男性の育休取得率50%超の裏にある課題とは?希望と現実のギャップを埋める組織づくりー日経新聞記事からの考察
日本経済新聞(2026年8月1日朝刊)『男性の育休取得率、25年度は50.9% 88.3%の女性と開き』を拝読しました。
男性育休取得率がついに50%を突破
厚生労働省が公表した2025年度の雇用均等基本調査によると、男性の育児休業取得率は50.9%に達し、前年度から10.4ポイントという大幅な上昇を見せました。これは過去最高の数字であり、政府が目標として掲げていた「2025年に50%」という数値を無事に達成した形となります。近年進められてきた法改正や、企業の意識改革が実を結びつつあることがうかがえます。しかしながら、女性の取得率が88.3%であることと比較すると、依然として37ポイント以上の大きな隔たりが存在しており、育児休業の取得状況における男女差は完全に解消されたとはいえない状況です。
取得期間に見られる決定的な「男女差」
今回の調査では、取得率だけでなく「取得期間」においても男女間で非常に大きなギャップがあることが明らかになりました。女性の場合、取得期間として最も多いのが「12〜18カ月未満」で31.4%を占めており、6カ月未満で復帰する割合は全体の6.7%にとどまっています。
一方で男性の取得期間に目を向けると、「1〜3カ月未満」が最多の30.3%となり、次いで「2週間〜1カ月未満」が28.0%、「5日〜2週間未満」が14.1%と続いています。結果として男性の取得者のうち、約9割が6カ月未満の短期間で職場復帰を果たしているのが実情です。
当事者が望む理想と現実の隔たり
厚生労働省が併せて公表した17〜39歳の男女を対象とした意識調査では、男性の意識の変化が顕著にあらわれています。1カ月以上の育休取得を希望する男性は全体の5割を超えており、さらに「半年以上取得したい」と答えた人も22.4%に上りました。
つまり、多くの若手・中堅男性社員が長期の育休を望んでいるにもかかわらず、現実には数週間から数カ月程度の取得にとどまっていることになります。制度上の権利としては保障されているものの、職場の事情や雰囲気によって、希望する長さを申請しづらいという葛藤が推察されるでしょう。
制度拡充から「職場の理解」へ向けた課題
これまで政府は、育児・介護休業法の改正を段階的に進めてきました。2022年には育休制度の周知や取得意向の個別確認が義務付けられ、分割取得の仕組みも整えられました。さらに2025年4月からは、従業員301人以上の企業に対して取得率の公表が求められるなど、環境整備は着々と進んでいます。政府は2030年に男性育休取得率85%という高い目標を掲げていますが、単に制度を整えるだけでは期間の延伸や真の定着には届きません。休業する本人への支援はもちろんのこと、業務をカバーする周囲の社員に対する配慮や、職場全体の理解を深めていく取り組みが今後の鍵になるといえるでしょう。

人事視点での考察と活用
「休める環境」から「長く休める雰囲気」へのアップデート
今回の試算や調査結果をみても分かるように、男性の育休取得率自体は50%を超え、制度として「休むこと」そのもののハードルは大きく下がったと感じられます。
しかし、取得期間の短さに目を向けると、当事者が本当に望む期間と現実との間にはまだ乖離があります。職場のキーパーソンや上司と接する中で意識したいのは、制度の案内にとどまらず、「どれくらいの期間休みたいか」という本音を聴き出せる面談の場づくりです。周囲への遠慮やキャリアへの不安から短期取得を選択してしまう社員に対し、長期取得の事例や復帰後のフォロー体制を丁寧に提示することで、希望に応じた柔軟な選択を後押ししたいところです。
業務の透明化とマルチスキル化の推進
育休を長期間取得するとなると、避けて通れないのが職場における業務の代替体制です。属人化した仕事が多い現場ほど、長期の不在に対して周囲の警戒感が強まりがちになります。そこで、日頃から各メンバーの業務内容を可視化し、誰がどのようなタスクを抱えているかをチーム全体で共有する仕組みを整えることが一手となります。
また、互いの業務をフォローし合えるようにマルチスキル化を進めることは、育休対策としてだけでなく、普段の業務効率化や有給休暇の取得促進、さらには突発的な欠勤への対応力強化にもつながるはずです。
カバーする周囲のメンバーに対する配慮と評価
育休を取得する社員への配慮はもちろん不可欠ですが、残された業務を引き受ける周囲のメンバーへの配慮も同じくらい大切にしたいポイントです。急な業務負荷の増加が特定の社員に偏ってしまうと、職場全体の不満や疲弊につながるおそれがあります。業務をカバーした社員に対してインセンティブや手当を支給する仕組みを検討したり、個人の評価項目において「他者のサポートや組織貢献」をポジティブに加点評価するような工夫を取り入れたいものです。サポートする側もしっかり報われると感じられる環境があれば、チーム全体で育休を気持ちよく送り出す文化が育っていくのではないでしょうか。
男性の長期育休経験者がもたらす組織への還元
1カ月や半年といったまとまった期間の育休を経験した男性社員は、組織にとっても貴重な存在といえます。育児を通じて身につけたタイムマネジメント力や、多様な価値観への理解、効率的な業務推進の視点は、職場に戻った際にも大きな強みとなります。こうした経験者のリアルな声を社内Webや座談会などで積極的に発信してもらうことで、これから育児を迎える世代の不安を和らげることができるでしょう。
また、育休から無事に復帰して活躍しているモデルケースが増えることは、優秀な人材の離職を防ぎ、採用面での魅力づけにも寄与するといえるでしょう。
経営層や管理職を巻き込んだ意識のアップデート
最後に、現場の意識改革をスムーズに進めるためには、管理職やマネジメント層の深い理解が欠かせません。「育休=単なる休み」ではなく、「優秀な人材が長期的に活躍し続けるための投資」であるという共通認識を持ってもらうことが理想的です。管理職向けの研修などで、自社の取得状況や世の中の動向を共有し、チームの業務設計を見直す機会を設けることも効果的と考えられます。職場全体で互いを支え合い、ライフイベントとキャリアを両立できる柔軟な組織風土を築いていくことが、これからの時代において求心力のある会社であり続けるための力になるといえるでしょう。
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