【36歳からの人生の作り方】#8 思いがけない著者デビューと、ぽっかり口を開けた落とし穴
36歳まで、わたしは「趣味で絵を描いていた専業主婦」に過ぎなかった。
それがイラストレーターになり、46歳で漫画家になり、51歳でインタビューライターになった。気づけば4冊の本を出し、NHKで教え、新聞やテレビ媒体でコラムを書くまでになったのだ。
20年前のわたしが、「何かの間違いじゃない?」と疑うような、そんな激動の記録をここに記したい。
この冒頭から始まる記事も、今回で8本目となる。
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10秒で読める「前回までの話」
20年前、細密画や磁器絵付を習っていた、子どものいない専業主婦のわたし。ライター講座にも通い始めたことがきっかけで、ブログに描いていた「ひよこ日記」の出版とぬり絵本の出版が決まった。
離婚し、一人暮らしを始め、イラストスクールに通い始めた。一人になってみると、自分の本当にしたいことが見えてきた。

思いがけない「著者デビュー」と、ぽっかり空いた落とし穴
さて、いよいよ、出版について、である。
2006年1月に離婚して一人暮らしを始めた。週3のバイトを続けながらイラストの仕事をする、なかなか理想的な生活だった。
この頃動いていた企画は2本。「ひよこ日記企画」と「仏像ぬり絵企画」。しかし、その後、2つの企画の明暗が分かれた。
「ひよこ日記」は残念ながらとん挫したが、「仏像ぬりえ企画」はうまく行った。しかし、そこにも大きな落とし穴があったのだ。
さようなら、『ひよこ日記』
「ひよこ日記」のほうは、毎日ブログを更新していたけれど、編集さんからの返信が途切れがちになり、年末には完全に企画は白紙に戻ることになる。
理由を一言で言えば、編集さんの求めるものと、わたしが書きたいもの・書けるものの間に乖離があったのだ。

その上さらに、書籍を意識しすぎて、かつてのようなよさが失われていることに自分でも気づきながら、どうにもできずにいた。
ひよこ日記は、途中何度も絵柄(キャラクター)が変わっているけれど、この当時が一番かわいくないし、おもしろくもない。正直、今ではあまり読み返したくない「トラウマ」な時期である。
けれど、わたしはこのころ、ひよこ日記のことが頭からすっかり抜けていた。もう一つの切り札があったからだ。
こんにちは、『仏さまぬり絵』
「仏像ぬり絵」の本が、5月に無事発売されたのだ。

ありがたいことに、わたしの立場は「イラスト担当」ではなく「著者」だった。つまり、期せずして「本を出す」という目標を叶えてしまった。イラストレーターデビューと同時に、思いがけない「著者デビュー」まで果たしてしまったのだ。
しかもダイヤモンド社の本だからなのか、サラリーマンが多そうな八重洲ブックセンターには、50冊くらいが目立つ場所に平積みされていた。
わたしの中の大いなる誤算
平積みされた自分の本を見たとき、わたしは思った。
「ああ、自分の本がこんなに大きく扱われている。これでわたしはもうこの先も安泰だわ」
・・・いや、そんなわけないやろ!と、今なら当時の自分に全力で突っ込む。
このあと、わたしが真っ逆さまに穴に落ちた。
一年後、定期収入があるわけでもないのに、わたしは急に会社を辞めてしまったのである。このぬり絵本のあとにも順調に仕事が来たため、この先も仕事は増え続けていくと思い込んでしまったのだ。
未来に保証なんてない
前回の連載では「孤独」について書いた。わたしは孤独に強い方だし、誰とも話さずに何日でも過ごせる。
孤独は人を強くするが、その反面、危うくもする。
わたしが落ちた穴は、「うまくいった経験」が重なって、未来の保証に見えてしまったこと。「自分の本が出て書店で大きく扱われた」という事実が、自分の土台を強くしてくれたように錯覚したこと。
もしかすると、そう思いたくなるくらい、一人で生きることが心細くもあったのかもしれない。
「失敗」は「小さな思い込み」の形をしてやってくる
たった一人で「好き」を貫くには、覚悟と強さだけでなく、「冷静さ」が必要だ。冷静さが足りないと、自分の立ち位置を正当に評価できなくなる。つい過剰に評価したり、逆に過小評価してしまうのだ。
わたしは自分の人生に1ミリも後悔はない。でもそれは、たまたま運が良かっただけだ。だから、わたしと同じことをそのまま真似するのは無謀すぎて勧めない。
一人になったときこそ、自分の足元を丁寧に見てほしい。あなたが落ちる穴は、わかりやすく派手な失敗ではなく、「これで大丈夫」という小さな思い込みの形をしているから。
おまけ:「安泰」こそが「危険信号」
前の結婚をした25歳のとき、やっぱりわたしは「もうこの先、安泰だわ」と思った。でも全然そんなことはなかった。結婚する男女の3組に1組は、もれなくセットで離婚がついてくるのだ。
そして、本が出たあとも「安泰だ」と思って仕事を辞めた。わたしの人生、「安泰」と思った時ほど危険なのだ、と「今」気づいた。
それでもどうにかなってきた。どうにかしてきたといえるかもしれない。なんという「綱渡りな人生」。運の良さだけには自信がある。
でもこのさき、「安泰」と思ったらちょっと、足元を見てみようと思う。

もちろん、「あんた、ボーナスなんてないやろ!」という突っ込み待ちです!(えっへん)
・・・このスカート、その後どうなったか覚えていない・・・。
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