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【36歳からの人生の作り方】#5 36歳主婦の静かな革命——出版と引き換えに捨てたもの

36歳まで、わたしはただの「趣味で絵を描いている専業主婦」だった。

それがイラストレーターになり、46歳で漫画家になり、51歳でインタビューライターになった。気づけば4冊の本を出し、NHKで教え、新聞やテレビでコラムを書くまでになったのだ。

20年前のわたしが、「何かの間違いじゃない?」と疑うような、そんな激動の記録をここに記したい。

この冒頭で始まる記事も、今回で5本目である。

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10秒で読める「前回までの話」

20年前、子どものいない専業主婦のわたし。好きな植物画(細密画)を習いながらも満たされない日々のなぐさめに「1日1つおもしろいこと」をblogに描き始めたひよこ絵日記。

「もっとblogをおもしろく書きたい!」とライター講座へ通うと、ひよこ絵日記は出版企画となり、出版社で企画が通ってしまった。


「担当編集」に大コーフン


編集部に呼ばれていくと、待っていたのは2人の男女。

わたしの「担当編集」だという。

その言葉に、心臓が跳ね上がった。
担当編集といえば思い浮かぶのが、鳥山明さんと鳥嶋和彦(Dr.マシリト)さん。あのお2人のような関係が、これから始まるのかも・・・!そんな妄想に、興奮が抑えきれない。

そんな気持ちをどうにか静めて、初めて作った名刺を渡す。「陽菜ひよ子」としてのデビューである。

当時の名刺。「食いしん坊」と「名古屋出身」バージョン

ブログ連載からはじめてみよう


これから彼らは、わたしの「ひよこ企画」を本にするために、わたしに伴走してくれるのだという。

当時は『リラックマ』(コンドウアキ / サンエックス)などが大ヒットして、「ゆるい生活」や「のんびり」「だらだら」を肯定してくれるような「癒し絵本」「癒し4コマ」が求められていた。

とりあえずは、ブログで連載してみようということで、ひとまず解散。

いやしかしですよ、つ・い・に・著者デビュー!

これが興奮せずにおられようか。


月の欠けた結婚生活


興奮冷めやらぬまま家に帰ったわたしを待っていたのは、いつもの日常だった。でもその日常が、徐々に耐えがたいものに変わり始めていた。

ここで、当時の結婚生活について触れておきたい。

夫はわたしより7歳年上だった。彼は結婚当時(1994年)はやりの三高男(高学歴・高収入・高身長)だったのだ、一応。

彼と知り合ったころの24歳のわたしは有頂天だった。

この世の幸せを我が物にしたような気分。思わず『光る君へ』の道長のように月を愛でながら「望月の欠けぬ歌」なぞ詠みたくなるほど。

でも月はあっという間に欠けてしまった。


「かわいい女」とは「都合のいい女」


彼が妻に求めていたのは、ただ従順に自分のいうことを聞き従う「かわいい(都合のいい)女」だった。

わたしがそういう女ならば、すべては丸く収まり、両者ハッピーだったのかもしれないが、残念ながら、そうではなかったのだ。

たとえば、昨今のドラマでこんな脚本を書いたら絶対NGだよね、というセリフが日々垂れ流された。

「女が酒を飲んで酔っ払うなんて、みっともないから飲みに行くな」
「どうせ家で家事をするだけなんだから、服なんて何でもいいだろ」
「コンビニがあれば、妻なんかいなくても困らない」

亭主関白が「あたりまえ」だった時代


でも、こういう男性は、当時は決して珍しくなかった、と思う。

知人から夫に関する愚痴を聞くことはよくあった。もちろん当時から理解ある夫もいたけれど、ウチの方が全然マシと思えるような話も多かったのだ。

たとえば、財布は完全に夫が握り、最低限の生活費しか渡してもらえない、といった話。夫の給料の額を知らないという妻もいた。


問題は女性の中にもあった


そして問題は、「女は男を立て、かしずいて生きるもの」的な考えをするのは、男性ばかりではなかったということ。

年長の女性から「あなたは賢すぎるからダメなのよ。ボーッと『何も知りません』って顔をしていればモテるのに」と言われることもあった。

そこで、本当に「ボーッと」していたら釣れたのが夫だったのだ。

わたしにとっての呪縛「自分を出したら嫌われる」は、時代の産んだ呪いだったのかもしれない。


女が男を見限るとき


夫に「本を出すことになった」と話したら、当然だが信じなかった。

彼は、自分の理解できる範囲外のできごとは、まず信じなかった。「大丈夫?騙されてるんじゃないの?」とまで言われた。

彼のようなタイプの男は、妻には自分の手の届く範囲にいて欲しいのだ。もしも自分より目立ったり、前に行こうとしたりしたら、全力で止めるだろう。

そこで、前に進みたい女にとって、自分より前に行かせまいという夫は、必要なのか、という話なのである。

「そんなわけがない」女を認めない男の言い分


余談だが、中国のショートドラマによくある設定で、夫は知らないが、実は妻が「大富豪の令嬢」や「カリスマ経営者」だった、というのがある。

のちに妻の正体がわかっても、夫は信じないのだ。さまざまな証拠を突き付けても一点突破で「そんなわけがない」と繰り返す。

その語彙力のなさは脚本家のせいか設定のせいなのかは定かではないが、それだけ「女を下方修正したい男」の思考は単純なのだ、と思う。


なにかを得るときはなにかを捨て去るとき


わたしは令嬢でもカリスマでもないが、どうにか自力で生きていけそうな気がした。もう、この人の庇護の下で生きていくのは嫌だ、と思ってしまったのだ。

そんなわけで、出版企画と同時に離婚話が進むことになった。

さらに、離婚を後押しするように、追い風となる話が舞い込んだのだ。

その話は、また次回に。


おまけ:絵日記で綴る出版までの道筋


ここまで企画が通るまでの経緯を読むと、ずいぶんあっさりと通ったように見えるが、そうではない。

そもそも「ひよこ企画」に落ち着くまでに紆余曲折あった。「ひよこ絵日記」のブラッシュアップのためにライター講座に通ったのに、企画=ひよことは考えなかったのだ。今思うと不思議である。

当時の絵日記で「紆余曲折」を振り返ってみたい。

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陽菜ひよ子 / インタビューライター&イラストレーター もし、この記事を読んで「面白い」「役に立った」と感じたら、ぜひサポートをお願い致します。頂いたご支援は、今後もこのような記事を書くために、大切に使わせていただきます。