未来のwell-beingシンポジウム in 紫波を終えて
関西へルスケアサイエンスインフォマティクスの龍岡久登です。今回、公益財団法人トヨタ財団50周年記念助成<50年後の人間社会を展望する>のプログラムである『デジタル技術に支えられるコミュニティおよび循環で維持される未来の持続可能な地域医療-健康モデルの探索』のキックオフシンポジウムを『未来のwell-beingシンポジウム in 紫波』と題して2025年8月10日に岩手県紫波町で開催しました。


本プロジェクトは複数領域の研究者・事業者、および自治体がクロスボーダーで行うプロジェクトを想定しているため、プロジェクトの早期に参加者を集めたディスカッションを行うことが重要と考え、シンポジウムを開催することとなりました。本シンポジウムは龍岡、坪谷氏などで構成される紫波町シンポジウム実行委員会と、岩手県紫波町の共催イベントとして開催されました。
プロジェクトの概要については下記のnoteに解説をしています。
紫波町地域健康共創協定の締結
今回のプロジェクト開始にあたって、岩手県紫波町、一般社団法人関西へルスケアサイエンスインフォマティクス、医療法人社団やまと、一般社団法人みんなの健康らぼ、一般社団法人くらしの研究室、国立大学法人京都大学(研究担当者:大学院医学研究科社会疫学分野 教授 兼 社会的インパクト評価学講座 運営委員長 近藤尚己)、国立大学法人秋田大学(大学院医学系研究科 医学専攻 社会環境医学系 先進デジタル医学・医療教育学講座 特任教授 及川沙耶佳)の間で「紫波町地域健康共創協定」を締結しました。

紫波町長 熊谷泉 – 地域健康モデルへの期待と背景
紫波町長の熊谷泉氏は、今回の協定締結とシンポジウム開催に感謝を表明し、高齢化が進む紫波町の現状に触れました。従来から地域では坪谷氏らが「みんらぼ」や星氏らが「畑の保健室」などで活躍してきたことに言及しつつ、現在の公的な保険医療制度だけに頼っていては制度維持が危ういとの問題意識を共有しました。熊谷氏は「皆で健康を考えウェルビーイングな社会を創る」ことの重要性を強調し、本協定を契機に紫波町で未来志向のウェルビーイングの取り組みが形となり進展することへ期待を示しました。京都から参加した龍岡氏や、秋田大学の及川氏の来訪にも謝意を述べると共に、「皆さんが一緒に何を考えているのか学びたい」と述べ、地域住民と関係者が協働する意欲を表明しました。
シンポジウム内容の紹介
50年後の人間社会を考えるというテーマに対して、「社会課題」および「テクノロジー」という2つの軸からの検討を行うにあたり、医学、公衆衛生学、福祉、工学、情報学、デザインの領域から研究者や実践者を選び参画を呼びかけました。co-PIのつぼんぬと一緒に参加者一人ずつとディスカッションをしながら、参加者同士が一同に会するシンポジウムの構想を練り企画しました。

以下にシンポジウムの主な内容についてご紹介します。
一般社団法人関西ヘルスケアサイエンスインフォマティクス代表理事 龍岡久登 – プロジェクト概要とデジタル技術への展望

はじめに私から、紫波町など7者で締結した協定の意義を述べました。トヨタ財団50周年記念の助成テーマ「50年後の人間社会を展望する」に本プロジェクトが採択された経緯に触れ、「50年後の医療・健康がより良いものになるよう誠心誠意取り組む」と決意を述べました。プロジェクト名にもある「デジタル技術に支えられるコミュニティと循環による持続可能な地域医療健康モデル」の探索が目的だと紹介し、自身のバックグラウンドにも触れました。京都出身で臨床医として内科および糖尿病診療に7年間従事し、その後大学院博士課程に進学にAIを用いた研究、現在はエンジニアとして社会課題解決のシステムづくりに関わっていると自己紹介しました。
その中で 「明日の社会を良くしたい」というライフテーマを掲げ、医師・研究者・エンジニアとしての経歴を通じて感じた日本社会の課題にも言及しました。日本財団の調査で日本の若者は中国やインドに比べて将来への期待が極端に低いと紹介し、漠然と「日本が明日良くなる」という希望が足りないのではないかと問題提起しました。そして本助成テーマを受け、「社会課題(健康・貧困など)とテクノロジーを組み合わせて50年後を考える」という2軸で計画書を作成したと説明しました。
さらに、トヨタ財団から50年に一度のプログラムに採択されたことに触れつつ、本プロジェクトのキックオフとして紫波町でシンポジウムを開催した経緯を述べました。プロジェクトの中心メンバーは私龍岡自身(デジタル領域)、坪谷氏(紫波町でのコミュニティ活動デザイン)、田上氏(循環型モデル)であり、加えて秋田大学の及川沙耶佳教授、京都大学の近藤尚己教授がスーパーバイザーとして参加し「異分野の研究者の交流」が図られていると紹介しました。最後に「技術は社会を良くし課題を解決するためのもの」との信念を述べ、技術によって希望を生み次世代にバトンを渡したいと締めくくりました。
具体的な技術動向としては、AIの進歩に触れました。2013年にはAIで消える職業予測で単純労働がなくなると言われていましたが、コロナ禍と生成AIの発展で「ホワイトカラーのクリエイティブ職がむしろAIに置き換えられつつある」という予想外の展開が起きていると指摘しました。実際2025年の現状では、文章作成やコンサル等の仕事がAIに代替される方向にあり、2013年の予測とは逆転していると述べています。私自身も言語AIの研究に携わり、GPTが2.5などの未熟な時期から進歩を間近で見てきた経験に触れつつ、群馬大学と共同で健康相談AIの研究や、京都・岐阜大学と人間と動物の電子カルテを読ませ疾病を翻訳するAI開発などに取り組んでいることを紹介しました。また近年はブロックチェーン技術にも注目し、紫波町で行われているコミュニティ活動を発展させたヘルスケア・社会的処方をテーマとしたDAO(自立分散組織)について京都の企業Netsujoと開発を進めていると述べました。
最後に、本プロジェクトではデジタル技術の側面からまずプロジェクトを展開したいとし、AI時代に向き合う姿勢を示しました。自らもプロジェクト期間2年間で全力を尽くすと誓い、参加者や地域の関係者に継続的な支援と協力を呼びかけました。
一般社団法人みんなの健康らぼ 代表理事 坪谷透 - みんらぼ・つぼんぬが思い描くデジタルとコラボした未来の医療

