【2026年・上半期】今オススメしたい書籍10選
この上半期の読書数は全部で30冊。昨年は読書数が足りずに「半期」での「10選」発表ができなかったのですが、今年は分母を確保できたことで上半期noteが書けることを嬉しく思います。
今回も本当に「出会えて良かった」と思える本だけをご紹介しているので、ぜひ皆さんにも興味を持っていただき、そして手に取ってもらえたら嬉しいです!
過去の書籍紹介記事はマガジンに纏めていますので、こちらもどうぞ。
1. 自由より自在に生きる
私が大尊敬する近内悠太さんの最新作。
思想家であり武道家である内田先生との対話型で進んでいく本書ですが、私の人生の中でも上位に入るほどの、最高の一冊でした。
タイトルにもある「(自由ではなく)自在に生きる」とはどういうことなのか、という第一章だけでもうお腹がいっぱいになるくらい、新しい気付きを得られました。
「執着」「固執」「居着く」とはどういうことなのか。私にとっては「執着」ではないと思ってなかったことも、内田先生からすればそうであり、「自在」ではなくなっている。
この「自在」の感覚を得られたら、なんて人生が楽になるのだろうと思いましたし、実際に楽になりました。
あまり哲学的な本を読まない方にも読みやすく、騙されたと思って、是非手に取っていただきたいです。
2. 平和と愚かさ
この本から受け取った私のメッセージは『「考えない」「覚えない」「情報開示しない」ことの価値を考えなさい』ということでした。これまで考えもしなかったテーマであり、終始「なるほど・・・・」と呟き続けた一冊です。
つまり「考えるから平和じゃなくなるし」「覚えてるから平和じゃなくなるし」「情報が見えるから平和じゃなくなる」んだと。
つまりつまり、皆が賢くあろうとすればするほど、平和から遠ざかるんだ、という話。
企業に置き換えれば、生産性を追い求め、結果を出すためには「情報を開示し、考え、行動し、結果を記憶し、次に繋げ・・・」とやるわけで、完全に平和と逆行している。
だから、永久に企業に平和は訪れないし、平和を追い求めること自体が無意味、という結論に至ります。
もちろん、私はHRとして「平和」を目指していた訳ではないですが、成長と平和は両立出来ると思っていました。それが「できない」ことが余りにも鮮明に言語化されており、固まってしまいました。
この「戦争」が当たり前になった2026年、今こそ読むべき一冊と思います。
私の東浩紀さんデビューの一冊となりましたが、
3.カウンセリングとは何か
私の人生ベスト10本に入る「聞く技術 聞いてもらう技術」の著者である東畑先生の最新作。
人の「心」というものの所在、そして何かしらの精神的なトラブルに見舞われた時の対処法について、ここまで綺麗に言語化した書籍は初めて出会いました。多様な学派の中身を踏まえた上で、「非専門家」に極めて分かりやすく伝えてくれています。
特に「生存のためのカウンセリング」と「実存のためのカウンセリング」の区別は、自分にとって革命的な出会いでした。
今、自分は「どう生き延びるか」のステージにいるのか(生存)、「どう生きるか」のステージにいるのか(実存)。この区分ができるだけでも、思考が非常にクリアになります。
そして、「終わり」「別離」こそがカウンセリングの本質である、という第五章の内容も転職したばかりの私にとって、大いに刺さりました。
こちらも超おすすめです。
4. 営業の科学 セールスにはびこるムダな努力・根拠なき指導を一掃する
哲学的な書籍が3冊並んだあとに、いきなり実利的な本が登場しますが、私が人生で読んだ中で、一番営業力向上に直結したのはこの本です。
ファームノートでのネクストマネージャー研修にも活用し、実際にメンバーが各スキルの利活用によって実際に結果を出してくれています。
まず「〇〇の仮面」という表現がとてもわかりやすく、「お客様の表面的な言葉と本心は違う」ということを端的に表現しつつ、場合分けが完璧です。
