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【熔ける前の井川意高物語】#12:自己研鑽する人材の育成!

井川意高氏は現在、インフルエンサーとして活躍されていますが、かつては大王製紙の社長を務め、カジノで106億円もの巨額を失い、特別背任の罪で懲役4年の実刑判決を受けたことで広く知られています。

一方で、その父であり、「大王製紙の中興の祖」と称されながらも、その功績が十分に世に知られていないのが井川高雄氏です。

井川親子と共に仕事をするという貴重な経験を持つ私だからこそ、彼らとの思い出を振り返りながら、なぜあのような事件が起きたのかについて、冷静に考察してみたいと思います。


🌳井川高雄氏の大王製紙スタート:倒産からの再出発

昭和38年、大王製紙は好調な業績とは裏腹に、商社金融を活用した積極的な設備投資が裏目に出て、資金繰りが行き詰まり会社更生法を申請することになりました。

これが、井川意高氏の父である井川高雄氏の大王製紙人生の出発点となりました。

更生法の下で再生に取り組んだ大王製紙は、債権者から放棄された債務まで全額返済を果たし、株主から不必要な債務返済をしたと訴えられた訴訟も最終的には勝訴してしまいました。

まさに創業者井川伊勢吉の社是「誠意と熱意」の精神を体現したエピソードです。

井川高雄氏は、創業者の志を継ぎつつ、近代経営に取り組み、昭和40年代初めには東京八重洲に営業本部を設置し、全国規模の企業を目指す基盤を築いていきました。

しかし、現実は厳しく、最初は東京勤務の社員集めも大変だったと聞きました。

先輩方から聞いた話では「当時は、女子社員(女子は総合職ではなく一般職と呼ばれた地域限定の事務員)を雇ってもみんな直ぐに辞めていくんだ。理由を聞いてみると、事務所内に響き渡る”どうすんぞ””どうすんぞ”という四国の方言が怖いって言うんだよ」という実態だったそうです。

そんな会社に高学歴の優秀な学生が就職してくるハズもなく、社員の育成は大変だったと思います。

大卒でなくても高卒の者を鍛えに鍛えて戦力にしていく。井川高雄氏にとって社員の育成こそが、会社を大きくしていく上で絶対に必要なことだったのではないでしょうか。

🌳井川高雄氏の英語教育:海外進出への備え

井川高雄氏は、大王製紙の三島工場を成長の基盤にするために、欧米からの最新技術情報の収集・吸収が重要であると考えていました。

そのため、特に英語を話せる社員の育成に注力しました。四国に英語教師を招き、社員を少人数クラスで半年間英語漬けにするオフJT教育(英語教室)を実施したり、米国留学制度や現地駐在員として派遣することにも積極的に取り組みました。

私は、三島工場で労務部長を3年経験する中で、井川高雄氏から次のような人事の要諦を直接学ぶ機会がありました。

「昔は、海外駐在から帰任する駐在員は必ず昇進昇格させて日本に戻した。そうすることが、海外で苦労を掛けた駐在員だけでなく、周りの者の目まで海外に出ることに選ばれたいという意識に繋がる。英語教育には、事業部のエース級で抜かれたら困るという優秀な者を選んで入れたものだ。全部自分の頭で考えてやってきた。

「どうやって優秀な社員を採用するのか?もしも小学校や中学校時代のことであってもリーダーシップを発揮していた近所の評判や地頭の良さが分かるエピソードをそいつを知っている者から直接聞けるものならそうしたい。だがそんなことはできないので、人事には、出来るだけ上位校から選抜せよと伝えている。受験は、同じルールで努力を競う公平な競争である。その競争を突破してきた者には、鍛えたら伸びる資質があるかもしれない。

人事の要諦というのか、井川高雄氏の経営哲学が垣間見えるような言葉ではないでしょうか。

🌳井川高雄氏の自己研鑽と人材育成方針

井川高雄氏は、社員が自己研鑽に励むことこそが企業の発展に繋がると考え、自らもその模範を示してきました。読書家であり、還暦を超えて北京に単身留学して中国語を学ぶなど、生涯にわたり成長を求め自己研鑽していました。

井川高雄氏は、仕事終わりに役員・社員を銀座に連れていって一緒に食事をすることが多々ありました。幹部を連れていくだけではなく、時には若い担当者も連れて行き、飲食時のテーブルマナーを叱責して、ビジネスマナーを厳しくしつけすることもありました。

その点では、井川意高氏は、公私のオンオフがはっきりした方だったと思います。インフルエンサーとなった今、お付き合いの幅広さや人脈の広さ、深さを感じますが、夜のお付き合いは、お父さんとは違って社員とではなく、社外のネットワークを優先されていたと思います。

井川高雄氏に私も何度か銀座に食事に連れていってもらいました。そんなある時「お前のいいところはセルフディベロップメント(自己研鑽)ができるところだ」と褒めてもらったことがありました。

会社のトップからそんな風に褒められると誰でもなお一層自己研鑽に励むのではないでしょうか。

日本の社会人は自己研鑽せず、熱意ある社員の割合でも世界の最低クラスというOECDの調査結果がよく報道されますが、井川高雄氏は、社員自らが自己研鑽するように仕向けるため、自身の自己研鑽ぶりを社員に見せていたんだと思います。

いくら経営トップが優秀でもそのトップが目指すことを「実行してくれる熱意ある社員」がいなくては会社は成長しません。どうやって社員の自己研鑽力を伸ばしていくのか?その方法論に正解はありません。

しかし、トップ自らが模範にならなくては、社員は付いてこないことだけは間違いないと思います。

井川意高氏は分からないことを知ったかぶりせずに部下に尋ね、翌週にはキャッチアップどころか専門家然として話をしていたことを紹介しましたが、井川高雄氏も負けていません。

中国語を学び始めたきっかけは、銀座に連れていった部下が流ちょうな中国語でホステスと会話しているのを聞いて驚き、「どこで習った?」と聞くと「独学です」と答えたのに刺激を受けて自らも中国語習得に励み始めたのです。還暦過ぎての北京師範大学(北京大学に入学したかったが年齢制限に引っかかったと言っていました)への単身留学までやってのけています。

この負けず嫌いの上昇志向、自己研鑽をトップ自らが社員に範を示す、そんな点は、この親子に共通していたのではないでしょうか?


お待たせしました。次回、いよいよ親子のすれ違いを実感した事例を紹介します。

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