一般社団法人みんなの健康らぼ(みんらぼ)の発表では、代表理事(坪谷氏)が「デジタルと協働した未来の医療」をテーマに、自団体の活動を紹介しました。みんらぼは民間版の公衆衛生学教室のような活動を行っており、正しい公衆衛生・医療の知見を社会に楽しく普及させて社会をより良くすることを目指しています。具体的には、研究・教育、地域活動、ネットワーキング、コミュニティづくり、寺子屋授業など多岐にわたる活動を展開し、その報告書を図書館やふるさと納税経由で入手できることも紹介されました。
みんらぼが関与する「コミュニティナース」の概念と社会的処方についても説明がありました。コミュニティナースとは「病院や行政の外で、地域住民が気軽に相談できる存在」であり、必ずしも看護師資格に限定されないものの、多くは看護師が担う役割です。「コミュニティ畑」などで活躍する星真土香氏(後述)の活動を高く評価しつつ、その継続には資金確保が極めて困難という課題があると指摘しました。
社会的処方については、イギリス発祥の取り組みで「人とのつながりを処方することで健康・ウェルビーイングの改善を目指す」方法だと解説しました。これは薬の代わりに社会参加活動を処方し、孤立や軽度の精神疾患に効果をあげており、モデル地区では救急外来受診や入院が減少、医療費の大幅削減も報告されていると述べています。イギリスでは一人で好きなことをするのもOKとされる柔軟な考えで、日本でもケアマネージャーやコミュニティナースが担い手となれば有効ではないかとの見解を示しました。さらに社会的処方のエビデンスにも触れ、「社会とのつながりの欠如は喫煙や過度の飲酒以上に死亡リスクに影響する」との研究結果を紹介しました。発表者自身が2019年にまとめた社会的処方の文献レビューや、Orange Cross社の報告書を情報源として挙げ、自身のnote(オンライン記事)の記事についても触れました。
一方で、社会的意義が深い活動ほど資金が集まらず継続困難という現実も語られました。「自分たちの活動も財政的にかなり厳しい状況」であり、発表者はスラムダンク世代の名言「あきらめたらそこで試合終了」を引用しつつ諦めず工夫する決意を示しました。具体策として、収入源の多元化や、大学教授など社会的権威とコラボして活動を評価してもらい社会の信用を得ること、エビデンスだけでなく共感を広げ仲間を増やすことで活動基盤を強化することが提案されました。特に「エビデンスが分からなくても何か良さそうだと感じる仲間」が増えることで資金も集まるとの考えを示し、教授陣や参加者に協力を呼びかけました。
発表者は、活動が広がればそれ自体が社会の受け皿となり、将来的に国の制度になる可能性もあると展望しました。コミュニティナースや社会的処方が普及し、その結果として医療費削減につながるのが理想だとし、「めでたしめでたしの未来」を思い描いて活動していると述べました。
活動資金確保の工夫としては、ふるさと納税を活用したグッズ提供も紹介されました。みんらぼ制作のカードゲーム「みんらぼカード」や活動報告書をふるさと納税の返礼品として提供し、収入の多角化に努めていること、また協働者の星氏にも自主財源を得るよう発破をかけてnoteでの情報発信やコンテンツ作成に取り組んでもらった経緯を語りました。
また、ソーシャルインパクトボンド(SIB)という社会事業への成果連動型資金調達にも触れました。図を示しつつ説明された内容では、従来の医療費を社会的処方などで代替し、医療費が減った分の一部をコミュニティナースの給与・活動費などに充ててもなお利益が出れば、国としても採算が取れるため医療保険財源から資金投入する理屈が成り立つと述べました。政府も無視できない流れであり(実際に自民党の骨太方針2025にもSIBが盛り込まれている)、政治の追い風もあるので何とか実現したいと新しい資金循環モデルへの挑戦意欲を語りました。
さらに発表者はユーモアを交えて「みんな、オラに元気と金を分けてくれ(ドラゴンボールの“元気玉”)」と呼びかけつつ、同じくプロジェクト参加者の及川教授(秋田大学)や、近藤教授(京都大学)とのエピソードを紹介しました。
最後に「みんらぼカード」を紹介し、これは人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)を楽しく進めるためのカードゲームであると説明しました。「もしも余命2ヶ月の宣告を受けたら…」という設定で、自分にとって大切なことを具体化し人生を充実させる対話を行う内容で、厚労省が2018年に人生会議という愛称を定め普及させているACPの趣旨に沿ったツールです。ゲームでは5つのステップ(1.大切にしたいことを考える、2.もしもの時に思いを伝えてくれる人を選ぶ、3.医師に相談、4.希望する医療やケアについて話し合う、5.書き留めて共有)を疑似体験し、話し合いと振り返りを繰り返すことで、前もって意思決定を行うACPのプロセスを支援します。発表者はこのカードゲームを通じて学生や地域住民にも人生会議の大切さを伝えており、「人生会議=もしもの時に備え、望む医療・ケアを前もって考え共有する取組み」との定義も示しました。
以上、みんなの健康らぼからはコミュニティにおける健康増進の取り組みと、その継続に向けた資金・仕組みづくりの挑戦が詳述されました。発表者は「楽しく・共感を広げながら科学的根拠も追求する」姿勢で活動しており、参加者にも積極的な関与と支援を求めて講演を締めくくりました。
医療法人社団やまと 理事長 田上佑輔 – 地域循環型医療モデルと人材育成(ビデオメッセージ)

田上氏(医療法人社団やまと 理事長)のビデオメッセージでは、宮城県登米市を拠点に地域医療を展開してきた経験から、地方における循環型医療モデルの取り組みが語られました。田上氏は都市部で自身のアイデンティティに悩んでいた30代の頃、東日本大震災を契機に地方に飛び出した経緯を紹介し、地方では人口が少ない分「自分の役割」が明確になりリーダーシップを発揮しやすかったと振り返りました。地方での経験を通じ、若いうちに大組織で力を蓄えた後、一歩外に出て地方や海外、異分野に挑戦することの大きな意義を感じたとも述べています。
田上氏は10年近く地方に住み、様々な「試せる人たち」と繋がれたことを良い経験と語りつつ、「最終的には住むこと自体が目標になるかもしれない」と地方定住の価値にも触れました。また、自身が好きな場所として「図書館」を紹介し、子どもたちがマインクラフトで遊ぶ風景や川沿いで人々が憩う様子を示しながら、大学や図書館がある開かれた場が地方にも必要だと感じたと述べました。紫波町も人が集まれる場づくりが重要であり、どうしても都市に人が集まる傾向はあるものの、「地方を楽しむことはもっとできるはず」と地方生活の魅力を語りました。
さらに、田上氏は「人は人から学ぶ」ことの大切さを強調しました。自らがプロジェクトに参加させてもらっていることに感謝を示しつつ、オンラインより現場で直接話す方が好きなタイプなので「次回はぜひイベントに参加したい」と意欲を見せました。若手医師の育成にも触れ、「単に働いてもらうのではなく成長や自己実現を実感させることが重要」との信念で医師育成プログラムを行っていること、医師が診療だけでなく地域に溶け込むコミュニティづくりにも関与するのが自分たちの特徴だと語りました。
田上氏の取り組みは、震災後に登米市で開始した一つの診療所を、現在では宮城県内外(宮城・福島・東京・神奈川・高知・福岡など)に十数か所展開するまでに拡大させた地域医療ネットワークです。ビデオでは、そうした急成長を支えたポイントとして「医師が働きやすいプラットフォームを作り、多様な医師が働ける仕組みを整えたこと」を挙げています。田上氏自身は本プロジェクトの中心メンバーの一人であり、彼のビデオメッセージからは「地域内で人材と医療資源を循環させるモデル」への熱意と、地方で挑戦する意義が伝わってきました。
ビデオメッセージの最後に田上氏は、紫波町のプロジェクト参加者に向け「今回はオンライン参加となったが、皆さんのお話を伺い多くを学んだ。次回はぜひ現地で共に議論したい」と結び、プロジェクトの成功と地域のウェルビーイング向上への期待を述べました。
一般社団法人くらしの研究室 代表理事 星真土香 – 「畑の保健室」による地域コミュニティと健康づくり

