部屋で見つけた後自室に保管していた将棋盤と駒を、元の場所へ戻しに行きました。

(ガサゴソ……)
「おや、これは……?」


「……」

「囲碁、勉強するか……」
おわりに・祖父へ
私将棋をめぐる探求は、ひとまずここらで終わりにしようと思います。
もともとこの私将棋は、記事にまとめるつもりはありませんでした。それはひとえに、これが祖父へ捧げるためのプロジェクトであったためです。
しかし、友人らの協力もあって今回こうして一連の創作をまとめることができ、とても満足しています。本当にありがとう。
おじいちゃん。
僕は大丈夫です。
いつかまた、将棋を指しましょう。
その頃には、僕も少しは上達していると思います。
P.S. 押し入れにあったビデオは見てもいいですか?
いいなと思ったら応援しよう!
勘弁してください