【36歳からの人生の作り方】#12 9歳年下男子に誘われた。「これってデートですか?」と全身刺青の先輩男性に聞いてみた
note創作大賞2026 オールカテゴリ部門 応募作品
36歳まで、わたしは「趣味で絵を描いていた専業主婦」に過ぎなかった。
それがイラストレーターになり、46歳で漫画家になり、51歳でインタビューライターになった。気づけば4冊の本を出し、NHKで教え、新聞やテレビなどの媒体でコラムを書くまでになったのだ。
36歳の自分に20年後の自分の話をしても、おそらく信じないだろう。
今までわたしが心がけてきたこと、やってきたこと、やらなかったことを、少しずつ書いていきたいと思う。
この冒頭から始まる記事も、今回で12本目となる。
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10秒で読める「前回までの話」
20年前、趣味で絵を描いていた専業主婦のわたし。ライター講座が縁で決まった「ひよこ企画」は離婚と同時に頓挫するが、代わりに『仏像ぬり絵』の著者として華々しくデビュー。
フリーのイラストレーターになったわたしの仕事は激減するが、人生初のモテ期が到来。雨の中、展示に来てくれた9歳年下のYにドキドキするも…

雨のすれ違い
さて、展示に来てくれたYとは、その日はそのまま終わった。わたしは女友達と食事の約束をしていたので、ギャラリーが閉まる時間になると「じゃあまたね」とあっさり別れてしまったのだ。
正直なところ、気持ちは後を引いていたのだけど!
この日、もしも友達と約束していなかったら、どうなっていただろうか。
2人とも予定がないとなれば「じゃあ、ご飯でも行きますか」となったかもしれない。
この日、女友達にはYの話はしなかった。だってまだ、この時点では何も始まっていなかったのだ。
Yとは、その後もmixiのメッセージのやり取りが続いた。そして、彼は驚くべきことを言い出した。
予想外のお誘い
「カラオケ、いつ行きますか?」
は?へっ?
いつ、そんな約束したっけ???と頭の中の記憶を手繰り寄せるも、自分は「もしもカラオケに(みんなで)行くことがあったら、わたしはちゃんと聴くから歌って」と言っただけだ。その記憶は確かだった。
ど、どうしよう…
いや待てよ、もしかしたら、ほかにだれか誘って大勢で、という意味かもしれない。だったら、おかしな反応をするより普通に約束した方がいい。そう思って、空いている日を答えた。
その結果、11月後半の3連休の初日、「2人で」新宿で待ち合わせることになった。
そうなってみて初めて、わたしは頭を抱えた。これは一体何なのだろうか?イエローモンキーファンの集い?
全身刺青男に相談する
当時のわたしは大塚に住んでいた。駅前のロイホで一人ランチをしていたら、知人のS氏にバッタリ会った。
その人は業界の人ではあるのだが、クライアントではなく、気軽に話せる存在だった。なので、思い切ってYとのことを相談してみた。
「これって、デートなんでしょうか?」
と質問しつつ、いろいろな思いが頭をよぎった。38にもなって相談する話じゃないよな、とか、38歳が20代男子と会うのにデートかどうか聞くなんて痛すぎるんじゃないかとか。
相手の答えは予想以上に明快だった。
「デートだよ。男は異性として意識していない女を誘わないよ。少なくとも俺はそうだよ」
そ、そうなのか…!
思わずにやける。
S氏は人のことでもいろいろと妄想するのが好きなんだそうで、わたしの過去や未来の恋路について、いろいろ物語を聴かせてくれて、おもしろかった。
しかし気にかかるのは「俺はそうだよ」だ。
S氏、フェロモン全開なタイプ。しかも、堅気の会社員なのに、全身刺青を入れているのだ。といっても、その筋の人ではなくて、三島由紀夫好きが高じてのことだった。本物の文学青年(中年?)ってことね。
でも、今は美人の奥さん一筋のS氏。若いころは経験豊富だっただろう。そういう男性の言葉なら信じてもいいかも。
よし!デートだ!!わたしは気合を入れた。

モラハラ予備軍に告られる
「男は意識していない女を誘わない」という言葉は、うれしい反面、ちょっとドキリとした。
実は離婚後、わたしは割とよく男性から誘われた。以前に当時はモテ期だったと書いたが、渦中のわたしにはそういう意識はなかった。
20代のころモテなかったせいで、わたしには男性の好意をどう測ればいいのかを身につけないまま、年だけ取ってしまったのだ。S氏に言われて初めて、そういうつもりで誘われていたことに気づいたのだった。
このときも、展示に来てくれた一人の男性と数日後に会うことになっていた。
そして、イヤな予感は当たった。その相手から告白されてしまったのだ。しかも「今日答えを決めてくれ」という。おいおいおい。強引だな。
正直、告白された時点では、その人が絶対的にダメだったわけではない。今考えてもかなり熱烈に言ってくれたので、告白されているときは、悪くない気分だった。
でも、でもね、前夫だって最初は熱烈に好きだと言ってくれた。それでもいつのまにかモラハラ臭漂う不機嫌魔人と化してしまった。人は変わることもあるのだ。
しかも、この強引さはヤバイ…心の奥のアラートが鳴っていた。
そんなわけでお断りしたのだが、相手は結構しつこかった。わたしの意志が固いとわかると、辛辣な捨てゼリフを吐かれた。…いやはや、結果オーライってやつですな。
人生で一番気の合う人
とはいえ、もしもYの存在がなかったら、その人と付き合ってみようと思えたかもしれない(思わなくてよかったけど)。
Yとはmixiのメッセージのやり取りのみだったけれど、とても楽しくて、わたしはいつの間にか、彼からのメッセージを心待ちにしていた。
イエローモンキーの話、美術館の話、デザインの話。彼はいつも慎ましく丁寧に返事をくれて、本当に好ましかった。

(もしかしたら、今までの誰よりも気の合う人に出会えたのかもしれない)
それは確信に近かった。だから、Yと2人で会うことなしに誰かと付き合うことを決めることなどできなかった。
そもそも、Yと会うことが決まったときだけ「これはデートなのか?」と悩んだ時点で、少なくともわたしの中で、答えは出ていたのである。
おまけ:首をほめられた話
当時は頸椎の椎間板ヘルニアに苦しんでいて、病院に通っていた。今も首はウィークポイントで、疲れると首に来る。

11/19(月)
友人の紹介で、高名なお医者さんのいる病院に行った(病院3件目)。
すると、首の痛みの原因は、「珍しいほどのなで肩」であるという。
今まで30年以上生きて来て、なで肩なんて言われたことはないのに。
なで肩の人は、肩と胸骨を結ぶ部分が狭いので、血流が悪く、いろいろ調子の悪くなることがあるらしい。
一応「胸郭出口症候群」というれっきとした病気なのだそう。
撮り直したMRIの結果は「頸椎椎間板ヘルニア」だった。それは近所の病院でも、この病院でも、診断は同じである。
そして先生がおっしゃるには、わたしは「相当ヘルニアになったとしても大丈夫なくらい、しっかりとした首をしている」そうなのだ。
「首の神経がしっかりしてるんです、太いんですよ」
「神経が太いのですか?」
思わずそうたずねると、先生は少し笑いながらこう続けた。
「神経が図太いんじゃなくて、神経を包んでる管が太いんです。すごくいい首してますよ。これなら大丈夫」
今度は首をほめられた。
珍しいほどのなで肩と、いい首を持っていることを、高名なお医者さまから太鼓判を押されたわけである。
とりあえず喜んでおこう。
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