星真土香氏(一般社団法人くらしの研究室 代表理事)は、自ら「畑の星」「畑のまどか」と呼ばれる由来を紹介しつつ、紫波町古館地区で展開している「畑のコミュニティ活動」について発表しました。看護師として病院勤務を経た星氏は、2019年にコミュニティナースの講座を受講し、その後すぐ縁あって2020年より紫波町でコミュニティナース活動を開始しました。現在は仙台市の訪問診療で看護師として働きながら、「毎週大好きな紫波町に通っている」といい、地域への強い愛着を示しています。
星氏はまずコミュニティナース活動の概要を説明しました。コミュニティナースは2017年に始まった取り組みで、既存の医療機関の外で、暮らしの身近な場に存在し、住民と共に心身の健康増進に寄与する活動です。2024年2月末時点で、全国で1020名が講座を受講し、その約7割は保健師・看護師など医療資格者ですが、残りの参加者はそれぞれの経験や専門性を活かし「100人100通り」で実践していると紹介しました。岩手県では星氏が着任した2020年当時、受講修了者は自身を含め2名だけでしたが、現在では把握しきれないほど多くの岩手県内受講者が様々な取り組みを行っていると述べました。その一部を紹介すると、例えば盛岡市では看護師・保健師資格を持つ高杉さんが野菜たっぷりの弁当や惣菜を販売しながら地域の健康を見守る活動、矢巾町では民間企業勤務の川村さん(社会福祉士資格保持)が地域の誰もが集えるシェアリビングを開設し木曜ごとにイベントや生活相談を受け付けている活動などが挙げられました。また宮古市では病院の地域連携室で経験を積んだ方が「保健室」を開設し、大船渡市では医療福祉資格を持たない方が自身の経験と専門性を活かして性教育や防災のコミュニティナース活動を実践していることも紹介されました。星氏自身は2020年から紫波町で活動しています。
続いて星氏は紫波町の概要を説明しました。人口約3.3万人、高齢化率31.6%(2025年時点)であり、地理的には東西に広く北から古館駅・紫波中央駅・日詰駅の3駅がある交通利便性の高い町です。中央部の高齢化率は25~31%台に対し、東西の山間部では40~47%と地域差がある特徴も指摘しました。紫波町は米・モチ米・小麦・野菜・果物が豊富で、それらから作られる酒も含め「食が豊かで季節を感じられる魅力的な町」と語り、食を通じた季節感ある暮らしが営まれていると紹介しました。
星氏の活動拠点は「畑」と「台所」に象徴されます。古館駅西側にコミュニティ農園となる「畑」を設け、日詰駅東側の赤石公民館内に「くらしの保健室」と「畑の台所」を開設し、「畑から食卓まで」をテーマに住民と健康づくりに取り組んでいると説明しました。星氏は畑に名前をつけており、「畑で多くの人が交流し楽しいことや人と人とのご縁が生まれるように」との願いを込めて「畑多楽縁(はたらくえん)」と名付けたと述べています。この畑は毎週木曜日10時~15時に地域に開放しており、現在は夏季の暑さ対策で夕方開催に変更しているとのことです。
星氏は、この畑の活動において全国に広がる「くらしの保健室」の6つの機能すべてを畑と台所にも実装していると述べました。さらに2023年から独自に7つ目の機能として「共食(きょうしょく)」を加えていることも紹介しました。具体的な特徴としては、「健康相談」と「野菜づくり相談」の無料窓口を設けていること、安心できる居場所づくりに配慮していること、そして多世代がごちゃまぜに交流できる場を意識して開催している点を挙げました。これにより参加者同士の学び合い、多職種連携、ボランティアの集い、学生の育成の場にもなっていると述べています。畑では毎週木曜11時から約30分間、オレンジ色のベストを着たインストラクターによる「シルバーリハビリ体操」(高齢者向けのゆるやかな体操)も行われ、参加者の健康づくりに寄与しています。ある日の写真では、参加者同士で誕生日が近い方々に畑の花で花束を作りサプライズプレゼントをして記念撮影する等、コミュニティならではの心温まる交流も紹介されました。活動実績データとして、昨年は56回の畑開放日に延べ1711人が参加したことが示されました。参加者へのヒアリングでは、「人との交流」を求めて来る人が最も多く、次いで「学びの場として」、三番目に「ボランティアの場として」参加する人が多かったといいます。保健師による認知症講話、町内の小児科医がビニールハウス内で地域の大人へ子どもへの声掛け方法を教える様子が写真で紹介され、これらは地域住民への学びの機会となっていることが示されました。1年生の看護学生が3年前から毎年夏に畑に来て学んでいる姿があり、畑が学生の育成の場にもなっていると述べています。さらに様々な他職種の方々(町役場の認知症相談員・高齢者担当、福祉用具業者、子どもの居場所づくり関係者、紫波町・矢巾町の社協職員、民生委員、認知症の任意団体メンバー等)が畑に足を運び、地域の人と交流していることも紹介されました。
星氏は、人と人との緩やかなつながりが広がるネットワークを地図上に示し、こうした多様な方々が畑を支えていると説明しました。また、月に一度はこの方々が集まって「ふれあいミーティング」を開催し、情報交換や困りごとの相談、各自の活動アイデアを形にする場となっているとも述べました。この定例ミーティングによって、常日頃から顔見知りの関係を築いておくことで、星氏自身「困っている方を適切な場や人へ迅速かつ安心してつなげられている」と感じているといいます。また自身が地域で活動することで「ちょっと困った時に相談できる人がこんなにいる」という安心感を得ながら取り組めているとも述べ、地域における多職種ネットワークの力を強調しました。最近の動向として、紫波町で始まったふれあいミーティングが波及し、隣の矢巾町でも同様の取り組みがスタートしたことを紹介しました。
続いて星氏は7つ目の機能として設けた「共食(畑の台所)」について詳しく説明しました。畑で採れた野菜をみんなで調理して食べる「地域の食卓・畑の台所」は、2023年8月から月1回開催をスタートしました。この共食活動の目的は、孤食の解消、社会的孤立の軽減・予防、健康寿命の延伸、そして参加者一人ひとりのウェルビーイング向上です。調理中と食事中の写真を示しながら、これらの目的に向け現在取り組んでいると述べました。昨年(2024年)の畑の台所の利用者数は月1回・第2金曜開催で延べ746人に上り、多くの住民が参加しています。
畑の台所の特徴として、「つくり隊」と呼ばれるボランティア調理チームの存在があります。毎月10代~80代まで幅広い世代がつくり隊に参加し、栄養士、料理家、英語教師、子どもの居場所づくり関係者など職業も様々です。彼らは世代ごとの知識や経験を発揮して調理を担い、つくり隊内でも異世代交流や学び合いが生まれています。参加者からは「ここでは健康や介護の相談ができて心強い」との声も寄せられ、畑の台所が食を媒介とした相談支援の場にもなっていることが伺えます。提供される料理は畑の野菜をメインに使ったもので、その一例として今年5月には季節のヨモギを使った団子をみんなで作り味わった写真が紹介されました。また、畑の台所開催日に玄関先で産直野菜販売も行っており、地域住民が新鮮な野菜を購入できる工夫もしています。参加者から「もっと頻繁に開催してほしい」との声もあるものの、資金確保が難しく現状月1回の開催が精一杯であると星氏は率直に明かしました。そこで2025年からの対策として「畑の台所応援スポンサー」制度を立ち上げ、支援者を募り始めたといいます。登録したスポンサーには食事会に使える「お食事パスポート」を発行し、自分が来られない時は誰かに貸して代わりに参加してもらっても良いこととし、共食の推進を図る仕組みにしました。このスポンサー募集により、紫波町内外から応援が寄せられ始めており、8月からは紫波町のふるさと納税返礼品にも掲載される運びとなったと報告しました。星氏は「『#紫波町 #畑 #台所』で検索するとすぐ出ますので是非よろしくお願いします」とユーモアを交えて支援を呼びかけています。
星氏の発表終盤では時間が余ったため、と前置きして印象的なエピソードが共有されました。ビニールハウス内に掲示している黒板に「畑多楽縁は自然の精神安定剤です」と書き込みをしてくれた方がいたことに感動したと紹介し、その黒板の写真を(本人許可の上で)示しました。この言葉は畑の活動が参加者にとって心の安定剤のような場になっていることを端的に表しており、星氏自身も非常に嬉しく感じたと述べています。
最後に星氏は今回のシンポジウム登壇の縁に感謝し、「地域の皆さん全員が教育者」という言葉があったように、これからも地域の力を借りながら取り組みたい」と締め、会場から盛大な拍手が送られました。
株式会社studio-L 出野紀子 – No community No life