そして何より、「こういう時はこういうフレーズ」の質が異常なまでに高い。読んでいて、「うわ、こんな言い方があったか!」と思える枕詞や付加疑問文が沢山出てきます。
これ、実は「営業活動」だけじゃなく、社内や友人とのコミュニケーションにも使えます。
他者とのコミュニケーションに困っていたり、停滞を感じている方は、是非。
5. 集団浅慮
僕は住友商事を辞める前に、「住友商事を変える21の施策」という90ページのレポートを執筆し、社長以下経営陣に送付しました(その反応が余りにも酷かったので、退職を確定させました)。
そのレポートの中には一切「事業」に関することはなく、すべて「組織」「文化」に関することで満たされています。
この時にも「多様性は、イノベーションを生み出すというポジティブな側面以上に、誤った決断を下すというネガティブなリスクを減少させる効果がある」ということを述べていましたが、まさにそれを「フジテレビ」の事案を用いて完璧に、論理的に言語化しているのが本書です。
私は「集団浅慮」という言葉は知りませんでしたが、“Groupthink“という非常に訳し辛い言葉を訳した、素晴らしい熟語だと思います。
「インベスターZ」という漫画も「合議制は常に碌な結論を導かない」と喝破していますが、まさに「集団になると、なぜ意思決定の質が下がるのか」について素晴らしく勉強になる一冊です。
現在大企業に勤めている方、これから自分の会社を大きくしようとしている方には、是非ともご一読いただきたい一冊です。
6. <私>を取り戻す哲学
「細田さん、フッサールの現象学を理解したいなら、まずこの本から読むといいですよ」
と信頼する住友商事の後輩から紹介してもらった本書ですが、非常に素晴らしい一冊でした。
「エポケー」という「判断の保留」という概念をしっかり理解ができたことが、この書籍から得られた一番の果実でした。
エポケー:物事の善悪、真偽、価値判断をいったん「保留」または「中止」し、先入観や思い込みを排除して対象をあるがままに純粋に受け入れ、観察しようとする哲学的な態度
僕は悩んだり苦しんだりした時に、判断を保留して(エポケー)、それに関連する変化が起きたり影響を与えられた時に「反省的エヴィデンス」の一環として、noteを書いているんだなと思いました。
そして、この「エポケー」という概念を「タイパ」と対して考えることで、HRとしての思想がさらに深まりました。以下の記事は是非読んでいただきたいです。
7. 「人の器」の磨き方 リーダーシップ・コーチングと成人発達理論による人間力の変容プロセス
この本は、元ラグビー日本代表監督の中竹さん自身が、その多種多様な経験に基づく「感覚・意見」に学術的な要素を掛け合わせておられるだけでなく、加藤さんの学究的な要素が掛け算されています。
内容云々の前に、最も正しく、信頼出来るアプローチを取っている書籍だと思います。
内容は、この「共通言語だけど、極めて感覚的なもの」である、「人の器」というものに正面から向き合っているもので、リーダーやマネジャーの方、乃至は目指す人にとっては必読だと思います。
P.E.ドラッカーの「Integrity」にもかなり近い位置付けだと思っており、この和訳は「真摯さ」ではなく「器」でも良いなと思いました。
個人的には、人の器の話の所に加え、組織の器の話で出た「評価制度」に対する考え方が極めてしっくり来て、雷鳴が轟きました。私が言語化出来てこなかったことを全て書いてくれた、みたいな。
そして何より、最後の中竹さんの「おわりに」が最高でした。ビジネス書の「おわりに」でうるっときたのは人生で初めてです。
8. 訂正可能性の哲学
東浩紀さんの「訂正可能性」、近内悠太さんの「過去の再編集」、そしてスティーブ・ジョブスの「Connecting the Dots」、稲盛和夫さんの「人生は運命と因果応報によって織られている」、この4つの言葉が私の人生の基礎となっています。
ウィトゲンシュタインを起点とした「我々は日々、なんのゲームをプレイしているか理解することができないし、またどんな規則に従っているのかも理解することができない」という思想をまずここで知り、衝撃を受けました。
