【人事歴約10年が語る】プロボクサーの友人が「試合前は一睡もできない」と話してくれた日──うつ病・双極性障害・適応障害で休職中に転職を悩む40代・50代のあなたへ
「昨日、一睡もできなかった。」
今でも、その言葉をはっきり覚えています。
たしか、後楽園ホールで行われた牛若丸あきべぇ選手の日本タイトルマッチの日でした。
友人はその前座……いや、正確には前座の前座。
4回戦のプロボクサーでした。
世間から見れば、まだ駆け出しの選手かもしれません。
でも、本人にとっては人生を懸けた一戦です。
私も格闘技を長く続け、柔道は二段まで取りました。
大切な試合の前は、やっぱり眠れませんでした。
負けたら悔しい。
負けたら恥ずかしい。
「みじめな思いをしたくない。」
そんな気持ちが頭の中を何度も巡っていたのを覚えています。
だから、試合前の緊張感くらいは分かっているつもりでした。
でも、プロボクサーの友人が「昨日、一睡もできなかった」と話してくれたとき、やっぱりプロは違うんだと思いました。
勝敗だけではありません。
生活も、次のチャンスも、その一戦に懸かっている。
私が経験してきた試合とは、背負っているものの重さがまるで違いました。
だから試合会場へ足を運ぶこともあり、後楽園ホールの控室へ行く機会もありました。
その日も、控室には独特の緊張感が流れていました。
試合前、友人は静かに私へ言いました。
「昨日、一睡もできなかった。」
そして、こんな言葉も話してくれました。
「相手は僕を本気で倒しに来ます。だから僕も本気で相手を殴ります」
その一言の重さは、今でも忘れられません。
テレビで見るプロボクサーは強く見えます。
堂々として見えます。
でも、控室で見た彼らは違いました。
壁を何度も叩いて、自分を奮い立たせる人。
静かに目を閉じる人。
何度も深呼吸を繰り返す人。
みんな、それぞれの方法で恐怖と向き合っていました。
私たち仲間も、試合前になると応援の手紙を書きました。
「頑張れ。」
「帰ってこい。」
「絶対勝てる。」
そんな短い言葉ばかりです。
それでも書かずにはいられませんでした。
それくらい、リングへ上がるということは特別なことだったのです。
そして試合が始まりました。
結果は──
1ラウンドKO勝ち。
結果だけを見れば圧勝です。
「あっという間だった。」
そう思った人も多かったでしょう。
でも私は知っています。
その数分間の試合のために、前日は眠れず、恐怖と向き合い続けていたことを。
後になって辰吉丈一郎さんの自伝を読んだときも、試合前は眠れないことや、恐怖と向き合っていたことが書かれていました。
世界チャンピオンですらそうなのです。
だから私は、友人だけが特別だったわけではないのだと思いました。
人は結果だけを見ます。
「強い人だった。」
「圧勝だった。」
でも、その結果の裏側には、誰にも見えない葛藤があります。
私は人事として約10年、多くの方の転職相談を受けてきました。
うつ病。
双極性障害。
適応障害。
休職中の40代・50代の方から、
「転職する覚悟が決まりません。」
「また働けなかったらどうしよう。」
「今、辞めるべきなのか分かりません。」
そんな相談を何度も受けました。
でも私は思うのです。
覚悟なんて、簡単に決まるものではありません。
何千時間も練習してきたプロボクサーですら、試合前は一睡もできないことがある。
リングへ上がる直前まで恐怖と向き合っている。
それなのに、心や体を壊して休職しているあなたが、人生を左右する転職で悩むのは当たり前ではないでしょうか。
だから、自分を責めないでください。
「覚悟がない。」
「自分は弱い。」
そう思う必要はありません。
今、休める環境がある。
それは決して悪いことではありません。
人生を左右するような大きな決断は、心も体も限界の状態でするものではないと、私は思います。
焦らなくていい。
転職は逃げません。
求人もまた出てきます。
十分に休み切って、少し心が落ち着いてから考えても遅くありません。
後楽園ホールの控室で、私は鍛え抜かれたプロボクサーが恐怖と向き合う姿を見ました。
だからこそ、休職中に転職を悩んでいるあなたへ伝えたいのです。
覚悟が決まらないのは、あなただけではありません。
それは、人として、ごく自然なことなのです。
最後に
この記事が、今まさに休職中で転職を悩んでいるあなたの心を少しでも軽くできたなら嬉しく思います。
私は人事として約10年、採用・労務・休職・復職など、さまざまな現場を見てきました。
その経験をもとに、40代・50代の転職や休職、面接、人間関係などについて、実際の現場で見てきたことを一つの判断材料としてまとめた母艦noteを継続的に更新しています。
「今の会社を辞めるべきか。」
「復職するべきか。」
「転職するべきか。」
「このまま休んでもいいのか。」
そんな人生の大きな判断で迷ったときは、一人で抱え込まず、ぜひ一度のぞいてみてください。
あなたが後悔の少ない選択をするための判断材料として、お役に立てれば幸いです。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。
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人事歴約10年。働く人を支援するため、労働組合活動や団体交渉、労働委員会、裁判対応にも取り組んでいます。いただいたチップは活動継続のために大切に使わせていただきます。