コミュニティデザインの視点から、studio-Lに所属する出野紀子氏が自身の仕事と取り組みを紹介しました。出野氏はCo-Minkanの普及活動(「Co-Minkan普及実行委員会」と称し、ローマ字の"Co-Minkan"を使った独自の造語で活動)も個人的に行っており、今回は「仕事としての活動の一つ」を紹介したいと述べました。彼女の職業はコミュニティデザインであり、世の中に存在する様々な課題(シャッター商店街の活性化、誰もいない公園、高齢化による地域の歪みなど)に対し、「みんなで一緒に考え、自分たちの望む生き方を実現するための場づくり」をしていると説明しました。
出野氏はまず、日本が直面する人口構造の歪みに触れました。子どもが少なく高齢者が元気に過ごせる時代となり人口バランスが崩れており、2020年時点で「若者2人で高齢者1人を支える」状況、さらに25年後にはそれすらも維持できないほどになると指摘しました。この人口の偏りによって、これまで作られてきた制度に綻びが生じ、「どうしよう?」という課題が山積していると述べました。また社会的孤立の問題にも触れ、それまでの発表で出てきた社会的処方や星氏の畑での「友達作り」の話など「山ほどある課題」の一例だと共感を示しました。
こうした課題は行政や医師など「誰か一人では解決できない時代」になっており、「みんなで一緒に考えること」が必要だと話しました。出野氏は、人々が自分の望む生き方を実現するために様々な取り組みを行っていると述べ、今日はその中のひとつである「ステイホームダイアリー」というプロジェクトを紹介しました。
ステイホームダイアリーは、コロナ禍に始まったユニークな試みです。出野氏は「コロナの時に都知事小池百合子氏が 'うちで過ごそう' と呼びかけていた」と振り返り、ちょうどその頃、出野氏自身は神奈川県藤沢市の介護予防事業に取り組んでいたが外出自粛が言われるようになりました。「家から出ないように」と言われ活動が制限される中で、「そうだ、ステイホームだから家でできることをやろう」と発想転換し、高齢者向けに交換日記を始めたと説明しました。この交換日記は3人1組で行う形式で、直接日記を回すのではなく市役所が仲介役となって日記帳を受け渡しする仕組みを採用しました。出野氏はまず「交換日記をやったことがある人?」と問いかけ、特に女性は経験者が多く、男性でも恋人と交換日記をした世代がいると話しました。交換日記には書きやすい工夫も凝らされました。バインダー式の日記帳に予め穴埋め形式の質問を用意し、参加者が答えを書き込めるようにしたのです。これは特に男性高齢者への配慮でした。女性は他人に日記を読まれる状況に比較的抵抗が少ない一方、男性は「何を書けばいいか分からない」「人に日記を読まれるなんて抵抗がある」などの傾向が強かったため、誰に見られても差し支えない質問形式にすることで心理的ハードルを下げました。こうした工夫により、参加者たちは質問の空欄を埋める形で気軽に日記を書けるようになりました。実験的に始めたこの取り組みでしたが、参加者たちは日記を自分流にカスタマイズし始めました。例えば出野氏自身が70代後半女性と80代前半男性とのグループに入っていた際、メンバーの一人「サッチー」さん(女性)が折り紙好きで、「どこに書けばいいか分かりにくいから」と手作りのしおりをスヌーピー柄の折り紙で作って日記帳に添えてくれたそうです。また藤沢市内での取り組みでしたが、外出自粛下でも散歩などはする人がいたため、「自分の散歩コース地図」も用意しました。藤沢市は広いため、自分の行動圏と他の人の行動圏を地図で見ると「今度そっちに行ってみます」といった情報交換が生まれたといいます。
この交換日記は2020年に開始して以降、藤沢以外にも三重県名張市や埼玉県など各地に広がり、地域の特色が色濃く現れる取り組みとなっています。名張市で同様に実施した際は、参加者がどんどんイラストを書き込んだり、西日本らしく日記の文面でぼけとツッコミが見られたとのことです。「45年以上の付き合いだがもう高齢になってもうた」と自分でボケ、さらに自分でツッコむような書き込みに対し、別の参加者がしっかり「笑い話ありがとうございます」とオチをつけるなど、ユーモアを共有したやりとりも生まれていました。
交換日記では3人が色分けして書くことで誰の文かわかるよう工夫し、質問を投げれば必ず返事が返ってくる、時には質問しなくても相手が積極的にツッコミを入れてくれるなど、活発な双方向コミュニケーションが展開しました。また、参加者は自分の関心事を自然に話題にするため、グループが偶然似た境遇の母親同士になれば子育て情報を交換するなど、共通点を持つ者同士の情報共有も起きました。さらに、日記には悩みや介護経験も綴られました。例えば「認知症の夫を介護しています」という70代参加者の書き込みに対し、他のメンバーが返信したり励ましたりするやり取りも生まれています。出野氏は「日記帳は参加者の手元に大体1週間置いて、書いたら市役所に持って行き交換する」というサイクルを説明し、名張市のゆるキャラをパンにした商品を日記で紹介した人がいれば、それを読んだ別の人が実際に購入して写真を貼り付ける、といった即座の反応も見られたと紹介しました。自分の発信に対するリアクションがすぐ返ってくるため、参加者たちは大いにやりとりを楽しんでいたようです。名張市ではこの交換日記が社会的処方の一環として位置づけられています。そこで、出野氏らは時折日記の質問に参加者の生活状況が分かるものを織り交ぜました。例えば「あなたの汚部屋レベル(部屋の片づけ度合い)は?」と尋ねる質問です。「汚部屋」とは散らかった部屋を指す俗語ですが、だいたい皆「レベル2(それなりにきれい)」と自己評価し、レベル4(かなり散らかっている)はほとんどいなかったそうです。併せて「掃除の悩みは?」と聞くと「やる気スイッチが入らない」といった回答が書かれ、こうした記述から市役所スタッフは「最近この人記入が減ってるな」「元気がないのでは」と把握し、気になる場合は電話したり日記を持参した際に声をかけたりしてフォローする体制を取っていたといいます。1年間、3人グループで交換日記を行った後に参加者の感想を尋ねたところ、最も多かったのは「とにかく楽しかった」という回答でした。また「自分のことをよく考えた」という声も多くありました。これは日記の質問に答えることで、普段誰からも問われない自分自身について振り返り、それに対して他者から反応が返ってくることでさらに考えを深めるというプロセスが生じたためです。さらに「ネタを探して過ごすようになった」との意見もありました。日記に書くために日々の中で話題を探すようになり、その結果として「興味の幅がぐっと広がった」という効果があったと分析されました。他にも「名張(自分のまち)が好きになった」、「家族や友達にも言わないことを書けた」といった声もあり、特に後者について出野氏は「本音トークが繰り広げられていて非常に面白い」と評しました。交換日記の匿名性・閉鎖性が、かえって安心して本音を吐露できる場になっていたようです。
出野氏は具体的な変化の事例も紹介しました。例えば30代女性・40代女性・70代男性のグループでは、40代女性が「昔から書くことが大好きだったが、子育てに追われ自分が何をやりたかったか分からなくなっていた。でも日記のおかげで画家になりたいという夢が再び湧いてきた」と語り、実際に絵画展に出品するまでになったそうです。これは「その人のアイデンティティの復活」だと出野氏は表現しました。同グループの70代男性には興味深い変化がありました。彼は当初、他の2人(女性陣)の書き込みに対し「それはこうした方がいい」等アドバイスばかり書いていましたが、女性たちの反応はいまひとつでした。ある時、彼が何も書かないで提出すると、逆に女性たちはそのことに強く反応しました。そこで彼は「自分はいつもアドバイスを与えていたが、女性たちはそれを求めていない。自分は聞くだけで良いのだ」と気づき、この学びによって奥さんとの関係も改善したと語ったそうです。別のグループ(10代女子大学生・70代女性元校長・40代男性行政職員)では、10代の参加者が「教員になったら絶対地元に戻ってきます!」と宣言し、70代女性は回を追うごとに服装が明るく変化(グレー系から最後はピンクや水色に)していったといいます。40代男性は「ずっと働きづめだったが、地元に友達ができた」と語り、世代間交流がそれぞれに良い影響を与えた例として紹介されました。
特に興味深いのは、引きこもりの20代男性・就労支援が必要な40代男性・要介護の夫を持つ70代女性という「人付き合いの苦手が多い3人組」のケースです。このグループでは、40代の就労支援を受けていた男性が日記を経て支援を受けず自ら就職し、さらにその体験をInstagramで発信してフォロワーが名張市公式アカウントより増えるほどのインフルエンサーになったというエピソードが紹介されました。20代の男性が、日記を経て引きこもり状態から抜け出し、70代女性は日記の途中でお父様を亡くされましたが、その時の状況を時間を置いて克明に日記に綴り、「書いたことで気持ちがすっきりした」と記しています。この70代女性に対し、他の男性2人もお見舞いの言葉を書き、日記の中でグリーフケア(深い悲しみへの対処)を共に行ったことが伺えます。
こうした一連の成果について、出野氏は「この日記は参加者同士が互いを処方していた」と表現しました。専門職(プロ)は誰も介在せず、知らない者同士だった参加者たちが、お互いの日記内容を読んで「それってこうじゃない?」「うちではこうしたよ」「そういうこともあるよね」と助言し合う中で、元気になったり就職したりといった変化が起きたのです。これはまさに社会的処方を当事者同士で実践した形だと言え、出野氏は時代の可能性を感じさせるエピソードとして紹介しました。
出野氏はこの取り組みから得られた示唆について分析も試みています。特に重要だとわかったのは、「五感で感じること」と「人から反応があること」の2点でした。人は皆、多かれ少なかれ様々なことに無関心であり(実際坪谷氏のきのこカードの話でも「9割の人は関心がない」と言われたように)、そうした無関心層にどうアプローチするかが鍵だと述べました。そのために、まず人を振り向かせる「楽しい」要素が不可欠だと強調しました。おいしい・かわいい・きれいなど感性を刺激し、楽しさによって、関心のない人にもリーチできるといいます。そして、そうした楽しい取り組みを「みんなで一緒に(Together)」進めることが肝要だとして、自身のスライドに「DIYならぬDIT (Do It Together)」の言葉を掲げ、「みんなで一緒にやりましょう」という呼びかけました。
本プロジェクトに文系研究者として参加する立場から、デジタル技術が個人にとってどんな意味や幸せをもたらすのか、安心なツールと言えるのか、といった問いを皆で考えていきたいと提案しました。出野氏は「関心がない人に目を向けてもらうには“楽しい”が重要」との信念を示して締めました。司会者の坪谷氏も「地域で仲良く物事を進めるためのハウツーを教えてもらった気がします」とコメントしていました。
群馬大学数理データ科学教育研究センター 講師 中村賢治 – 健康インタラクションでつながるメタバース空間

