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恋愛エッセイNo.03 今日は、ため口。初めてかもしれない。

オンラインの海に漂う、顔も知らないあの人の新作が待ち遠しくて、待てなくて。
過去の作品に、ひとつ印をつけ、小さな声を届けた。

5分後に思わぬ返事。

「過去の作品まで読んでくれてありがとう。まだ読んでくれる人がいるんですね…(笑)」

笑われた。

そう。初期の作品から全部、読み直している。
さっきは思わずつけた印。
全部はつけてないから、どれだけ読み返しているかまでは気づかれていないと思うけど。

今、会議中なのかな。休憩中なのかな。それとも遅めのお昼?

忙しい中すぐに返事をくれたことが、 なんだか特別に感じて、嬉しくて。
その日一日、夜中までずっと浮かれてた。


「あ、新作。やっと投稿された…」

一回ゆっくり読んで。
もう一回。

それから、好きな個所を何度も何度も、読み直す。

そっか。今、出張中なんだ。
どこの街なんだろうと想像するだけで心が騒ぐ。

「街を行きかう人を見てた」
から始まって
「眠れない」
という言葉で物語が終わっていた。

私も。
私も眠れない。
なんだか、とても人恋しそうな温度が伝わってくる。
夜中だから? 雨が降っているから? ひとりだから?

書いては消し、消しては書き直す。
何度も繰り返したけど、ためらいの跡が残ったままの、私の小さな声。
そっと送った。

「しっとりとした余韻を感じる作品でした」

本当にあれでよかったのかと、心がまたざわつき始める。
返事が来るはずのない真夜中なのに、ぼんやり画面を眺めていた。


次の日の早朝。うっかり握りしめて寝てしまったスマホに、短い返事があった。

「そこ、分かってもらえた?」

いつもは敬語なのに、 今日は、ため口。
初めてかもしれない。

それだけのことなのに…。また今日も一日幸せな気分でいられそう。

どんどん、このやりとりに…のめり込む。
この顔も知らないあの人の波に…溺れていった。


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