そしてそこから導かれる「後からの再解釈の可能性」という考え方、、ソール・クリプキの「固有名」など、組織論において極めて重要な考え方を知りました。
「多くの話し手にとって、名前の指示対象は、記述によってよりも、寧ろコミュニケーションの「因果的な連鎖」によって決定される」
言葉の意味は「辞書的な定義」ではなく、「コミュニケーションの連鎖」によって起こると。つまり、「すべての一社員の一コミュニケーションには、組織内の言葉(固有名)の意味を変える力がある」ということであり、Chief Communication Officerとしては、極めて重たく、かつある意味希望をもらえる一文でした。
歯応えのある一冊ですが、絶対に読んで後悔しないと思います。
9. すごい古典入門シリーズ
本シリーズは、ちょうど「訂正可能性の哲学」を読み始めた時に始まり、「ウィトゲンシュタイン」理解の補助線として手に取りました。本当に薄い一冊で難しい哲学の内容がまとまっており、素晴らしいシリーズだと思います。
現時点で4冊刊行されていて、全て読みましたが、一番良かったのはハンナ・アーレントの「人間の条件」。
本書はいくつもの論点を提示しますが、その一つが「複数性(Plurality)」。簡単に言えばその人の「個性」を意味します。もう一つが「労働・仕事・活動」の分類。
そして、「労働は自然によって強制されていて、反復されているので、人間は複数性を発揮できない」と言います。
読み方によっては、「毎日反復する営為(例;エッセンシャルワーカーや一次産業労働者)」を「没個性」と言っているような内容とも取れ、議論が紛糾してしまいますが、そういうことではありません。この続きは本書にて。
原書は文章量も多くタフですが、「人間の条件」は知識・教養ある方は本当に必ず読んでいる印象なので、是非このライト版から読まれてはいかがでしょうか。
10. 社内政治の科学 経営学の研究成果
「社内政治」という、一見「わざわざ研究する必要ないように見える」ことについて、非常にアカデミックに、そしてわかりやすく解説してくれている一冊。
「社内政治」というと、大企業・大組織のイメージがありますが、私のこれまでの経験から「社内政治の有無に、組織の大きさは関係ない」と思っていました。
そして、本書の中で語られる「社内政治が生まれる背景」の中で、「大きい・小さい」という要素が全く出てこなかったことで、これは確信に変わりました。
社内政治の光と影、そして社内政治が生まれる作用機序などが、多くの論文を引用して論理的に語られていますので、ぜひ組織論に関心がある方にはぜひ読んでいただきたいです。
なお、本書で読んでいて、「本当に最悪の事象だが、めちゃくちゃ見てきたし、よくわかる」と思ったのは以下の部分でした。
「悪い社内政治が蔓延すると、政治スキルが高い奴ばかりが生き残る」という最悪のストーリーを打破出来るのは、その視点を持っている人間だけです。
政治スキルの高い人は、ストレスフルな状況への耐性が強い傾向にある。これは、政治スキルが高い人ほど、仕事に必要なリソースや支援を得やすいという理由から。職場にネガティブな政治が蔓延していると感じている人の中でも、政治スキルが高い人は職務満足度が下がりにくいことが明らかになっている
おわりに(と「次点」のご紹介)
先日、本棚の一箇所を借りて、そこに自分の選書を置く拠点を運用する場所に行ってきました(住友商事後輩OBの新規事業)。
一つ一つの棚はそこまで大きくなく、3-5冊/人なのですが、それを見るだけで「あ、この人好きだな」という感情が生まれることに驚きました。
それだけ「本」には力がある。
私が毎年連載しているこのnoteにもそんな力があればいいなと思うし、新しい出会いを生むシナプスになっていたら、そんなに嬉しいことはありません。
最後に、「10選には入らなかったけど、普通におすすめできる」の本を並べて終わります。
最後までご一読いただき、ありがとうございました!
細田 薫