群馬大学の中村賢治氏は「健康とインタラクション」をテーマに話しました。自身の名前の由来が岩手県出身の宮沢賢治にあることや、教員免許を持ちながら教育と医療の両面から活動してきた経歴を紹介しつつ、オンライン医療やメタバースを活用した最新の研究・実証について発表しました。
中村氏は日常の例え話から切り出しました。「冷蔵庫を開けて冷たい飲み物が欲しくても無いことがある。コンビニに行けば解決するが、薬や医療サービスはそうはいかない」。地方では薬の入手や配送が難しく、Uberなどの即日配送サービスも人手不足で機能していない現状があるという。オンライン医療も普及が進まない背景には、制度上の制約とサービスへの不信感の両面があると指摘。「信頼性のある仕組みを作れば普及の可能性が広がる」と強調しました。
次に中村氏は、教育実習で「仮面をかぶって登校する生徒」を見た経験を紹介し、匿名性が人を勇気づける力について言及しました。
「仮面やアバターは、弱い立場の人に安心を与え、集団参加を促す緩衝材になり得る」この考えを応用し、2023年には大手薬局チェーンと連携し、メタバース薬局を構築。利用者はアバターを介して匿名で健康相談や処方支援を受けられる仕組みを実証しました。この取り組みは利用者に好評で、普段話せない悩みを安心して打ち明けられる環境を生んだということです。
ただし、高齢者にとってデジタルツールは大きな壁となる。中村氏らは群馬県内のショッピングモールに健康相談拠点を設置し、保健師による体組成測定や生活習慣の相談を行いながら、徐々にデジタルへの慣れを促しました。その上でメタバースを導入すると、歩数や服薬習慣が改善し、生活習慣が導入前と比べて約1.4倍良好になる成果が得られました。また、メタバース上での「いいね!」機能が参加者の行動を大きく変えた事例も報告し、ある参加者は「いいね!」を多く得たことで、1日8,000歩から2万歩近くへと活動量が増えたという事例についても触れました。
このような実証の中で課題も浮かび上がった、と中村氏は続けます。当初は高齢者向けに実年齢に近いアバターを用意したが「自分はこんな姿ではない」と拒否されるケースがあったといいます。そこで参加者と共に理想の姿に近いアバターを制作したところ、積極的に利用が進んだとのことです。「人はデジタル空間で、理想化された自分を重ねたい気持ちを持つ。匿名性だけでなく、自己表現の要素も重要だ」と中村氏は分析します。
新たな実証では、VRを用いて生活習慣データから未来の体型をシミュレーションするツールを開発し数年後の自分がアバターとして登場し、「このままでは歩けなくなる」など生活改善を促す対話が体験できるとのことです。未来の自分に“説教される”仕組みは強い行動変容を生み、参加者からも好評を得ているといいます。
さらに、中村氏は水族館での実証計画にも触れた。子どもたちが水中ドローンを操作して清掃を行い、ブロックチェーンで報酬を受け取る仕組みだ。規模の問題で実現には至らなかったが、子どもの社会参加や教育への応用可能性が示されたとする。
講演の最後に中村氏は今後の展望として「VRやメタバースを通じて、人の行動をやわらかくデザインすることで、生活習慣改善や地域の健康づくりに貢献できる」と述べた。今後は町内会単位での健康支援や、ブロックチェーンを活用した仕組みの展開を計画しているという。
山形大学学術研究院 准教授 中澤未美子 – 人工知能から考える未来のコミュニケーション

