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【36歳からの人生の作り方】#6 希望と別れが、同時にやってきた——離婚と出版が重なった日

36歳まで、わたしは「趣味で絵を描いていた専業主婦」に過ぎなかった。

それがイラストレーターになり、46歳で漫画家になり、51歳でインタビューライターになった。気づけば4冊の本を出し、NHKで教え、新聞やテレビでコラムを書くまでになったのだ。

20年前のわたしが、「何かの間違いじゃない?」と疑うような、そんな激動の記録をここに記したい。

この冒頭から始まる記事も、今回で6本目となる。

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10秒で読める「前回までの話」

20年前、細密画や磁器絵付を習っていた、子どものいない専業主婦のわたし。満たされない日々のなぐさめに、ブログに「ひよこ日記」を描き始めた。それをきっかけにライター講座にも通い始めた。

ひよこ日記は出版企画となり、出版社で企画が通った。担当編集もついて順調に進むが、夫との間には隙間風が吹き始める。

絵付の作品。一点一点盛り上げて金彩を施す「金盛」という技法。
何度も塗り重ねて焼成し、仕上げるのに数カ月を要する
(中央に盛りつけてあるのは、なぜか焼き芋)


イラストレーターになったきっかけ


当時のことをもう少し書いておくと、わたしは都内のIT企業で週に3日、インターネットのヘルプデスクとして働いていた。

そこで、依頼を受けてたまにイラストを描いた。でもそこでのことはほんのお遊びのようなものだった。

ところが、思いがけないきっかけで本当にイラストの仕事が決まったのだ。

そのきっかけは「写経」だった。夫とは家庭内別居状態に突入し、鬱々とした日々が続いた。何か心を落ち着かせるようなものがないかなぁ、と探していたところ、書店で見つけたのが写経の本。しかも、本の見本通りなぞればよいという。


偶然が仕事を連れてきた


その本をライター講座の飲み会で見せたら、居合わせた編集者が「これ、僕の友人が作った本です」という。

なんという偶然!話の流れで、その本を作った編集プロダクションの編集Tさんを紹介してもらうことになったのだ。

わたしはもともと歴史や古いものに関心があり、当時から仏像についてもある程度の知識があったので、Tさんとは話が弾んだ。

そして、数カ月後に「仏像ぬりえ本」の依頼が来た。しかも出版社は大手のダイヤモンド社。「写経本」のシリーズ本として出版されることになった。

急に人生が浮足立ってきて、心に澱のように積もっていた鬱々は消えた。写経の本は、予想外の力でわたしを元気にしてくれたのだ。


嵐の中の静けさ


不思議なのだけど、出版と離婚という人生の中でもかなりの大波に襲われた状態でありながら、当時のことを思うとき、しん、と静まり返ったイメージしかない。

生活は今まで通り何も変わらなかった。家事をこなし、週3回会社へ行き、仏さまの絵を描いた。

夫とは何度か話し合ったが、お互いに声を荒げることもなかった。わたしは冷静に淡々と「今の生活を続けられない理由」を話した。そこには、感情の入り込む余地もないほどだった。

やがて夫はあきらめて、「出ていかれるときに家にいるのは嫌だから」という理由で、マンションを借りて出ていった。


埋められない「価値観の差」


諸費用と引っ越し代で100万円
かかったと、平然と話すのを聞いてくらくらした。

「もったいない・・・そんなお金があるなら、わたしが欲しい」と喉まで出かかったが、わたしがついていけなかったのは、まさに彼のそういう部分なのだと思った。

彼は決してお金に対して大らかではない。それなのに、わたしから見れば「どうしてそこで」というところで躊躇ちゅうちょなくお金を使う。

たとえば、飲み会後にまだ電車が走っているのに、2万円かけてタクシーで帰って来たことが何度もあったし、家電も車も最高級品を買っても、ほとんど使わないのが常だった。

わたしも確かにたくさんの趣味をしてきたと思う。けれど、わたしの買い物は数千円単位だったし、買ったものはちゃんと活用した。

彼のお金の使い方では、わたしは少しも豊かな気持ちになれない

自分が家にいるときに引っ越されるのが辛いというだけら、引っ越さなくてもほかに方法があったのではないか、と思うのだ。


鳥籠の森から夜景の見える街へ


引っ越しのカウントダウンが始まった。絵付用の窯を手放すことになったので、最後に駆け込みで、せっせと描いては焼くことを繰り返した。

最後に完成したイースターエッグ

年が明けて2006年、わたしは関東の田舎の街から都内へと引っ越した。最上階の11階の部屋からは池袋の夜景が見渡せた。この部屋の決め手は、この眺めの良さだった。それまでは森のような緑に囲まれた生活だったので、ギャップはかなりのものだ。

写りはよくないが、窓からの夜景。左端の高い建物はサンシャイン60

のちに隣に引っ越してきた男子が「池袋は俺のものだ!」と叫んでいたけれど、その気持ちは、よくわかる。


自分で自分を抱きしめた——一人になって感じた恐怖


でもね、もちろんよいことばかりではなかった。

離婚届を出したときには解放感しかなかったのに、運転免許証の名義変更に行ったとき、はじめて怖くなった

生まれて初めての一人暮らし。定職に就いているわけでもなく、安定した将来など、どこにもない。

はじめて、今まで守ってもらっていたのだと夫に対する感謝の気持ちが浮かんだ。それでも、後悔はなかった


おまけ:2026年を予言?Newsなひよこ日記


ひよこ日記は出版企画のために、いろいろなパターンの絵日記を描いていた。その中で「Newsな日記」という名前で描いていた日記をご紹介する。

主に海外でのニュースをネタにひよこ的独自視点で書いたもの。
2005年9月のこの日記は、現在(2026年)のことを予言しているようで、ちょっと怖い

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陽菜ひよ子 / インタビューライター&イラストレーター もし、この記事を読んで「面白い」「役に立った」と感じたら、ぜひサポートをお願い致します。頂いたご支援は、今後もこのような記事を書くために、大切に使わせていただきます。