山形大学の中澤未美子氏は、「人工知能から考える未来のコミュニケーション」をテーマに講演しました。中澤氏は臨床の心理専門職として大学学生支援に携わる傍ら、AI時代のメンタルヘルスについて研究しています。まず自身の経歴紹介として、埼玉・茨城・神奈川・愛知と様々な土地に住み、7年前に山形県米沢市に移住したことを語りました。普段の業務は精神保健福祉士・公認心理師の資格を活かし、大学生の心理支援を中心に行っています。
中澤氏のキャリアは多岐にわたり、これまで地域の大学相談室、精神科病院、企業の人事コンサル(メンタル不調で休職した社員の復職支援やハラスメント対応)、難病患者のNPO支援、LGBTQ支援などに関わってきたと紹介しました。また山形県内の中学校2校・小学校2校でスクールカウンセラーも務めており、教育現場にも携わっています。主著として「キャンパスソーシャルワーク」という本を出版しており、大学生の支援では経済的困難からアルバイト過多で授業に出られず留年するといった現実的課題にも向き合っていると述べました。大学には自分のペースで通えるからこそ休学や退学の相談もあり、家族に大学生がいる方には是非その事例集を読んでもらいたいとPRしました。
そんなアナログな対人支援が専門の中澤氏ですが、デジタル技術との出会いがありました。それは学生相談室の待合ロビーにペット型ロボットを設置したことです。このロボット(自走式で言葉は話さず、風の音のような声を出すタイプ)を置いたところ、発達障害傾向の学生たちが、人間のカウンセラーには見せない表情をそのロボットに見せたり、カウンセラーには話さないような独り言(本音)をロボットに積極的に話しかける場面に遭遇しました。中澤氏はこの様子に「正直ショックを受けた」と言い、同時に「デジタルが人間の心に深く関与してくる時代が本格的に来た」ことを実感したと語りました。
AIやロボットがカウンセリングに及ぼす影響を目の当たりにし、中澤氏は「デジタルメンタルヘルス」や「相談のしやすさとは何か」について考え始めました。専門職としてトレーニングを積んできたにも関わらず、チャンネルを合わせられず心に寄り添えていないのではと悩む場面もあったと率直に明かしています。そうした問題意識からトヨタ財団に研究助成を申請し採択されたのが、「コミュニケーションとは何か」「分断された社会の構造は何か」を問い直す研究でした。中澤氏は「障害福祉の制度などにも疑問がある」と述べつつ、この助成を通じて龍岡氏とも出会い、参加することになった経緯を説明しました。
研究の背景として、中澤氏は現代社会が「コミュニケーション至上主義」になっていると指摘しました。就職活動でも「スーパーな人間(コミュ力万能)」でないと大企業に入れない風潮があり、どんなに優れたスキルを持っていても上手にプレゼンできないと伝わらず、結果として社会に参加できない仕組みになっているのではないか、と問題提起しました。頑張って積み上げたポテンシャルが面接という場で発揮できないと活かされないのは残念だとし、コミュニケーション能力偏重の弊害を示唆しました。そこで中澤氏は、ロボットを使ってコミュニケーションを補完・変革できないかという視点で研究を進めています。一例として、ある企業の特例子会社(障害者雇用のための子会社)にコミュニケーションロボットを導入し、障害のある従業員の仕事へのコミットメントや心理状態を測定・観察する試みを紹介しました。障害者雇用には法定雇用率があり、大企業ではその達成のため特例子会社で多数の障害者が働いています。この現場にロボットを投入し、人とロボットのやり取りが仕事上の心理にどう影響するかをデータ収集しているとのことです。「現在分析を進めている」と述べ、研究の一端を紹介しました。
次に中澤氏は聴衆に問いかけを行いました。
次に「将来的にロボットのカウンセラーと人間のカウンセラーを選べるとしたら、どちらに相談したいか?」という質問が会場に手を挙げてもらう形で実施されました。最も多かったのは「相談内容による(使い分ける)」という回答で、「ロボットのカウンセラーを選ぶ」人は少数でした。中澤氏自身も「私も内容によるかなと思う」と同意しました。
中澤氏は具体例として、「お金のこと」「性的なこと」など人によって対人では相談しにくい分野があるだろうと述べ、そうした抵抗感の強いテーマはAIロボットに、その他は人間にというように、上手に使い分けられると良いかもしれないと提案しました。これは今後の心理支援・精神保健の未来を考える上で注視すべきポイントだとも語り、聴衆もうなずいていました。
続いて、中澤氏が現在取り組んでいる実験について紹介がありました。国の科研費助成も受けて、ペット型ロボットを用いたカウンセリング実験を行っているとのことです。高価な人型アンドロイドカウンセラーは用意できないため、前述の自走式ペットロボットを椅子に座らせ、人間カウンセラーとツーショット相談のような形式で学生に対応させる試みです。その様子をカメラで録画し、「どちらの方が話しやすいか」等のデータをテキストマイニングやアンケートで分析しています。
大学生対象のトライアル実験では、予想通りの結果が出ているといいます。すなわち学生たちはロボットと人間のカウンセラーに役割の違いを期待しており、イメージの差が明確でした。具体的には、人間のカウンセラーには感情理解や共感を求め、一方でロボットカウンセラーには解決策ではなく受容(黙って聞いてほしい)を求める傾向が示唆されたそうです。ただしサンプル数が少ないため、今後研究資金が確保できればさらに追試したいと述べました。
最後に中澤氏は、自身が最近体験したデジタル化の進む日常について触れました。大阪出張中に入った定食屋で「ご飯おかわり自由」だったが、人手を介さず機械にお茶碗を置くと自動で飯がよそわれる装置を目撃し、「都会では水だけでなくご飯まで自販機で出てくるのか!」と驚いたエピソードです。これを引き合いに、無人店舗も増える現代で、自身の専門である対話の現場もこのようになるのだろうかと考えさせられたと述べました。
さらに「心理職カウンセラーの未来像」について議論する研究者もいることを紹介しました。カウンセラーは初対面の「こんにちは」の瞬間から、相手の顔色、動作、服装の乱れなど多くの情報を感知し、経験に照らして「この人はこういうタイプかも」と見立てを行い、それを支援に活かします。中澤氏は「この人間ならではの直観や雰囲気を察する力を、ロボットはどう処理するのだろう?」と疑問を呈しました。
試みにChatGPTに「AIカウンセラーの画像」を生成させたところ、不気味な画像ができたので示しますと前置きし、そこから中澤氏がAIに問いかけた内容を紹介しました。中澤氏の質問は「人間のカウンセラーは、一緒に悩んだり寄り添ったりする人間味があるが、AIカウンセラーもそれを上手にできるのか?」という趣旨でした。また「会話を切り上げたそうな雰囲気」をAIは察知できるのか?とも問いました。AI(チャットボット)は賢いので恐らくそれも可能だろう、と彼女自身推測しつつも、雰囲気・空気感の読み取りという微妙な部分は人間の得意とするところであり、依然興味深い課題だと述べました。
さらに中澤氏は究極の質問として、「自分が死ぬとき、話したことを全部消去してくれと頼んだら、AIカウンセラーは '分かりました、消去します' と答えるだろう。そうしてくれるなら安心してあの世に行けるかもしれない」と一つの考えを示しました。しかし「逆に本当に消去されたか不安になるかも。恥ずかしい秘密を話したのに記録が残っていたら…とか、人間であれば抱く死への恐怖をAIがどこまで共感できるだろう?」とも投げかけました。
死への恐怖や概念は人間誰しも未経験である以上、AIに共感を期待するのは難しいかもしれないとも述べつつ(宗教的カウンセリングならまた別かもしれないが、と補足)、AI時代に検討すべき問いは山ほどあると語りました。
最後に、中澤氏は本プロジェクトに文系研究者として参加し自分にできることがあるとすればと前置きし、3点の視点を提示しました:
デジタル技術が個人にとってどういう意味や幸せをもたらすものかを考えること。
デジタル技術が個人にとって安心なツールと言えるかを見極めること(倫理的観点から、人として善い使い方・悪い使い方を議論する)。
善悪の判断は人によって違うため、価値観の分岐点をどこに設けるかを皆で話し合うこと。
中澤氏は「これらはまさに皆さんと話し合って決めていくこと」だと強調し、そうした点を踏まえてプロジェクトを進めればきっと面白く有意義になるだろうと述べました。午前中に司会の坪谷氏が「ワクワクしてください」と言っていた通り、自身も他の先生方の話にワクワクしたと述べ、これからのパネルディスカッションが楽しみだと期待を示しました。そして「質疑では皆さんも色々質問があると思うので、後ほどのディスカッションを楽しみにしています」と言って発表を締めくくり、会場から大きな拍手を受けました。
秋田大学大学院医学系研究科 先進デジタル医学・医療教育学講座 特任教授 及川沙耶佳(指定発言)– 教育の視点から見るコミュニティと学び

シンポジウム後半の指定発言として、秋田大学大学院医学系研究科特任教授の及川沙耶佳氏が教育の観点から意見を述べました。及川氏はまず、「スクール(school)」という言葉語源は古代ギリシャ語の「スコレー(余暇)」であり、学びとは本来、人々が余暇に集い対話しながら行うものだったという話題提供をしました。この話は名古屋大学の医学教育学プログラム(ふくみん)で講師を務める柴原真知子先生から教わったこととして引用されました。及川氏はこのエピソードを踏まえ、「人々が集まる場がとても大事」であり、医学教育においてもコミュニティで人と人が交わることが重要だと述べました。そして「学びの種はいつでも自分の中にある」とも語り、それを引き出すには人と人との関わりが鍵になると強調しました。及川氏は日頃大学で学生に向き合っていますが、常に伝えたいメッセージは「学びは必ずしも大学や病院の中だけにあるものではない」ということであり、医学教育モデル・コア・カリキュラムのキャッチフレーズも「未来の社会・地域を見据え、多様な場や人をつなぎ活躍できる医療人の養成」であったことについて話題提供をしました。国際情勢や社会情勢が不安定な中、アンテナを高く張り、チームで協働できる柔軟な医療人こそ求められるとの理念が示されています。そこで及川氏は特に地域医療教育にフォーカスを当て、現状を共有しました。全国82医学部の学長・病院長らへのアンケートでは、ほとんどの大学が臨床実習開始前(1~4年生)の段階で地域医療教育を行っていると答えました。特に早期(1年生)から導入している大学が多かったそうです。そして、弘前大学の医学部2年生を対象に行われる「地域医療入門」シリーズの授業の一部を紹介しました。この授業では及川氏と坪谷氏でワークショップ形式の授業を行い、多様なキャリアパスの話をしたあとに、みんらぼが作成した人生会議カードゲームを学生と一緒にプレイし、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)について語り合うということをしています。他者理解が進むと、その先にある自己理解も深まります、と及川氏は考察しています。続いて臨床実習(ポリクリ)についての話題に移りました。秋田大学の6年間カリキュラム図を示し、4年後期から6年にかけて72週間の臨床実習があることを説明しました。その中で学生たちは様々な病院・診療所・訪問診療・保健所などに出向き、社会と関わりつつ実習します。及川氏は臨床実習に関するいくつかの医学教育研究の成果も紹介しました。これらの研究から読み取れる重要なメッセージは、「学生が医師になっていくプロセスで情動的学習は極めて大事」という点でした。評価されないから見えにくかっただけで、実は医師の成長に不可欠な要素だと示唆されたのです。「様々な病院だけでなく病院の外に学生を出して色々な経験をさせるべき」という方針が明文化されたこともこれらの研究の重要な成果であると及川氏は考えています。つまり星氏のような畑の現場や、地域で起こっていること、人々がどう働きどう考えているかを学生にさらすべきだというのです。しかし実際には大学によってカリキュラム編成の難易度が異なり、学生がそうした現場を見ないまま卒業する場合もあると及川氏は指摘しました。また、及川氏は「人と人との関わりから学ぶこと」の大切さを改めて強調しました。前半の発表者の話(コミュニティで人々が集まる場が重要という趣旨)が医学教育の最新動向とも合致することを示し、「学びは場を選ばず、地域・社会のあらゆる場面にある」と結びました。及川氏はまた、未来を見据えた医学教育改革の例として「多様な場や人をつなぐ医療人」の育成目標を紹介しました。この中には、まさに午前中の発表にあったような「地域の色々な活動に学生を晒し、異分野・異業種と交われる医師を育てる」方策が含まれているといいます。しかし一部の大学ではそうした取り組みがまだ難しく、今後プロジェクト(トヨタ財団の本事業)のような産学官民連携により、学生や若手が地域活動に触れる機会を増やすことが期待されます。最後に、及川氏は「人々が集まるところに学びがあり、人から人へ学びが伝播する」という冒頭のテーマに立ち返りました。そして「医学教育も地域やコミュニティと無縁ではなく、むしろ両者を橋渡しする存在を育む方向に動いている」とまとめました。今回のシンポジウムでの様々な発表が示すように、医療者も地域住民も互いに学び合い教え合う関係がこれからの持続可能な地域健康モデルには不可欠であり、「地域の皆さん全員が教育者」との言葉(龍岡氏の発言や中澤氏の同意にもあった)が象徴する通り、共に学び共に支え合うコミュニティこそ未来のウェルビーイング社会の鍵になるとの示唆でコメントを締めくくりました。
京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻国際保健学講座社会疫学 教授 近藤尚己 (指定発言 ビデオメッセージ)– 社会疫学の視点から未来への提言

近藤尚己氏(京都大学大学院 医学研究科 社会健康医学系専攻 国際保健学講座 社会疫学 主任教授、京都大学成長戦略本部 beyond2050社会的共通資本研究部門 部門長、一般社団法人 安寧社会共創イニチアチブ(AnCo)代表理事)は、社会疫学・公衆衛生を専門とする立場から本シンポジウムに登壇し、自身の研究活動や政策参画の経験を踏まえて「社会的要因と健康」について発言しました。近藤氏は、本プロジェクトについて「期待しかない!」と述べ、地域づくりに関わる多領域連携の重要性を強調しました。
近藤氏は医師としての臨床経験を経て、公衆衛生学・社会疫学の道に進みました。健康の決定要因は医療だけではなく、孤立・経済格差・教育・地域のつながりといった社会的要因が大きな役割を果たすと指摘。これまでに「健康日本21(第3次)」の策定や、厚生労働省の社会的処方モデル事業のアドバイザー、さらに内閣府の孤独・孤立対策計画やWHOの技術アドバイザーなど、国際的にも政策に関与してきました。
発言の中では、研修医時代に出会った一人の孤立した患者の事例を紹介。心臓手術は成功したにもかかわらず、退院後まもなく亡くなった患者に触れ、「孤立し生きる希望を失った人は、医療だけでは救えない」と述懐しました。この経験から「治療だけでなく環境を変える必要がある」と痛感し、以降20年間にわたり社会関係資本(ソーシャルキャピタル)の研究を続けてきたと説明しました。
具体的な研究の取組として、愛知県武豊町で実施したコミュニティサロンの効果を紹介。参加者は要介護状態になるリスクが半減することが分かり、「つながりは健康寿命を延ばす資本である」と強調しました。また、兵庫県養父市では社会的処方プログラムにより、引きこもりがちだった男性が針金アート活動に参加し、生活や人間関係が劇的に改善した事例を報告しました。
加えて、福井県高浜町の「愛煙家座談会」や、阪急阪神ホールディングスによる「男・本気のコーヒー教室」、高円寺の銭湯「小杉湯」、東京芸術大学が進める「文化的処方」など、多様な地域や団体の取り組みを紹介。芸術活動、デジタル技術を組み合わせることで、孤立対策や地域ウェルビーイング向上に新たな道が開かれていると述べました。
最後に、オランダの「ポジティヴヘルス」の枠組みや、養父市で導入されたアプリを例に挙げ、健康の評価軸を「身体・心」から「生きがい・つながり」へ広げる重要性を訴えました。そして、産官学連携による「安寧社会共創イニシアチブ(通称AnCo)」の取り組みを紹介し、ブロックチェーンを活用した「社会関係資本の見える化」にも言及しました。
「誰も取り残さない安寧社会の実現を目指したい」と語り、シンポジウムの成功と参加者の活動に大きな期待を寄せて発言を締めくくりました。
パネルディスカッション

パネルディスカッションでは、岩手県立大学の杉谷氏から「AIとかICTみたいなものを使うときに、何のために使うのかっていうときに、多分皆さんも人が幸せに暮らすとか、健康寿命が長くなるとか、割とそこの価値っていいことに使うっていうことが前提な気がするんですけど、その価値って自明なのか。私とかタバコ吸うし、酒好きだし、多分早く死ぬんですけど、別にそれはそれでそれよりも長い。それよりもそういう寿命ではない別のとこに価値を重きを置いてる人ってやっぱりいて、特に地域とかだとそういう人っているかなって。都会にもいっぱいいると思うんですけれども、そういったところとかを皆さんどう考えてるのかっていって、もっとはっきり言うと、その機械とかを使って何か押し付けてんじゃないのという価値観を、皆さんのそれはどうなんですかっていうことはちょっとお伺いしておきたいと思いました」という疑問が投げかけられ、中村氏から「メタバースを使って健康をってやったんですけど、実は10人いると一人二人は他人のいいね、なんかいらねえよって知るか、お前の価値観って人がいて。だから大好きなんですけど、でもそれを阻害してグループ化しないようなシステムをしないといけないと思っているのと、あと僕は健康相談をする生成のモデルを作っているんですけど、今ほとんどのモデルがタバコはダメって言うんですね。」などのコメントや、及川氏から「スギちゃんのような質問が生まれるってことが先生の一つの功績かなと私は思っていて。なので当たり前を問い直すという力がこれから人には求められるってことを、AIがこう浮かび上がらせてくれてるんじゃないかなと思いますね。私は教育現場なので、学生にはこれからは答えを出すんじゃなくて、問いを立てる能力がすごく必要だよって話をしてるので、そこにスギちゃんのような問いを立てられる人間がこれから育てていく必要があるのかなと感じました。」というような意見が出ました。また東北大学の田淵氏からは「VRとかメタバースとかデジタルとかいろいろ、要は本当の意味での本質的なすごくいいつながりとの距離感がまあまああると思うんですけど、そこをどうやって埋めるのかとか、今後どこまで普及していくかとか、僕、公衆衛生やっているんで、多くの人が使わないと意味がないと思っちゃう価値観もあるので、その辺どうやって埋めるのかというのをちょっと是非教えていただければなと思います。」という質問に対して「そもそものシステムが人を分断生むんだったらそもそもやっちゃいけないので本当に押しつけがましいんですけど、ある一定の自治体とかと協力して、ある一定範囲でちゃんとしてくれる範囲でやっていくしかない。それが分断を生まないように配慮することが重要」とコメントしました。
エクスカーションの開催
今回、岩手県紫波町での共創協定およびシンポジウムに合わせて、紫波町でのコミュニティ活動を紹介するエクスカーションが設けられました
コミュニティ畑の見学
シンポジウムの中でも触れられていた、地域住民とコミュニティナースが交わるコミュニティ畑の見学が開催されました。

紫波町図書館の紹介 - つながりを処方する図書館
紫波町の官民連携施設「オガールプラザ」の中でコミュニティ活動の中心的な場となっている紫波町図書館の見学も、紫波町図書館の協力を得て開催されました。図書館内部の紹介と、本プロジェクトに合わせて社会的処方、コミュニティ、web3などに関連する書籍が紹介されました。
「紫波町図書館は、つながりを処方する図書館なんです」と、館長の天野氏は言う。
「ここは、「おしゃべりをしていい」図書館。日常的に、司書も利用者さんとよく雑談をしています。「こんにちは」というあいさつを交わし、そこから何気ない立ち話をするうちに、生活や健康上の悩み、ご家族での困りごとなどまで話が及ぶこともあるのです。欲しい資料や知りたい情報を司書に相談できるレファレンス・サービスは図書館の基本サービスですが、当館では本や資料のみならず、ときには人や団体、イベントを紹介することもあります。その方が持ち寄る疑問や課題に対し、つながりまで提供することも図書館の重要な役割なのです。
立ち話も貴重な情報源であるととらえているので、多少の音を許容できるように、館内ではBGMがかかっています。パク・キスク著(原書房)『図書館は生きている』に「図書館は本を読むだけでなく、自分とは異なる他者を「読む」場所だ。」という記述があるのですが、とても共感しました。図書館はしゃべってはいけない場所だと禁止する張り紙を出すのではなくて、泣いている子どもには絵本を一緒に読むなど。「社会が色々な人を受容できるようになればいい。理想の社会はすぐに作れなくても、図書館の中からならできる」という主任司書の想いが運営に生かされています。図書館は本を借りるだけの場所ではないですし、ただ居てもいい場所。特に目的がなくても、気軽に訪れていただきたいですね。」
(関連記事)
紫波町図書館 館長 天野咲耶氏インタビュー – 図書館サービス向上委員会(りぶしる)

おまけ
今回のイベントのスタッフ向けに、地域おこし協力隊 山崎さん手作りのお弁当が振舞われました。山崎さんは料理研究家、シェフであり、紫波町でアリスウォーターズをテーマにしたイベントを開催するほどの方。大変美味しくいただきました。

本シンポジウムの内容は下記の記事にて紹介をされました。
YAHOOニュース
いわてめんこいテレビ
